Nicotto Town


永遠などない、それこそ永遠


Children's Fantasy ...

プロローグ其の四

「まあ、ぶつかられた事は気にしてない。それに転びそうになったところを助けたのも大したことじゃない。……と言うか、まだ気付かないのか?」
「ふぇ?」
「その服の胸の所、誰もがびっくり仰天の超デカひっつき虫が付いてるぞ」
 そう言われて、少女は自分の服を見る。そこには超デカひっつき虫が付いていた。
「えっ、えぇぇえええ!? 何ですかこれ!? 突然変異!? 宇宙人による遺伝子操作!? どっ、どうしましょう!?」
「……それ、俺のアイテム。というかここはゲームの中だぞ。そういうのがあってもおかしくはないだろ」
 妙にテンションの高くなってしまった少女とは反対に、カズヤは冷静に対応していた。
 カズヤがテンションの高い人間であれば『なにっ!? 宇宙人だと? ついにこの俺の剣が活躍する時が来たぜ!』くらいの事は言っていたかもしれない。
 妹とは割とそれに近い会話をする事もあるカズヤであったが、初対面の人にそんな対応をする事は無かった。
 カズヤの冷静な対応によって落ち着いたのか、自分の服からひっつき虫を取ってカズヤへと渡そうとしていた。
「すいません。こんなに大きな物がひっついてたのに気付かないなんて……」
 少女は落ち着いてはいたが、落ち着いてるというのを通り過ぎて落ち込んでいると言ったほうが正しそうな様子だった。
 ここまで落ち込んだのは全部が全部カズヤのせいであるわけでもないのだが、少しは自分に責任があるとどうしても思ってしまう。
 責任と少しの好奇心から、カズヤはなぜ彼女が焦っていたのか聞いてみることにした。
「なあ、何であんなに焦ってたんだ? 俺は割とオンラインゲームの経験あるからさ、焦ってた理由を教えてくれたら力になれるかもしれない。まあ、無理に言えとは言わないけどな」
 その言葉を聞いた後、少女は言うか言わないかを少し迷っていた。
 言ってもいいのか? 初対面の人にいきなり自分の問題を話していいのか? この人はいい人なのか? 色々な事が少女の頭の中を駆け巡った。
 しかし今は他に頼れる人間がいる訳でもないので、少女は目の前の少年に頼ることにした。
「あの、助けてくれるのは嬉しいですし、私も助けて欲しいんですけど……名前を教えてもらえませんか? 名前が分からないと少し話しにくくて……」
 少女の言葉を聞いて、カズヤはまだ相手に名乗っていないことを思い出した。
 名前を名乗らないのであれば、相手が自分を信じてくれなくても文句は言えない。
「俺はカズヤ。現実《リアル》では十五歳の高校生。まあその……よろしくな」
「私の名前は……こういう時って本名を言ったほうがいいんですか?」
 カズヤの予想通り、少女はオンラインゲーム初心者であったようだ。本名を教えるのは余程仲良くなった人間だけだ。普通ならば教えない。
「いや、ここでの名前を教えてくれ。これは俺だけじゃなくて俺以外の人間にもそうしろよ」
「はい、分かりました。えっと、私の名前はサヤです。現実《リアル》では十五歳の高校生です。同じ学年だったみたいですね。こちらこそよろしくお願いします」
 一目見たときから年齢が近いだろうとは思っていたけれど、同学年だとまでは思ってはいなかった。まあ色んな年代の人間が混在するこの場所でならば、同学年の人間と知り合う事もそれほど低い確率ではないだろう。
 それはさておき、なぜ少女があのような勢いで走っていたのか聞くのが本来の目的だったはずだ。カズヤは気を取り直し、本題に入ることにした。
「自己紹介が終わった所で、そろそろ何でお前が走っていたのか教えて繰くれないか?」
 ようやく本題に入ることが出来た。サヤにぶつかられたからこそカズヤは面倒事に巻き込まれたが、それが無ければ彼女とこうして話すこともなかっただろう。まあ絶対に無かったとは言い切れない。これがオンラインゲームである以上、グループクエストなどで会話する機会があったかもしれない。しかしカズヤは人と話すことが苦手だった。それ故に友達も少ない。そしてグループクエストへの参加もあまりしない。このように面倒事に巻き込まれるくらいしか人との関わりを持つきっかけはないだろう。
 そんな事を知るよしもないサヤは、素直に何が起こったかを話し始めた。

アバター
2011/01/31 18:57
まあ長いのを全く変更せずに投稿してるからねw
……やっぱりプロローグ長いなぁ……。
アバター
2011/01/31 18:51
プロローグ長いねw



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