Nicotto Town ニコッとタウン

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名前を消した男 10


僕は何故かヒトの居るところに戻りたかった
本能が群れることを要求したのかもしれない
やっとの思いで駐車場に戻った僕は、誰か居ないか辺りを見回した
しかし、さっきまで止めてあった京都ナンバーの車も消えていた
駐車場には僕しか居ない
僕は荷物を駐車場に残し展望台へと走った
津波の様子をみるためだ
展望台についた僕は時計を見た
午後3時10分前
鵜の巣断崖の高さは海面から200m
断崖下の海岸線が黒く見える
潮が引き、海であったところが陸になり海底の岩と砂が姿を現したのだ
沖を見ると一筋の白い線がどこまでもつながって見えた
そしてこちらの方にだんだんと近づいて来る
『あれが津波』
僕はその様子をじっと見ていた
最初真っ直ぐだった線は地形に合わして曲線に変化した
見る見る海水がその量を増し、見えていた海底も海岸も海にのまれていき始めた
断崖に当たった波は向きを変え次の波とぶつかり、またその波が断崖にぶつかるを繰り返しながらその海面の高さを増していく
そして白波をたてた大きな波が海の色を黒く変えながら
断崖に接近し大きな波飛沫と音をたてぶつかった
津波の第一波だ
波が白く水飛沫を上げる
波飛沫の一部は断崖を駆け上がる白い煙になりその後を黒い海水が追って這い登ってくる
『ここまで来る』
僕がそう思うほどその勢いはすごかった
その断崖を這い上がった海水がゆっくりと落ちまた波になる
押し寄せる波とぶつかる波
波が波をつくりだし大きくなった波の一部がまた断崖を這い登る
断崖のどれほどまで水位が上がったのか、黒い海がほんの近くに見えた気がした
連なる断崖のあちこちで見られる波の這い上がりと波飛沫
僕は自然の力の大きさにただ驚愕するだけだった
しかしこの後、僕は津波の本当の破壊力を言葉を失うほど思い知らされることになる
それはまさに地獄絵だった

#日記広場:自作小説

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2011/04/23 23:58
家を押し流すような威力。一溜まりもありませんよね。
白と黒。徐々に主人公に近づく海が、巨大な生き物のようです。



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