ヨシオの女装化計画は暗礁に乗り上げた格好になった。

何せ、ノーテンキな人間はこちらが仕掛けたことにも思い道理食いつかないし、だからといって食いつく仕掛けも思い浮かばない。

結局、ヨシオに渡った女達のパンティは他の男達の所に散り去ってしまった。ヨシオの所には残ってないから、私達の思惑通りヨシオがそれを身につけて女装化の道を歩む事は多分無いだろう。

予定道りに行けば、今頃ブラジャーを買いに行くハズだったし、あの下着売り場のオネイさん積極的だったから、またなんか買わされたりして、と、なるはずだったのが、ヨシオは言動も無責任だから、今更なんとも思っていないらしい。

うまくいってれば、「ヨシオ」は今頃「ヨシコ」だったかも知れなかったのに。世の中、思い通りにはならないもんだワ。

で、話が終わりだったんだけど、最近ヨシオはヨシコ（「女スパイのヨシコだよ」）とデキタらしい。

ヨシオがヨシコになってからだともっとややこしかったけど、2人が出会うキッカケは私達が作ってしまった。

私達がヨシオと向かい合って食事をしていると、仲間とはぐれたヨシコが私達を見つけ、ヨシオの隣に座って一緒に昼食となったので、成り行き上、2人を互いに紹介することに。

ヨシコはクラスが違うから、ヨシオと話をするのは初めてで、近付いて顔を見るのも初めてなんだった。

互いに意識し合うと、まず、ヨシオは外観男前、背が高くスマートなので、見栄えの良さでは天下一品（褒め過ぎと思われるけどホントだよ）。

ヨシコは（多分）こんないい男目の前にしたのは初めてだろうから、人目惚れしても不思議はない。（私達だって初対面で思わず惚れたんだから）。

一方のヨシコは、化粧は目だたない地味な感じで、自己アピールはしないけど、気付いたらいいところいっぱいで注目されると思う。

それに、のんびり自然体だから、話をしても、私達のように高慢・生意気さが全くない。仕草も、話し方も可愛らしい。男なら（多分）抱きしめたくなるタイプ。

せっかくのヨシコの良さをノーテンキなヨシオが気付くハズもなく、ただ、私達と話をするよりはヨシコと話している方が安らぐようだ。

さらに、私達が追い打ちをかけるように、2人をノセたこともあって、ノーテンキ（純真なのか？）2人は意気投合したようだ。

その後、昼食時には一緒に居るシーンをよく見かけるし、つい最近、ヨシオがヨシコの住んでいる所から朝帰りのシーンを見たという複数の目撃情報があったりして（その目撃した人たちは、どこからの朝帰りだったンジャ）、もはや2人は出来上がってしまった事は明白だネ。

これはコマッタ事になった。ヨシオがヨシコに独り占めされてしまう。今後ヨシオは私達の自由にならなくなってしまうのか。

「それはそうだよ。あいつだって人格があるから、何時までも人の自由になると思うのが間違いなんだ。」エリカが憮然として言い始めた。そして、次に出た言葉は、私にとって人生が変わるかも知れない強烈な一言だった。

「れい、あんたもヨシオと同じだよ。」

「エリカ、それはどういう事よ。」思わず攻撃的になる私に、「れい、落ち着いて聞きなさい。ヨシオとあんたは見栄えがいいと言うことは同じなのよ。でも、深く付きあいたくない要素を持っているから。ヨシオは煮え切らないのととんちんかん。あんたはワガママで素直じゃないから。だから、どちらも、見栄えでつれて歩くには最高の男友達、女友達になる訳よ。」

ウヌヌ、よくぞ言ってくれた。なんか言おうとしたが返す言葉がない。

「そりゃ、私達も人のこと言えた義理じゃないけど。ゴメンね、れい。」エリカ冷静だね。彼女のおかげで今まで何度か難関を切り抜けた事があったよ。

でも、今回はこたえた。言われるまで気付かなかった。

そう言われると、プロポーションなら、そこいらのモデルに負けないと思うけど、顔は化粧でごまかして見栄え良くしているから、素顔はイマイチ自信が、それなら素顔でいい男のヨシオの方が私よりマシって事なのか。

なんか自分の価値観が分かったような気がしてきた。だがガックリで終わってなるものか。「修行」のテーマが見えてきたョ。

もっとヨシオの人格を認めよう。ヨシコは性格的に良いものがあるから、見習おう。まずは2人を祝福して、ずっと友達として付き合って行くことを決心ナノダ。

修行を積んで1年後の今頃は、私の魅力にみんなひれ伏すのジャ。ワハハ

《また妄想が始まったョ。なんのための「修行」なのか分かってんの、れい。》