Nicotto Town


永遠などない、それこそ永遠


Children's Fantasy ...

第一章 其の三

 自室に戻った和哉は、自分の机に置いてあったリアルワールドを手に取り自分のベッドへと向かう。リアルワールドを使用すると、現実の体に力が入らなくなってしまう。そのため立ったまま使用した時には足に力が入らなくなり倒れてしまう。最悪どこかに頭をぶつけてしまい怪我をしてしまうかもしれない。なのでリアルワールドはベッドや布団などで横になり、楽な姿勢になって使用するのが基本だ。
 そして手に持っているリアルワールドは、一見するとタッチパネル式の携帯端末とヘッドホンに見える。そしてその見た目通りの使い方もできるが、それはリアルワールドのオマケの機能のようなものである。数世代前のゲーム機でDVDが再生できるのと似たような物である。
 リアルワールドのメインの機能はVR《ヴァーチャルリアリティ》ゲームの実現である。タッチパネルの方はゲームを起動するために、ヘッドホンの方は意識をゲームの中へ移すために使う。ちなみにヘッドホンは、ちょっとやそっとの事では外れないように頭に固定できるようになっている。
 和哉は自分のベッドに身を放り投げ、ヘッドホンを頭に付けた後にタッチパネルを操作し『Children's Fantasy』を起動する。意識がだんだん薄れてゆき一度世界が暗闇に包まれる。そして世界はもう一度光を取り戻してゆき、気がつけばそこは『Children's Fantasy』のスタート画面になっていた。スタート画面もしっかりと作られていて、その場所は森の木々の木の葉の間から光が漏れるという幻想的な光景であった。そして目の前に突如現れたディスプレイには『キャラクター選択』、『オプション』、『ログアウト』の三つの選択肢がある。和哉は『キャラクター選択』を選びキャラクター選択画面へと進む。
 キャラクター選択画面には現在、メインキャラクターの『カズヤ』しか存在しないが、まだ空きのキャラクタースロットが二つある。今はまだ別のキャラクターを作る予定はないなと思いながら、使用キャラクターに『カズヤ』を選びゲームを始める。この時から『和哉』は『カズヤ』となり、ゲームのプレイヤーの一人となる。
 カズヤの目の前に巨大な門が現れる。カズヤは門を通り抜ける。この門は前回ログアウトした時の場所へと繋がっている。ちなみに、門から出ていきなりモンスターに教われても問題ないように五秒ほどの無敵時間が存在する。その時間内は攻撃する事もできないが。
 通り抜けた先には、今日が休日であることもあって多くの人がいた。
 集合は午後の一時ごろ。現在は午後十二時五十五分。待ち合わせの場所は誰もが最初に訪れる町『スタード』の噴水広場で、待ち合わせ場所によく使われる名スポットだった。そこまでは現在地から一、二分程度で着く。ちゃんと間に合いそうなので、皿洗いを代わりにやってくれた妹に感謝しながらカズヤは集合場所へと足を進めていった。
 歩き始めて二分ほど、カズヤは噴水広場に到着していた。噴水は半径十五メートル、直径三十メートルの円形と割と大きな噴水であった。
 噴水の周りには多くの人物が溢れかえっている。普通の格好――とは言ってもファンタジー系のゲームでの普通の格好――をした人を探すのならば少し時間がかかるだろう。しかし今回カズヤが探すのは狐の耳と尻尾があり、さらに巫女服を着ているという少女だ。狐の耳と尻尾か巫女服だけを着た人ならば少しはいるが、両方を備えた良くも悪くも目立つ人物はそういない。実際に彼女が噴水近くのベンチに座っているのを見つけるのに三秒もかからなかった。
 カズヤは彼女に歩み寄り背後にまわる。そして軽く肩を叩きながらこう言った。
「おっすサヤ。ちょっと待たせたか?」
「うわっ。……あれ、カズヤくんですか。こんにちは。私も丁度今来たところなので大丈夫ですよ」
 突然肩を叩かれたことに驚きながらもきちんと挨拶をするサヤ。カズヤよりもしっかりとできた人物である。
 ちなみに多くの人がいるのにベンチに座れていたということは割と早めに来ていたということであり、この言葉は嘘である。それに気付けないカズヤは妹の言う通りに色々とダメ人間なのであった。
「そっか。じゃあとりあえず回復アイテムとかを買いに行った後に狩りに出るか?」
「はい、それでいいです」
 そして二人は大通りにある道具屋へ向かって歩き出す。

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