Children's Fantasy ...
- カテゴリ:自作小説
- 2011/02/01 18:49:53
プロローグ 其の七
「さあ、戦闘開始だ!」
そう言い終わるとカズヤは片手剣を右手に持ち、ビッグスライムに向かって駆け出す。それを見てサヤは、矢を番え敵に向かって撃ちだす。
矢をよく見てみると、それぞれが炎を纏っている。サヤは属性追加系のスキルを使うらしい。
矢が何本かスライムに当たった後かほぼ同時か、カズヤは袈裟に斬りつけた後に逆袈裟に斬りつける。そして相手の背後に回りこむために駆け出す。すれ違いざまに相手を三回斬りつけるスキル『柳刃』を使う。
これでカズヤとサヤでビッグスライムを挟んだ事になるが、サヤは遠距離攻撃がメインであるためカズヤがビッグスライムの気を引かなければならない。そのために大きな隙がない小技をメインに戦っていた。
突然スライムから四本の触手が伸びてくる。少々MPの消費が大きいが、四連続攻撃の『四影斬』を使いそれらを断ち切った。MPゲージが残りが少ない事を知らせるために点滅している。あと何回かスキルを使えばMPはなくなってしまうだろう。
その事を確認しながらもビッグスライムに駆け寄り何度かの攻防を繰り返す。
MPもそろそろ限界が近づいてきたので一旦距離を取り回復アイテムを使う事にする。
「ちょっとアイテム使うからビッグスライムに近寄られないように注意してくれ――って、相手の残りHPが低いからって大技使ってるんじゃねぇ!」
大技と言う物は基本的に隙が大きい物だ。これで仕留める事ができなければサヤは絶体絶命の危機に陥ってしまうだろう。
そしてその予想は当たり、ビッグスライムはダメージで少し仰け反るがそれを無視してサヤへ向かって行く。ビッグスライムの移動速度は遅いがスキル使用後の隙で少し動けなくなっていたサヤとの距離を詰めるには十分であった。スライムに背を向けて走り出せば十分な距離が取れるだろうが、その場合は触手がサヤの体を貫くだろう。
「くそっ」
ここまできて片方が死んでから勝つという事態は避けたい。そして幸いな事に、スライムはサヤの使用した大技でHPがほとんど無い。もう一度大技を使用すれば止めを刺せるだろう。
もし無理だったならば――サヤは死ぬしかない。
カズヤは最後の攻撃のためにMP回復薬を使用する。そして持ち前の高い素早さを活かし一気にスライムとの距離を縮める。
しかしビッグスライムも簡単にやられる訳も無い。四本の触手がカズヤへ向かって伸びてくる。そしてそれはサヤも同じだった。
合計八本の触手をカズヤ一人でどうにかできるはずもなかった。カズヤ自身に迫った触手は『柳刃』で切り払い前へと進んだ。サヤはと言うと、なんとか三本は対応する事ができたようだが、一本の触手がサヤの腹部を貫いていた。
しかしここはゲームの中。サヤのHPゲージは四分の一ほど減った程度で済んだ。
サヤの無事を確認すると、カズヤは現在使える最も威力の高い技を使用する。
「はあっ!」
『竜牙』。シンプルに相手を突くだけの攻撃だが、その単純さ故に威力も高かった。
そしてみるみるビッグスライムのHPは減ってゆき――ぎりぎりで止まった。
『竜牙』は突き攻撃であるために、次の行動をするためには相手の体から剣を引き抜かなくてはならない。
そしてビッグスライムの体からがぷるぷると震える。何か大技がくるのかもしれない。
「やばい――」
どうにか剣を引き抜こうと腕に力を入れた瞬間だった。
ヒュン! と甲高い音が聞こえた後、ビッグスライムは少しずつ形をなくしてゆき、最後には崩れ落ちる。
「これで終わり……ですよね?」
彼女のその言葉で、この戦いは終わったのだった。





























