Nicotto Town


永遠などない、それこそ永遠


Children's Fantasy ...

第一章 其の四

 歩き始めて五分ほど、二人は大通りの道具屋に到着した。
 店内に入ると店長のNPCが「いらっしゃい」と声をかける。あごひげを蓄えた中年のおじさんのNPCだ。
 二人は数ある商品の中から回復アイテムのコーナーへと移動する。
 ここは始まりの町であるためにそれほど回復量の多いアイテムはないが、まだ狩るモンスターが弱いので問題ない。二人はこの店で買えるものの中でちょうど普通の回復量のHP回復薬とMP回復薬を買うことにした。とりあえずそれらを買い物かごの中へと入れる。
「あっ、そういえば矢の補充をしとかなきゃ」
 サヤはその事を思い出す。矢や投げナイフ等を使う者たちにとって、それらがない事は命取りである。まあ、いざという時はある程度上げた接近戦用スキルを使用して戦うが。
 しかしサヤは弓のスキルしか上げてなく、まだ接近戦用のスキルを上げていなかった。もちろん接近戦用のスキルが絶対に必要というわけではないが、それでもある程度上げていたほうがいざという時のためであろう。
「あれ? 弓のスキルに一定時間矢を消費せずに攻撃できるようになるスキルがなかったっけ?」
 カズヤの言う通り弓のスキルにはそういった便利なものが存在する。特に高レベルのグループクエストでボスと戦う時などは、普通に矢を持っていくと必要な回復アイテムが持てなくなってしまうので、弓使いたちには必須のスキルだった。しかし――
「そうなんですけど……だけどまだそのスキルが出る装備の組み合わせがまだみつからなくて」
 ――サヤはまだそのスキルを見つけることができていなかった。今ならばそこまで必須ではないスキルだが、いつかは必要になる時がくるだろう。
「それなら攻略サイトでも見たらいいんじゃねーのか?」
 装備によって使用できるスキルが変化する『Children's Fantasy』でも、使用可能になるスキルには『AのアイテムとBのアイテムを装備すれば基本は使用可能になる』というパターンがある。まあ、あくまで『基本は使用可能になる』なのでたまに使用できないときもある。
「そうなんですけど……この服装のせいなのか、普通の装備の方を変えてもなかなか使えるようにならなくて」
「あー、なるほどな」
 サヤの現在の装備はきつねの耳と尻尾に巫女服だ。そしてその格好はゲーム内の店で買える物やモンスターからドロップする普通のアイテムを装備しても変わらない。そして現在の装備の組み合わせによって普通に弓使の装備をした場合に使えるはずのないサポート系のスキル、はっきりと言ってしまえば聖職者《クレリック》系のスキルを使えるようになっている。しかしその代わりといえばいいのだろうか、普通ならば使える技がいくつか使えない。その代表例が先ほどカズヤが言った『矢を消費せずに攻撃できるようになるスキル』だ。今ならばまだ問題がないが、いつかは使えるようになっておかなければならないだろう。
「じゃあ矢を買うしかないか」
「そうですね。……攻撃力が上がる少し高級な矢にするか、それとも普通の矢にするか。うーん」
「1stキャラなんだろ? だったら金のかからない矢の方がいいんじゃないのか?」
「そうですねー。じゃあそうしときます」
 そう言ってサヤは買い物かごに矢を入れる。
 ちなみに買い物かごに入れる時にどれだけの数を買うか問われるメッセージが出るので、それに欲しい数を入力してどれだけ買うかを決める。
 サヤは必要な物は全てかごに入れ終わった。一方カズヤは既に会計を済ませサヤを待っている。それに気付いたサヤはレジへかごを持っていく。
「全部で780チルズになるね」
 サヤは780チルズ――チルズは通貨の単位――を支払いアイテムを受け取り、そそくさとカズヤのもとへと向かう。
「遅くなってすみません!」
「いや、いいよ。大して待ってないし」
 待ち合わせの時のサヤの言葉とは逆に、カズヤの言ったことは嘘ではなかった。

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