魔王→勇者
- カテゴリ:自作小説
- 2011/02/04 19:42:06
プロローグ 其の一 ※これは『Children's Fantasy』ではありません。別の話です。
「私の恋人になりなさい」
「断る」
目の前にいる魔王から突然恋人になれと言われた勇者は、当たり前のように断った。
男だと思っていた魔王は、実際のところは絹のように触り心地の良さそうな髪を腰の辺りまで伸ばした可愛いとも美人ともいえる少女であった。
魔王は勇者達に信頼してもらうために、仲間を連れずに一人でここに来ていた。
「ああ! 違う! こんな風に言いたいんじゃない! えっと、その……私の恋人に……なってもらえませんか?」
魔王はとてもいじらしく、それこそ普通の恥かしがり屋な少女のように告白し直した。
「断る」
「おいおい……さすがに問答無用で断るのは酷くないか?」
勇者の隣にいた茶髪の青年――勇者の親友でエリアスと言う。愛称はえっくん――はそう言った。
元々この告白、受け入れてもらえたら人間へ対しての侵略行為をやめるという条件の下にされている。もっとも告白を受け入れてもらう以外にも、今後は魔物を人間と同等の存在として扱うという条件も出されているが。
魔物に対しての今後の扱いは勇者たちが決めることはできないため、王都への使いを出したのだが……もう一つの条件である愛の告白を受け入れる方は最初から全力で拒否されていた。
「酷い? 魔物相手に酷いも何もないだろう」
魔物に侵略された町は食い物を奪われ女は犯され人権など存在しない場所になると思われていた。しかし実際のところ武器は没収されたものの、不足していた食料は魔物側のものが分けられ、壊れた建物を魔物が修理し、喧嘩が始まればその仲裁に入るという。むしろ侵略されてからの方が良い生活になったと言う人々も居るほどだった。
この事の噂は王都まで届き、人々の魔物に対するイメージは少しずつ変わりつつあった。そのため魔物を人間と対等に扱うようにすることは少なからず現実になる可能性があるのだが、勇者がこうでは侵略行為の停止は可能性が低そうである。
「むしろ目の前に魔王が居るんだ。……殺るぞ」
「いやいや。さすがに告白してるんですから殺すのは酷いと思うです。それに同じ女としては魔王に肩入れしたいなー……なんて思ってたり。……ごめんなさい、魔王を倒すためにここにいるのにこんな事言ったらダメですよね……」
そう言うのは金髪の僧侶の少女、アステルだ。これで勇者を悪いと見ているのは二人。そして――
「……私も貴方が酷いと思う」
最後にそう言ったのは銀髪のエルフの少女のリリィである。これで魔王討伐メンバー四人の内、勇者本人を除く三人が勇者が悪いと言った。
そこまで言われると勇者も問答無用で魔王を殺すことができなくなる。何よりも仲間の協力なしに魔王を倒せるとは思えない。
「……分かったよ。ならば聞こう。何故俺を好きになった?」
そう言われ魔王は何かを言おうとして、一度開こうとした口を閉じる。数秒の間をおいて、頬を真っ赤に染めながら、とても恥かしそうにこう言った。





























