続きです。

「──妹が子供を身篭もっていることが発覚した夜
村の男達は互いに顔を見合わせ口を噤んだ
重い静寂を引き裂いたのは耳を疑うような派手な打音
仕立屋の若女将が妹の頬を張り飛ばした音...」

１で書いた内容がここに繋がってきます。
村の男たちは妻がいるにも関わらず、妹とと肉体関係を結んだ。
所謂浮気がばれたくなくて口を閉じます。

「泥棒猫...可哀想な子だと...世話を焼いて...恩知らず...」

仕立て屋の若女将が妹の頬を張り飛ばしたのは、このような思いを抱いていたから。
いつも世話を焼いてやったのに恩知らず。人の夫を寝盗る泥棒猫。
「可哀想な子だと」というフレーズでルナは障害があったんだなと確信しました。

「──断片的な記憶...断罪的な罵声...
嗚呼...この女(ひと)は何を喚いているんだろう？　気持ち悪い
ぐらりと世界が揺れ　私は弾け飛ぶように若女将に掴みかかっていた...

緋く染まった視界　苦い土と錆びの味　頭上を飛び交う口論　神父様の怒声」

妹がそんなことするわけないじゃないか。と、サクリ子は妹がそんなことをしていないと信じているのででたらめな事を言う若女将に掴みかかります。

そしてここで流血沙汰になるぐらいの大喧嘩。サクリ子は地面に伏せられ、神父様に宥められます。

「純潔の...悪魔の契り...災いの種...マリア様の...誰もガブリエルを...火炙りだ」

妹がそんなことするわけがない。
火炙りという単語で、私は中世の魔女狩りの時代を真っ先にイメージしました。
魔女狩りの時代に浮気とかそういう事は女性が咎められるそうです。
妹が悪魔と契った魔女だと村人たちは思ったのです。そして火炙り、魔女狩りだ。

「嗚呼...悪魔とはお前達のことだ！」

妹が火炙りにされるのに何も出来ないサクリ子。
妹が悪魔と契った…？悪魔とはお前たちだろう！と叫ぶ。

「──そして...妹は最後に「ありがとう」と言った...」

最期まで信じてくれてありがとう。
いつも迷惑をかけてごめんね…。今までありがとう、と妹。
心のどこかで妹は知っていたのかもしれません。
サクリ子が私なんて死んでしまえばいいと一時期思っていた事、でもそれでも私、妹のことを可愛がってくれた事。
彼女の一番の幸せは姉と一緒だったこと…。そんな気がしました。

「心無い言葉　心無い仕打ちが　どれ程あの娘を傷付けただろう
それでも全てを...優しい娘だから...全てを赦すのでしょうね...

「でも、私は絶対赦さないからね...」」

妹はどんなに心ない言葉や心ない仕打ちをされても笑顔でいた。
たとえ自分を殺されても、妹は優しい天使だから全てを赦すのでしょう。

でも私は絶対に赦さない。とサクリ子。
ここにはこんな酷い仕打ちをした神様に対しての気持ちもあると思います。


ここで火を放ちます。
村に火を放っているのだと思われがちですが、歌詞カードを見てください。
教会しか燃えてないんです。
何故教会に火を放ったのか。先ほどにも書いた「こんな酷い仕打ちをした神様」に対しての赦さない。
そして罪深き者に対しての赦さない。（罪深き者は後解説です）
宗教への冒涜も含まれていると思います。

「この世は所詮、楽園の代用品でしかないのなら、罪深きモノは全て、等しく灰に帰るが良い！」

罪深き者＝神と人間
だと私は考えたので、この世が楽園ではなく、ただの代用品でしかないのなら神も人間も全て等しく灰に帰ってしまえ、と。

「──裸足の娘　凍りつくような微笑を浮かべ
揺らめく焔　その闇の向こうに『仮面の男』を見ていた──」

サクリ子は教会のど真ん中辺りにいるんだと解釈しました。
Abyssシリーズの女はみんな死んでいるということなのですが、サクリ子はこの時点ではまだ死んでいません。
しかし仮面の男に目をつけられているので、サクリ子の命も長くはないです。彼女は妹と同じ火で死んでいくのでしょう…微笑みを浮かべて。