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怖い話 ~第三夜~ 「タクシードライバー」

強い雨が降るあの日の夜だった。
真夜中とも言える時間に、私は歩道に立ち夕クシーがくるのを待っていた。
家に帰るためではない。
ある目的があって、タクシーに乗る必要があったからである。
いつもは車が多く通る道なのだが、今日はなかなか通らない。
雨だからであろうか?
それとも世間を騒がせているあの事件のためであろうか?
思いをめぐらせていると、一台のタクシーがきた。
運良く乗客は乗っていないようである。
もし他の客が乗っていたら目的をあきらめて帰るつもりであった。
後から気づいたことだが、乗らずに帰ったほうが良かったのである。
こんな後悔をしなくてすむはずだったのだから・・・。

私はタクシーを止めて乗り込んだ。
「こんな時間にすまないが、○〇峠を越えて行く場所にどうしても行く必要がある。
行ってくれないか?」
タクシードライバーは返事のかわりに車を走らせた。
すれ違う車もなく、ただ風景が窓を流れていた。
流れる風景に見飽きたころ、タクシードライバーがぼそりと言った。
「お客さん。どこかで会いましたよね?」
私は、タクシードライバーに知り会いはいない。
タクシードライバーは運転に集中するためだろう、前を向いたままで顔がはっきりとわからない。
「人違いだろう」
私は否定した。
タクシードライバーは返事に納得したのか、何も言わずに車を走らせる。

タクシーは峠へと入っていった。
あいかわらず雨が強く降りつづける。
不思議なことだが、全く他の車とすれ違うことはなった。
タクシードライバーは、またぽそりと言った。
「お客さん。どこかで会いましたね?」
先ほどと全く同じ質問である。
「知らないと言っただろう!」
私はむっとして答えた。
同じことを何度も聞くのは失礼というものだ。

よほど私に似た人がいるのに違いない。
とはいえ、私は客だ。
お客を不快にすることはやってはいけないはずだ。

山の中腹に差しかかったころ、私はタクシーに乗った目的を果たすことにした。
「ちょっとそこで車を止めてくれないか。小用でね」
私の指示通りにタクシーが脇道に入っていく。
やがてタクシーは止まった。
辺りは静寂につつまれ、降りそそぐ雨音のみ聞こえる。
私はタクシーを降りず、上着のポケットに手を入れる。
タバコを取り出す、そのように見えるだろう。
その時、タクシードライバーがまたポツリと言った。
「お客さん。連続でタクシードライバーが殺される事件ありましたね」
タクシー連続強盗殺人のことである。
まだ犯人は捕まっていない。
ひとけのないところに車を止めることになった恐怖があるのだろうか?
もし何かが起きたとしても、だれも助けに来ないのだ。
私はポケットの中からあったものを握り締め、そして・・・・
タクシードライバーの首に細い紐を巻き付けた。
「残念だったな。その犯人が私なのだよ」
私はニヤリと笑いを浮かべ、巻き付けている紐をぐいぐいぐいと絞めていく。

そのときタクシードライバーが、ポツリと言った。
「お客さん。思い出しましたよ。どこで会ったかをね」
私は驚いた。
私は首を絞めているのである。
本来ならしゃべることなどできないのだ。
それどころかタクシードライバーは苦しがっている様子など全くない。
私は、恐怖に襲われた。
さらにタクシードライバーは、ポツリと言った。
「私は、お客さんに殺されたんですよ。こんな雨の日にね。
私を忘れたんですか?」
タクシードライバーは、首だけをぐるりと真後ろにねじれるように回転させて私を見た。
ありえない・・・。
私は恐怖に蒼白となった。
タクシードライバーの瞳は白く濁っており、顔の肉もところどころ削げ落ちて骨をのぞかせていた。
「お客さん。以前のタクシー料金いただいていなかったですね。今いただきましょう。
料金はあなたの命ですよ」
タクシードライバーの腐敗した手がぬぅと伸びて私の首を絞めた。
私は逃れようともがく。
しかし、ものすごい力で首を絞められていて振りほどくことはできなかった。
私の意識がだんだん闇に落ちて行く。
そしてある思いが頭をよぎった。
タクシーに乗らなければ、こんなことにはならなかったのだ・・・、と。

#日記広場:自作小説

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2010/06/06 11:11
怖…。




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