Nicotto Town


噛みました。……うれしくて。


俺小説 瀬木根ビオの憂鬱 部活モードin部室

「おーい、瀬木根ー」
「へんじがない、ただのしかばねのようだ」
「あんたが殺したんだろうが!」
 とりあえず、気を失った瀬木根は部室の中に運び、椅子に座らせてみた。
 運んだのは僕だが、決して胸を触ったりなどしてはいない。よしんばそうだとしてもわざとではない。
「しかし、割とグラマーだったな……」
「どさくさにまぎれて何をしているのですか!」
「やはり少年も少年ということだな」
 ああ、また考えが口に出てしまう。
 直すべき癖だな、これは。教訓にしよう。
「ん、んん……」
 瀬木根が何やら呻きだした。悪い夢でも見ているのだろうか。
「瀬木根、大丈夫だ。僕がついているぞ」
「……波坂……絶対に許さない。ぶっ殺す」
「落ち着け瀬木根!お前をこんなにしたのはこっちの馬鹿部長だ!僕はお前に何一つ手を出していない!」
「波坂さん、そういうことではないと思います」
「そうなのか。世間は厳しいな」
 胸を触ったくらいで。
「波坂さんは一度死んだ方が世間の為だと思います」
「鬼ばかりだなあ、渡る世間」
「というよりわたしの希望ですが」
「鬼はおまえか」
「いいえ、あなたです」
 女子の胸を触ってはいけない。教訓が増えた。
「そんなことはどうでもいい!」
「そんなこととはなんですか!やはりいっぺん死にますか?」
 坂口は無視。
「部長!何やってんだあんたは!」
「さっきのオチに戻ったな」
「オチになってねーんだあんなもん!」
 解決になってないからな!
「何がどうなって瀬木根はこうなってる!」
「転校生と聞いたから他にとられないよう急いで持ってきたのだが、輸送途中で壊れてしまった。不良品だなこれは」
「転校生を流行りのファッションアイテムみたいに扱うな!つーか瀬木根を不良品扱いすることは僕が許さねえ!」
 良い胸だったから。
 よし、口に出してねえ。教訓が活かされている!
「……んん……波坂殺す」
「心を読まれた!?こいつは透視能力も身につけているのか!?」
「わたし、波坂さんがますます変態になってしまった気がしますっ!」
「ふむ。まぁ少年は私の部下だからな」
 しかも今の発言で殺されるような心を読まれたことがバレてしまった!
 教訓が役に立たねえ!
「つーか、僕はあんたの部下ですか」
「当然だろう。私は部長なのだから」
「そうか…っていや、それなら僕は部員だろうが!」
「ふむ。ならば言い換えよう。少年は私の部員だ」
「うん……ってあれ?何か違うような……?」
 などと、考えていると。
「ん…あれ?ここどこ?」
 壊れていた不良品が修復されたようだ。
 じゃなくて。
 忘れていた瀬木根が覚醒されたようだ。
 瀬木根の胸は不良品じゃないよ。
「ここは部室だよ」
 僕は答えた。答えになってない答えだがな。
 瀬木根は僕に気づいたらしく、
「あれ?あんた……」
 と、目をぱちくりさせた。
 その後、自分に何があったのかを徐々に思い出したらしく、
 やがて、何かに気づいたように僕に向かい合って言った。
「あたし、おっぱい触られてない!?」
「大丈夫。触ったのは僕だ」
「おるあっ!!」
「いてぇっ!何すんだこいつっ!」
 思いっきり顔面を殴られた。
 間髪入れずとはこのことだ。
 教訓が何一つ活かされていない証拠だった。
 ああ…頬がいてえ…。
「痛いのも、何すんだこいつも波坂さんですね」
 と、
 隣で坂口がドン引いていたので思い出した。
「坂口、お前さ、瀬木根の話したら会いたがってたよな?」
 と、坂口に言うと、
「え?あ、ああ…まぁ、そうでしたけど」
 と、少したじろいで答えた。
 本人の前だと恥ずかしいのか?
「え?何?どうしたの?」
 瀬木根が怪訝そうな顔をした。
 面倒になってきたな……。
 僕は全てを押し付けるがごとく部長を見たが、そのさっきから終始ニヤニヤしている部長は待ってましたと言わんばかりに立ち上がって。
「よく聞け部下諸君!プラス転校生!」
 と、大声で言った。
 だから部下じゃねーというつっこみは置いといて。
「そういえば、あの人があたしをさらったんだ!何なのあの人!」
「うん、変な人。で、部長」
「部長?」
「その通り!」
 うわ、会話に入り込んでくるな!
 あんたはどうしてこう潤滑な会話に水を差すんだ!
 と、睨んでみたが、部長は意に介さず続けた。
「では諸君!今、導火線に火はついた!この瞬間をもって……!」
「……はあ」
 ちなみに、この人の大袈裟な前フリと、その後の台詞はもう決まっている。
「部活の開始を宣言する!」
 久々の、部活の幕開けである。




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