Nicotto Town


永遠などない、それこそ永遠


Children's Fantasy ...

第一章 其の八

「ふん! はっ! これでラスト!」
「倒しすぎないでくださいよ~。私に経験値が入らないじゃないですか」
 森に入ってはや数分。二人はタヌキ型モンスターの『ポコポコ』やクマ型モンスターの『クマッチョ』を相手に狩をしていた。『Children's Fantasy』でグループを組んで狩りをした場合、モンスターに対して多くのダメージを与えたプレイヤーに多くの経験値が入るようになっている。ダメージを与えなくともグループ狩りをすることによって得られるボーナス経験値を得られるが、普通にモンスターを倒した時と比べれば効率は劣る。
「経験値が欲しいか? ならばくれてやる!」
 そう言いながらモンスターを何体も倒し続けている。経験値を分ける気などまったくないらしい。
「そう言うならちゃんとサポートしてくださいよ」
 そう言われると同時に、カズヤはモンスターへの攻撃をやめる。
「……悪い、ちょっと調子に乗りすぎた」
 ようやく落ち着いたのか、カズヤは素直に謝った。謝るくらいなら最初からしなければいいのにとサヤは思ったが、馬鹿なカズヤはそれに気づかなかった。
「これからはちゃんとサポートに徹するぞ。ホントだからな!」
「いや、そんな本気で言わなくてもいいですよ……」
 サヤは少し呆れながらそう言った。
 しかしほとんど狩りの妨害をされていたも同然だったので、サポートしてくれるのならそれに越した事はない。
 カズヤはサヤから少し離れた位置でサヤが狙っていないモンスターを倒している。そうかと思えば遠くの場所からモンスターのターゲットを取ってきてサヤに狩らせたり、サヤへ攻撃しようとしているモンスターを一撃で叩き伏せたりと、しっかりとサポートに徹していた。
 まるで、しっかりとした先輩のように。
 まあ、実際に先輩なのだけれども。
「カズヤくん……手伝ってもらっておいてこう言うのもおかしいと思うけど、私のサポートしてて……楽しいですか?」
 体の前に構えていた弓をゆっくりと下ろし、そう言った
 手伝ってもらうことでカズヤの狩りの効率が落ちることを気にしているのだろう。
 カズヤも剣を振るうのをやめる。そして、こう言った。
「なんだ急に? 心配するな、楽しいぞ。誰かと一緒に狩をするのなんて、リオンと会えなくなってからはやってなかったからな。お前がリオンの代わりってわけじゃないけど、お前と一緒にいるのは楽しいぞ。できることなら、いつも一緒にいたいくらいだ」
 カズヤにしては珍しく、満面の笑みを浮かべてそう言った。この笑顔を見ることはそうないだろう。
「そうですか……。そう言ってもらえると嬉しいです」
 カズヤと同じように、サヤも笑顔でそう言った。
 二人の会話はカズヤが告白し、サヤがそれに答えたようにも見えるが、本人達にその様な気はまったくない。色んな意味で似たもの同士の二人だった。




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