Nicotto Town


永遠などない、それこそ永遠


Children's Fantasy ...

第一章 其の二

「あ、できてたんだ」
 スパゲティの匂いを嗅ぎつけたのか、妹の明日香が二階から降りてくる。
「ああ、ちゃんと手を抜かずに作ってやったぞ。感謝したまえ」
「エラソーにすんな」
 ボケてみたものの、冷たい反応しか返ってこなかった。
 和哉はスパゲティを皿に盛りつけ、テーブルへと運んでいく。
「お茶も」
「はいはい」
 妹の要求に応えてお茶も汲んでくる。そこそこに良いお茶っ葉を使った緑茶だった。緑茶を飲むのは子供の頃から習慣になっているので特に苦いと思うこともなく飲む。どんなに合わない料理の時でも飲む。例えばスパゲティとか。
「いただきます」
「どうぞ食ってくれ」
「和也もちゃんと『いただきます』って言え」
「……作ったの俺だぞ?」
「食材と食材を作ってくれた人に感謝するために言わないといけない」
「……分かったよ。いただきます」
 ぶっきらぼうな言い方ながらも、妹は正しい事を言っているのでそれに従う事にした。
 フォークで巻き口に含むと、ミートソースの甘い味が口に広がる。おそらく子供から大人までに受け入れられる味だろう。まあスパゲティそのものが嫌いな人間には受け入れる受け入れられない以前の問題だが。
 ふと時計を見てみると、もう十二時四十分になろうとしているところだった。
「なあ明日香、悪いんだけど皿洗いやっといてくれない?」
 一心にスパゲティを食べる事に専念していた明日香は顔を上げて「なんでだ?」とでも言うような顔をする。
「ちょっと待ち合わせしててさ。そろそろ用意しないとやばそうだから」
 それを聞いて明日香は「う~ん」と唸り、しばらく考える。
 そして考えがまとまったのかしっかりと和哉の顔をみてこう言った。
「じゃあ今度皿洗いやってくれる?」
「おおっ! やってくれるのか! ありがとうマイシスター!」
「妙な英語を使うなっ! 皿洗いやらないぞ!」
「ごめんなさい」
 こんな風に馬鹿な会話をしながら二人は食事をしていった。
 食べ終えた和哉は食器を下げ、歯磨きをするために洗面所に行こうとする。
「そういえば待ち合わせって何のため? もしかしてデート?」
 しかしリビングを出る直前にそう声がかかる。明日香としては冗談で言ったつもりなのだが和哉はこう答えた。
「まあ、違わなくもないな」
 実際に女性と二人で色んな所に行くのは同じなのでそう答えた。ただし彼女とではなくて友達とだが。
「そっ、そんなバカな……。超ダメ人間の和哉に彼女……地球崩壊は今日なのか……」
 しかしそんな事を知らない明日香は、和哉に彼女ができたと思ってしまった。
「お前の中で俺はどれだけダメな人間なんだよ……。あと彼女じゃなくて友達と色んな所に行くだけだから」
「なんだ、彼女ができたんじゃなかったのか。良かった……不幸な人間が一人増えたのかと思った」
 あまりにも酷い言い様に何か言おうと思ったが、強気な発言をしてしまえば機嫌を損ねて皿洗いをしてもらえなくなるかもしれないので、和哉はそれだけ言った後に洗面所に行って歯磨きをし、早く自分の部屋に入ろうと思ったのだった。

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