英雄物語3
- カテゴリ:日記
- 2010/10/16 22:24:32
少年は彼の実家が裕福ではないとわかっていたので一円も両親に頼ることなく
みんながまだ寝ている時間に印刷所は少年と同じ重さの新聞を積み立てる。
少年はバイクに乗って一軒一軒新聞を運ぶのだ。
午後は建築現場から建築の仕事の臨時バイトに駆けつける。
その麗しい顔をセメントの粉で覆い汚して、
上司に気に入られるためにその美しい声すらも控えた。
音楽のレッスンが終わった午後まだ早い時間は、
ウェイターのバイトに向かうため、ほんの少しのお金を節約するために
3時間かけて歩いてレストランに向かう。
少年はただ黙々と彼の仕事をこなした。
たった15歳の少年がしなくてもいいようなこともすべて黙々とこなしたのだ。
ただこの辛い二年を乗り切るために黙ってすべてのことをこなし続けた。
この日々をさえ乗り切れば自分の未来は輝きに満ちているのだから――。
できることならなんでもやった。
それでもまだ一日三食は食べられなかった。
例え残るお金が食べたり服を買ったりするのに足りなくても、
給料を貰えば、まずすることは練習費を支払うことだからだ。
とうとうある日、食べるお金が一切ないことに気づいた。
二日空腹に耐えて過ごし、彼のひ弱な体は歩くことさえままならなかった。
それでも練習費を払わなくてはならないという
プレッシャーに追われなんとか仕事に行った。
その夜、レストランのテーブルを片付けている時、
お客さんが残したスープに麺が半分以上残っているのを見つけた。
まだ暖かかった。これ以上飢餓に耐え切れず、手が震えた。
スプーンを取り、残っていた麺を食べ始めた。
あれ……なんでこんなにしょっぱいんだろ……。
その時、気づいた、それが自分の涙だと……
自分でも気づかない間に自分の涙がおわんに零れ落ちていたことに。
ある日、少年は病気にかかった。
高熱を出し小さな狭いアパートで三日三晩寝込んでいた。
幸いなことにすでにレッスン費は払ってあった。
だがもう三日分のバイト代が消えた。
だから再び、少年は弱々しく重い体を引きずって3時間の徒歩を費やし
レストランのバイトへと向かったのだ。
帰る途中、献血のブースを見つけた。
腹の虫が騒いだ。
そして再び、少年はしたくなかったことをした……
中に入って行き……一時間後、手に幾らかのお金を持って出てきた。
力ない体を引きずって店に入り、そこで一番安いクラッカーの箱を買った。
とうとうこんな二年を耐え抜き、彼は5人グループの一人に選ばれた。
会社はこれまでで最も優れたグループになるだろうと言った。
5人の少年はそれぞれまったく違う個性を持っていたが、
会社はその5人を合わせれば完璧になるだろうと考えたのだ。
少年たちはグループの一員に選ばれとてもラッキーだと思った。
そしてその時こそ、少年が最年長として、彼を慕う4人の弟ができた瞬間だった。
彼らが最初のCDを出した時、
それはたった二つの曲しか入っていなかったにもかかわらず、
韓国チャートでトップを取り、
韓国ではCDが余り売れないと言う事実をぶち壊した。
少年はとうとう成功を味わった。
日々増えていくファンレターに、過去二年のすべてが報いたのだと実感した。
しかし完璧なものなどと言うものは存在しない。
良い時間はいつも短いし、実際には残酷だ。
初めてファンミーティングを開催した時、
訪れたファンは他のメンバーのファンばかりだった。
他のメンバーの前に並ぶファンの列を横目に、
自分の前には一人として並んでいないのだ。
少年は叫び泣き出したかった。
スタッフはこの状態を変に見せたくなかったので
何人かのファンを少年の前に連れて来た。
彼は悲しみを耐え、女の子のファンと話し始めた。
しかしファンの子は冷たく言い放った
「私無理やりあなたの列に並ばされたわ、あなたのこと好きでもないのに」
……彼の心は再び粉々になった。
しかし泣かなかった。
その代わり血が滲む程唇を噛み締めた。
それでもみんなの前で涙を見せたくなんてなかった。
特に自分自身には。
彼にはどうしてファンに嫌われているのかわからなかった。
しかし彼が本当に知らなかった事実とは、
ミーティングルームが満員で仕方なく彼のファンは
建物の外でまだ彼を待っていたという事だ……
彼とともに、彼のファンの心も粉々になっていたのだ。
その後、インターネットを見て知った事実に
彼はついクスクスと笑い出してしまった。
自分が嫌われているわけでも、
自分が何か至らない訳でもなかったのだ。
それはくだらない、訳のわからない理由だった。
ただただ彼は可愛すぎたのだ……
女の子たちが嫉妬するほどに……
彼は決して諦めなかった。
毎日親しみある笑みを顔に浮かべてみんなと向き合い、
彼が本当はどんな人物なのかみんながわかってくれることを、
彼の声を聞いてくれることを祈り願っていた。
しかし頑張れば頑張るほどに、プレッシャーを感じてしまった。
パフォーマンスの最中にミスをすると、緊張してしまい、
それでもっとみんなに嫌われてしまうんじゃないかと怖くなった。
~つづく~