毎朝、通勤中の電車の車内で見かける若い男性がいる。

何を意識しているのか分からないがとりあえず黒ずくめの服装でいる事が多く、いつも乗車口付近に佇んでおり、私が降りる駅よりももっと先まで行く事は知っている。

彼がどこまで行こうが知ったこっちゃないが、私が、彼が気になってしょうがないのは、その前髪である。

彼の前髪は、異常に長い。
そう、前髪だけ。
前髪が、顔を左半分覆っている。

目にかぶさるくらいの、俗にいう「鬱陶しい前髪」ならまだしも、顔を半分覆う前髪なんて、アニメの鬼太郎か、実写版でウェンツが演じた鬼太郎くらいでしか見た事がない。
現実に、こんな前髪がいるとは思わなかった。

こうなると、その前髪の下が気になってしょうがない。


前髪の下の、目の色が違うんだろうか？

前髪の下の、目の大きさが違うんだろうか？

前髪の下には、ちょっとずれた位置の第三の目があるのだろうか？

その前髪は、何を意識してるんだろうか？

その前髪は、何に使うのだろうか？

その前髪を、カッコイイと思っているのだろうか？


いずれにせよ、そんな前髪で常に顔を半分覆っていたら、視力を激減させてしまいそうな気がする。
早く前髪を適正な長さに切り、顔半分を解放した方がいいと思うのだが、彼は頑なにその前髪を維持し続けている。


そんなある日、ふと見たら彼がメガネをかけていた。
ほら、言わんこっちゃない。
視力が落ちたんだろう、その前髪のせいで。


だが彼は、メガネを、前髪の上にかけていた。


両目の視力を保つためのメガネだというのに、有効活用しているのが右目だけ。
本来メガネの奥に左目が見えるはずなのに、メガネの奥には前髪しか見えない。

両目用メガネを片目だけで使う・・・、メガネ界の常識を覆している。
メガネ屋さんもビックリだ。
そこまでして前髪を維持したいのであれば、もう何も言うまい。


ただ、すれ違い様に吹き出しそうになるほど、「メガネ　on　the　前髪」は見た目的におかしかった。

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