透明な彼女 2
- カテゴリ:自作小説
- 2010/03/30 14:32:46
「そっか。まぁ、気にすることないよ」
あ、亮太がまた悲しい顔をした。その表情があまりにも悲しすぎて、私は逆に尋ねることができなくなっていた。どうしてそんな顔をしているんだろう。何かあったのかな。
「結衣さ、いきなりだけどしばらくうちに泊まらない?」
「え! どうして急に?」
亮太の突然のお誘い。本当にいきなりで、私はそう聞くしかなかった。すると亮太は口ごもりながらも答える。
「いや、別になんとなく。とにかく泊っていけよ」
泊まれることは嬉しいよ。亮太と一緒にいる時間が長くなるのだから。だけど今は何の用意もしていないし、泊まるには少し抵抗があった。
「いいけど、何の準備もしてないから一旦家に帰って支度して、親に伝えてから来るよ」
私がそう言うと、亮太は首を振った。
「いいから。俺が連絡しとく、用意とかいらないからここにいて」
真剣な瞳。有無を言わせない強さがそこにあった。亮太が何を考えているか全く分からなかったけど、私は頷くことしかできなかった。
やっぱり、何かとても大事なことを忘れている気がする。それから奇妙な生活が始まった。
亮太の部屋でご飯を食べ、夜中にこっそりお風呂に入り、そして、何よりもおかしいのが私は学校に行かなかった。行かなかったというより行かせてもらえなかった。もちろん行くなと言ったのは亮太だ。朝になり学校の支度を始める亮太に、「私も行きたい」とお願いしたけれど「ここにいて」と言われどうすることもできなかった。学校を何日もさぼってしまっては、先生も親も心配するんじゃないかと気が気じゃなかったのだけど、おかしなことにどちらからも連絡はなかった。
亮太が学校に行ってしまい、私には暇という悪魔が襲いかかる。何もすることがないのだ。ここ数日泊まったことで亮太の部屋のマンガは読みつくした。数少ない小説も読んだ。ゲームをさせてもらった。でも中々クリアできずに飽きてしまった。外に出て散歩やお買い物したいのだけど、亮太はそれさえも止めた。この部屋から一切出るなと言われているんだ。もちろんトイレのときは出ているけど、めちゃくちゃ慎重に行かなければいけない。分からないけれど、亮太は言った。
「俺以外の誰とも会うことは許さない」
こんな生活が続いてもう何日経った? きっと一週間はとっくに過ぎていると思う。カレンダーも何もないこの部屋での生活は、私に時間という感覚を失わせてしまった。今日も亮太は学校に行き、退屈なお昼を過ごしている。
「暇だなぁ」
ぽつりと呟いた。そして決心した。亮太に内緒にちょっと外に出てみよう。随分長い間外の世界に触れていないから、外の空気、景色が恋しくて堪らないのだ。
ごめん、亮太。 この日初めて、私は亮太との約束を破った。
ドアを慎重に音をたてないように開けて、この家からの脱出を試みる。脱出は大袈裟な言い方だったかな。どっちみちここにはまた帰ってくるんだからね。
辺りを見回し、足音をたてないようにまるで忍者のように静かに階段を降りていった。けれど私の足をぴたりと止まる。リビングから亮太のお母さんが出てきてしまったのだ。洗濯物を持って階段を上がってくる。隠れなきゃ、と頭では分かっているものの、足が固まって動けなかった。
私はもう仕方ないと観念し、自らお母さんに声をかけた。しかし、亮太のお母さんは私と目を合わせることなく、横を静かに通り過ぎて行ってしまった。今、無視されてしまったのかな。何かしてしまったのかな。そう考えてみると、思い当たる節をあった。
泊まらせてもらっているのに、お礼も挨拶を全くしていない。もちろん私は亮太にちゃんと言いたいって言ったのだけど、やっぱり断られた。食事だって用意してもらっているのに、そのお礼だって一度も言っていなかったのだ。それはやっぱり怒るよね。大好きな彼氏の親に嫌われてしまい、私は精神的にダメージを受けていた。そして自然と足が向かったのは、亮太の部屋。やっぱり出なければ良かったと後悔し、部屋で大人しくしていることにしたのだ。
夕方になり、亮太が帰ってきた。
「ただいま」
「お帰り」
そんな夫婦みたいな会話ができることが嬉しい。お泊り初日の時は何だかどきどきした。くすぐったい気持ちになった。
「あのね亮太……」
私は早速切り出した。亮太にお母さんのことを話そうと思っていたんだ。黙っていてもしばれたら怒られるかも、という考えが頭に浮かんだから。
「どうした?」
首を傾げながら私の隣に座る亮太。
「今日ね、約束破っちゃったの。ごめん」
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本物の作家さんが書いてるみたい!
透明な彼女って.....
うー。次も楽しみー
食事だった用意してもらっているのに
って、食事だって...........じゃない!?
ゴメンネー。注意つけて
携帯小説とかいけそうw