新撰組隊士の中で彼を選んだのは　つかこうへい氏の『幕末純情伝』の中で、実は女であった。　と言う設定がなされているからです(笑)
　もちろん、彼は男性です
　
　沖田 総司（おきた そうじ）は、江戸時代後期、幕末の新選組一番隊組長及び剣術の師範でした
　父は陸奥白河藩士の沖田勝次郎で長男。2人の姉がおり、沖田家は姉の「みつ」が婿の林太郎を迎えて相続させています
　
　江戸、白河藩屋敷で生まれ、父は4歳のときに死去　母とも死別したとされ、9歳頃に江戸市谷にあった天然理心流の道場、試衛館　近藤周助の内弟子となり後に新選組結成の中核となります
　近藤勇、土方歳三とは同門にあたり若くして天然理心流塾頭を務めました
　
　文久3年（1863年）の浪士組結成に参加して上洛、分裂後は近藤らに従い残留し、新選組を結成　沖田の一番隊は常に重要な任務をこなし、剣豪ひしめく新選組の中でも一、二を争う程多くの人を斬ったと言われていますが、この時期では9月の芹沢鴨暗殺、内山彦次郎暗殺などを手がけました

　お芝居等では元治元年（1864年）6月5日の池田屋事件で、討幕派の志士1人を切り伏せた直後に吐血して倒れた事になっていますが、その後の新選組史において依然として活躍していることから、この日に肺結核が発症したとは考えにくく、そのため熱中病で倒れたとの説が有力です

　慶応元年（1865年）2月、総長の山南敬助が脱走した事件では、追っ手として差し向けられ近江草津で捕らえ、山南は沖田の介錯で切腹しています

　第一線で活躍することがなくなるのは慶応3年（1867年）以降で、鳥羽伏見の戦いには参加できず大坂に後送されました（現在は、鳥羽伏見の戦いに向かう間に負傷し、大阪に後送される船中において肺結核を発症したとする説が有力）
　鳥羽伏見の敗戦後、隊士と共に海路江戸へ戻り、甲陽鎮撫隊に参加するも中途での落伍を余儀なくされ、以後は幕臣の松本良順により千駄ヶ谷の植木屋に匿われたとされますが、慶応4年（1868年）に死去　生年が明確で無いため享年については諸説あり、25～27と考えられています

　慶応3年12月18日、沖田が療養のため滞在していた近藤の妾宅を、元御陵衛士・阿部十郎、佐原太郎、内海次郎の3人が襲撃しますが(前月に彼らの指導的立場であった伊東甲子太郎を殺害した新選組への報復)伏見奉行所へと出立した後で難を逃れています(同日夕刻、阿部らは二条城から戻る途中の近藤勇を銃撃、負傷させている)
　そして近藤勇斬首から2ヶ月後、近藤勇の死も知らずに亡くなりました
 　辞世の句は「動かねば闇にへだつや花と水」とされています
　墓碑には天然理心流の他、北辰一刀流の免許皆伝を得ていた旨も記されているそうです

　凄腕の一番組長としての顔とは裏腹に、いつも冗談を言っては笑っていた陽気な人物であったようで屯所界隈の子供達ともよく遊んであげていたようです(作家の司馬遼太郎は作品を執筆する際、幼い頃に沖田に遊んでもらったという老婆を取材している（かなり高齢ではあるものの実際の沖田総司を目にした人が生きていたことになる）

  沖田は新選組に表立って敵対した者以外には人当たりの良い好人物であったと考えられ、死の間際まで「（近藤）先生はどうされたのでしょうね、お便りは来ませんか？」と、師を気遣う言葉を幾度となく口にしたとも伝えられ、近藤の死に関して周囲の者は固く口止めされていたために近藤の死を知らずにこの世を去ったのでした
　それに先立って、甲陽鎮撫隊が出陣する際に近藤が沖田を見舞うと、普段は明るい沖田が声を上げて泣いたといいます

　一方、新撰組と敵対していた阿部十郎からは「近藤の高弟の沖田総司は残酷な人間で、国家朝廷のあるを知らぬようなもの」と“人殺しの道具”として非難されており、他にも「刀で斬るな！体で斬れ！」と教えていた等の言い伝えもあり、そこにある素顔の沖田は優しく大人しいといったイメージとは随分異なります

　ある日、三浦啓之助がある隊士にからかわれ、後日、土方と沖田が碁を打っている側で三浦が、からかった隊士を背後から斬りつけると、沖田は三浦が後ろから斬りつけた卑怯さに激怒し「この馬鹿野郎」と叫び三浦の襟首を引っつかんで頭を畳に押し付け引きずり回し、三浦は鼻を真っ赤にすりむいたという話も伝わっています

　さて、容姿ですが「ヒラメ顔で笑うと愛嬌があり色黒」、「肩の張り上がった」、「猫背」「長身」と書かれたものが残っており、美少年のイメージは剣技の強さが伝承されながら労咳により夭逝してしまうというドラマ性に富む生涯から、多数の作品で“剣にめっぽう強い上に明るい性格、その反面、病弱で色白の美少年”として演出されたものが一般的に定着した結果であると考えられています(注１コメント欄参照