夕焼けこやけの…3
- カテゴリ:日記
- 2010/11/26 09:27:45
フルスロットルで走る礼子の単車…もとい、改造スクーターのケツに乗せられた蒼雪は、背後に迫る3台のパトカーのサイレンに眉をひそめた。
拉致同然に蒼雪を連れ去った礼子。当然、学校側は警察に連絡した。全国でも名高い坊っちゃん嬢ちゃん学校である。蒼雪に何かあったら、その名に傷もつきかねない。
「そこのノーヘル暴走スクーター! 停まりなさい!」
「礼子さん、どうしよう! このスクーターじゃ追いつかれちゃうよ!」
「はん、ガキが大人に意見かましてんじゃねえよ! 原チャリの礼子っていえば、少なくとも東北地方のゾクは震え上がったもんだぜ!」
東北地方バカにすんなあーーー!! 意味不明の雄たけびをあげ、礼子はさらにスクーターのスピードを上げた。
しかし、所詮はスクーター。排気量の差は埋められず、パトカーはついに礼子と蒼雪に横付けしてきた。
「こらぁ! 停まれェー!」
ゴリラ顔をした警官が、助手席の窓を開けて身を乗り出してきた。運転担当の警官が、さらに2人のスクーターに幅を寄せてくる。
しかし礼子も負けてはいない。ガンっとパトカーの横腹に蹴りをくれてやり、大きく舌を出した。
「はっ! あたいに追いつくのは一千万年早いよ! あたいを捕まえたきゃ、はえ縄漁の網でも持ってきな!」
「礼子さん、囲まれてる!」
「なっ、なにぃ!?」
ゴリラ警官の挑発に乗り、前と後ろに気が回らなかった。礼子の運転するスクーターは、前後と右手をパトカーに塞がれ、ガードレールに押し込められる形となっていたのである。
「まずい、このままじゃ…! ――よし、こうなったら! ぅおおりゃーーーー!!」
「えっ!? ちょ、礼子さ…うわああああーーー!!」
蒼雪は礼子に後ろ手にむんずと襟首を掴まれ、軽々とガードレールから放り投げられていた。ごうっと耳元で風がうなる。バタバタと金色に染めた髪の毛がはためき、目の前には、逆さまに映る青空と海。
(あ…海きらきらしてる。きれーだなー)
ああ、俺落ちてるよ…あはは…短い人生だったなあ~。蒼雪が現実逃避にうつろな笑みを浮かべかけた時、パトカーに捕まった礼子が警官に取り押さえられながら声を限りに叫んだ。
「蒼雪! そのまま港に向かってまっすぐ泳ぎなっ! 着いたら、第3倉庫に行くんだ! そこに…そこにあんたを待ってる人が…きゃあ!」
手荒に手錠をかけられたらしい。どすの利いたレディース声が、最後ちょっとかわいい悲鳴で終わる。
あ、なんか萌えたかも。などとアホな感慨も今の蒼雪の状況を救えはしなかった。
だって…だって…。
(俺、泳げないんだけど~!!)
後ろ向きに空中落下するとまず人は意識を失うって、元レンジャー部隊のラーメン屋のおじさんが言ってたっけな…。
そしてそれは正しく、細い体が水面に叩きつけられる寸前、蒼雪の目の前がふっと暗くなった。
「南房総水産連合会初代総長、吉田雪斎…。久しぶり…だね…」
(え…なに…?)
右頬に硬く冷たいコンクリートを感じながら、蒼雪は感情を押し殺したような女の声を聞いていた。
みなみぼうそうすいさんれんごうかい…。母から聞かされたことのある名称。
そして、吉田雪斎とは、日本有数の財産家である吉田家の跡継ぎでありながら、若いころは千葉県を根城とする大暴走族のヘッドだった男の名前。
二つに共通するもの――それは、蒼雪の実の父親のことだ。
(なぜ、父さんの名前が…)
秋の海となると、水温も低い。頭のてっぺんからつま先までぐっしょりと濡れた蒼雪の体は冷え切って、少しでも体温を上げようとがたがたと震えている。
どうやら、水に突っ込んだ時に気絶したせいで、水をあまり飲まずに済んだらしい。
こうして助かっているということは、誰かが即座に引き上げてくれたおかげだ。
一体誰が…。蒼雪は命の恩人を見ようと、海水に染みて赤くなった目をこじ開ける。
いずこからか射す白い午後の光が瞳を射た。
ほこりっぽさと、古い機械油のにおい。ゆったりと回る錆びた換気扇。高い天井。
さだかではない視力で、ようやく蒼雪はここがどこかわかった。
(ここ…倉庫…?)
使われなくなって久しいとみられ、体育館のように広い空間には何もなかった。
蒼雪はさらに首をめぐらせる。彼から少し離れたところに、男と女が対峙していた。
男は倉庫の暗闇に沈み、女は開け放たれた扉から差し込む逆光で顔が見えない。
でも、蒼雪はわかった。2人は…2人は…。
「…まったく、勝手なことしてくれたもんだよ。蒼雪は…返してもらう」
「…町子…。お前は昔と少しも変わらないな…あの時も…そうやってお前は俺から離れていった…」
「うるさい! あんたに振り回されるのは、もううんざりなんだよ!」
(父さん…母さん…)
蒼雪の視界がようやくはっきりしてきた。闇の中に立つ、仕立ての良いダークスーツの髭面の男。そして、光を背にして立つ、母の姿は…。
(深紅の、特攻服…。母さん、あれはもう二度と着ないと言ったのに)
いえいえ、実話じゃないっすよ~。
自分のIDネーム使っているのは他に名前が思いつかなかっただけで…。
そもそも流れでこの企画が進行しております。ww
…って、これ5回で終わらない展開なのでは?(^∇^;)
…いや、そこが俺の腕の見せ所…。
一緒に完結がんばりましょう!
第3倉庫周辺は、全国から集結した暴走族達に囲まれていた。
雪斎 「どうやら… 本気で俺を、潰すつもりだな。 (ー"ー ) 」
町子 「今度こそ、お互い白黒付けようじゃないか。 ( ̄‥ ̄) 」
深紅の特攻服… それは、全国制覇を成しえた者の証!
関東土建連合会総長 「よぉ、町子!久しぶりだな~ Σd(ゝ∀・) 」
関東を始め、次々と各地のヘッドが、やって来る…
今夜ここで、首領幹部による会議を行う為、町子が呼び出したのだ! …つづく