Nicotto Town



原発作業員の安全はどうなっているのか2

 「大量被曝の危険性がないのだから、造血幹細胞採取という『負担』を作業員にワザワザ負わせる必要性はない」と言いたいのかもしれない。

 しかし、線量計の管理も杜撰、被曝線量上限値も変更、そして「現場で線量について語るのはタブー」という作業員の証言の存在からは、「大量被曝」はむしろ既に発生しているのではないか、と案じずにはいられない。

 放射性物質には、何の匂いも色も味もない。

 その放射性物質が多量に漂う事故現場で働く作業員たちの、姿も動きも声も叫びも、ほとんどわれわれは目にしない。

 テレビだけを見ていれば、ややもすると「人格」のない「使い捨てロボット」が作
業し続けているのではないか、と錯覚してしまうほどだ。

 国は、はたしてこれら作業員の方々の「顔」や「名前」をすべて把握しているのだ
ろうか?

 国は、はたしてこれら作業員の方々を、本当に守るつもりはあるのだろうか?

 前稿で私は、『「英雄」ではない「被害者」である原発事故作業員に、生涯にわ
たって医療補償を』と書いた。

 しかし、私の考えは甘かった。

 医療補償がなされる以前に、彼らは現在、「人権」すら認められていなかったのだ。

 国は、彼ら作業員の方々を「英雄」などと思ってはいない。それどころか、彼らの
人格や人権が著しく蹂躙されて続けていることを放置し「見て見ぬフリ」をしている
のだ。

 多量の放射性物質を含んだ汚染水を海に放水し続けるだけでなく、このような「人権蹂躙」を放置し続けていれば、日本は先進国として、やがて海外から著しく非難され、次第に孤立していくことになるだろう。

 国民としても、このような「国を守ろうとしている作業員を守ろうとしない国」に
対して、何も声をあげることをしないならば、それはこの国が世界から孤立していく
のに加担する行為に他ならない、と言えるだろう。

 今こそ、作業員の人権を守るための国民的議論の高まりを、強く訴えたい。

 最後に、日本国憲法を供覧する。

 これらひとつひとつを、今、じっくりと噛みしめるときではないだろうか。

日本国憲法

第十一条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。

第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

第十八条 何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。

第二十五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。


木村 知(きむら とも)
有限会社T&Jメディカル・ソリューションズ代表取締役
AFP(日本FP協会認定)
医学博士
1968年カナダ国オタワ生まれ。大学病院で一般消化器外科医として診療しつつクリニカルパスなど医療現場でのクオリティマネージメントにつき研究中、2004年大学側の意向を受け退職。以後、「総合臨床医」として「年中無休クリニック」を中心に地域医療に携わるかたわら、看護師向け書籍の監修など執筆活動を行う。AFP認定者として医療現場でのミクロな視点から医療経済についても研究中。著書に「医者とラーメン屋ー『本当に満足できる病院』の新常識」(文芸社)。

以上




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