※　ネタバレしちゃいます。

　成り行きで引き返せなくなって、アイドル活動をだらだら続けている涼くんに、大きな転機が訪れます。それは、有名音楽家・武田氏との出会いでした。

　毎週「オールドホイッスル」という歌番組を主催している武田氏は、どういうワケか、涼くんに色々なアドバイスをしてくれます。しかも、涼くんのために作曲までしてくれるのです。自分らしさを最大限に活かせる名曲と「出会った」涼くんは急成長を遂げます。

　ついにアイドルランクＡのトップアイドルに！

　しかし、涼くんの挑戦はここからです。女の子アイドルではなく、男の子アイドルとして再デビューしなければなりません。

　もちろん社長は猛反対。

　社長「あなたは今やトップアイドルなのよ？　ファンはあなたのことを、妹や娘、恋人みたいに思っているの。それが男だとバレてご覧なさい！　妹は弟に、娘は息子に、恋人は変人に早替わりよ！」

　私はアイドルにハマったことがないのでピンとこないんですけど、やっぱり男性アイドルには女性ファンが、女性アイドルには男性ファンが付くものなんですか？

　トップアイドルとして稼ぐ立場にある以上、今更「実は男の子なんです」とは言えなくなってました。涼くん関連の商品はひとつやふたつではありません。秋月涼が男と知れたら、せっかくのビジネスがパアなのです。

　それでも涼くんは引きません。

　涼「音楽界のためにできる、僕の使命なんだ！」

　なぜ武田氏が、特別才能があったわけでもない涼くんを応援してくれたのか。それは、最初から武田氏は涼くんの正体を見抜いており、異色の男性ボーカリストとして、期待を寄せていたのです。

　武田「身体の線の細さにしては、スタミナと声帯に違和感があった」

　謎のオカマをここまで信頼できるとは……私の知るクリエイターって心が狭くて自己中なヤツばかりですが、一流の芸術家となると、視野も心も広いのですね。涼くんは武田氏とともに、音楽界に新しい風を呼び込むつもりです。

　ストーリー終盤になって、やっと「モテたい」から成長しましたね。

　どうにか社長を説得し、涼くんはある番組の録画で、男の子であることを暴露します。ところが、放送では該当箇所をカットされる事態に。

　涼くんの正体を知った業界のお偉いさんたちが、「男とバレてはビジネスがパアだ！」と暗躍し始めたのです。テレビ局や出版社にあれやこれやの手段を講じられ、涼くんは、公式の場で正体を明かすチャンスを失います。

　そこで武田氏に相談してみました。

　涼「八方塞がりなんですよ。何か手はありませんか？　何だってします！」
　武田「……オールドホイッスルだ」

　最後の手段でした。武田氏が独自で統括する歌番組「オールドホイッスル」に出演し、生放送ですべてを明かすのです！　そのための条件として、難関オーディションの突破を挙げられますが、なんだか男らしくなった涼くんはメラメラと燃え上がりました。

　オーディションに合格！　オールドホイッスルに出演！

　涼「実は僕、男なんです」
　武田氏「私は前から彼が男性であることを知っていました。
　　　　　　今日は男性ボーカリストとして歌ってもらいましょう！」

　格好は女の子のまんまだけどね。

　業界のお偉いさんたちは「えらいこっちゃ」と大騒ぎ！　ビッグニュースは全国放送にて、日本中のお茶の間に流れました。秋月涼のアイドル生命もここまででしょうか……？

　しかーし、ファンの反応は想定外でした。

　男性ファン「涼ちゃん！　俺の妹と弟の両方になってくれ～！」

　なんと涼くんの魅力は、従来のファンを倒錯の世界へと引き込んでしまったのです！

　女性ファン「キャー！　涼くん、カッコかわいい～！」

　そのうえ女性ファンが一気に増え、ファンの数は二倍以上に。業界のお偉いさんも社長も呆れました。こんなことなら、もっと早く公表してればよかった、と後悔するほどに。

　なんだいなんだい、涼くんってば大成功じゃないの。　公認のオカマとして！

　ただ、問題がひとつ残っています。愛ちゃんと絵理ちゃんも、涼くんが男の子だとは知らなかったわけで。

　愛「本当に男の人なんですか？」
　絵理「……………」

　何しろ一緒に温泉に入ったこともある仲です。

　愛「脱がします！」

　涼「キャ～～～！」
　
　おあとがよろしいようで。