Children's Fantasy ...
- カテゴリ:自作小説
- 2011/01/31 18:27:37
プロローグ其の二
巫女服を着た少女は走っていた。今の状況から逃げ出すために。
問題が起こったのは今から数分前、今着ている巫女服ときつねの耳と尻尾の有料アバターを買ったときに問題が起こったのだが――
「そこのお前今すぐ止まれ!」
――問題を思い出そうとした瞬間に後ろから大声が聞こえた。少しだけ後ろを見てみると、先程ぶつかった男が物凄い形相で追いかけてくる。どれくらいすごいのかと言うと周りに小学校低学年くらいの子供がいなかった事に安心するくらいすごかった。もしもいたならばこの周辺には子供の泣き声が響き渡っていただろう。
その男は素早さのステータスを重点的に上げているのか、それとも現実《リアル》で足が速いのか、どちらなのかは分からないがとにかく足が速かった。
少女はこのまま町の外へと出られる門へと向かおうと思っていたが、しかし真っ直ぐにこの道を進んでいたら後ろの男に追いつかれてしまうだろう。
ならばと思い、少女は自分の右手側の武器屋と道具屋の間の細い裏路地へと入ることにした。この辺りの地理には詳しくないが、そこで上手く男を撒くくらいしかよい手段を重いつかなかった。
裏路地に入るとそこは行き止まり――などということは無く、少し進むとそのまま前へ進む道と左右へ進む道との分かれ道があった。一瞬迷いはしたが、なんとなく右へいく。そして次の分かれ道は左へ。その次は右。次は右、次も右へ、そして真っ直ぐ。さらに左へ――。
実はこの時点で最初に通った武器屋と道具屋の路地へ戻るはずなのだが、入ってきたはずのそこにはなぜか壁があり、進路は左右のどちらかだけとなっていた。
しかし焦っているのと入り込んでいる場所を走っているのとで、そのことに気づくことはなかった。
壁があるために今度は左右のどちらかにしか進む事は出来なかった。今までは前後左右――とは言っても後ろへ進むことなどはしないが――へ進めていたので少々戸惑いはしたものの、右へと進んだのだが、ここで一つアクシデントが起こった。
足元に空きビンが落ちていたのだ。
もしもあと十度ほど視線を下へ向けていたのならばそれを踏むことなく前へ進めたのかもしれない。もしも裏路地だからよくあるアニメやマンガみたいに空きビンが落ちているかもしれないと考えることが出来たのならそれを踏むこともなく前へ進めたのかもしれない。
しかし早く逃げることだけを考えていた少女にはそうすることは出来なかった。
少女は空きビンを踏んでしまい後ろへ後頭部をぶつけて転んでしまいそうになった。
このゲームにはダメージの設定が三つある。『感じない』、『少し痛い』、『少し痛い以上痛い未満』の三つだ。少女は『少し痛い』に設定していた。そのために、このまま転んでしまえば実際に後頭部が少しだけ痛くなるはずだった。
――ああ、少し痛いだけとは言ってもやっぱり後頭部は痛いよね。
そう思いながら、目を瞑った。
しかし、いつまで経っても痛みはやってこない。
体を誰かに支えられている感覚がする。恐る恐る目を開けてみると、そこには少女がぶつかってしまった男がいた。
「大丈夫だったか?」
男は息切れをしていた。ゲームの中であるこの世界では、全力で走ろうが息切れすることは無い。ならば何故だろう? と少女は思い、ある答えに辿り着いた。
――もしかして、私を心配してくれたからかな?
そういうことですかw
今は巫女服少女の視点なのでカズヤは「男」と書いてますw