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エア・ドゥ(ケーススタディ)

一橋ビジネスレビュー2001年春号に掲載されているケースです。
今回は「エア・ドゥ」です。
毎度のことですが、状況が現在と異なっている部分があると思いますので
ご注意ください。

エア・ドゥは、札幌(千歳)~東京(羽田)間を就航する航空会社です。
1996年に、航空運賃が自由化されたのですが、札幌東京間の旅客運賃は、
安くなるどころか、3社(ANA、JAL、JAS)同一の価格で、往復運賃が廃止に
なった分値上がりしたという状況でした。
これに疑問を持った、養鶏場経営者浜田輝男は、中小企業仲間とともに、新
規航空会社を設立することを決意しました。
東京~札幌間の旅客運賃を下げることで、北海道の経済を活性化させる事
ができると考えたのです。

浜田氏の熱意は多くの北海道民の共感を呼び、就航予定の1998年までに
30億円の出資を得ることが出来ました。

エアドゥは、当時さまざまな料金設定で不透明感があった大手に対応するた
めに、片道16000円画一料金を打ち出しました。
「小所帯ゆえの丁寧な安全管理」「割安感・わかりやすい運賃設定」「心のこ
もった温かいサービス」「クリーンなイメージ」そして、「北海道のため」という企
業目的は道民の支持を得、就航から4ヶ月までは搭乗率80%を越えるという
上々の滑り出しとなりました。

しかし、大手が対抗的な低価格設定をしだすことによって、状況が徐々に悪く
なります。
その後は、搭乗率が40~50%を推移するような状況となりました。
2000年には、累積赤字が60億円に達し、道庁や財界から30億円の支援を
受けることになったのです。

エアドゥには、新規事業者であるが上のハンディがいくつかありました。例え
ば、空港利用の制限です。
新参であるエアドゥの機体は、空港の端のほうに止めざるを得ませんでした。
乗客は、いったんバスに乗り込んで、移動してから飛行機に乗らざるを得な
かったんです。
また、航空機の整備の問題がありました。
エアドゥは、自社で航空機の整備が出来ないので。他者に整備の委託をする
以外にありません。
自由化が先に進んでいるアメリカでは、航空機整備専門の業者があるので
すが、エアドゥはライバルといえる「日本航空」に整備の委託をするしかありま
せんでした。
その状態では、コストを下げることはなかなか難しい。

公正取引委員会は、新規参入者に対しての対抗的価格設定を良くないことと
し、新規参入に障壁があることを問題だとしましたが、状況が良くなることは
ありませんでした。


札幌~東京間は、ドル箱と言われる重要路線であるため、ベンチャー企業が
低価格を打ち出した場合、過酷な価格競争に突入することは必至でした。そ
こでは、規模の経済と経験効果のある大手に対抗するのは容易ではありま
せん。
一方で、成果として、①同路線の運賃に風穴を開けたこと、②永く規制に守ら
れた産業を規制緩和する際に行政がどう関与すべきかについての問題提起
となった点が挙げられます。


エアドゥは、2002年に民事再生法を適用、全日空の支援を受け、2005年に
再建を完了しました。
札幌~東京間には、同じく新規参入のスカイマークエアラインが2006年に就
航し、新たな競争を繰り広げています。

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2009/03/09 20:43
現在、日本の空は、ほとんどJAL・ANAの2つに統合されてしまいました。
もとは、1960~70年代に、地方の航空会社を強引に統合させた、運輸省(当時)の考えがありました。
大企業化して、会社を安定させるためです。
当時、地方の航空会社に、事故が多かったこともありましたが。
それで、JAL・ANA・JAS(日本エアシステム)の3社になりました。
約30年後に、JAL・JASが合併して、今があります。

もし、地方の航空会社が今でも残っていたなら、日本の空は、もっと地方色豊かなものになっていたかもしれません。

新規参入の、エアドュ・スカイネットアジア・スターフライヤーなど、地方を拠点とする航空会社には、期待したいものですね。
道のりは平坦ではありませんが。



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