Children's Fantasy ...
- カテゴリ:自作小説
- 2011/04/21 22:54:33
第一章 其の十一
「あ、カズヤくん、HPが」
「ああ、そうだったな。回復しとかないと」
サヤに言われ、HPがかなり減っていたことを思い出し回復アイテムを取り出す。もしも言われなければ、HPの回復のし忘れで死んでいたかもしれない。
「いえ、大丈夫です。私が回復魔法を使いますから」
「ああ、そうか。ありがとな」
いえいえ、と返し、サヤは魔法の詠唱を始める。
『Children's Fantasy』の魔法には詠唱が必要だ。
そのため、ソロで狩りをする時は詠唱の短い下級の魔法を使う場合が多い。逆にグループでの狩りの場合は、護衛をしてもらいながら詠唱の長い中級以上の魔法を使って一気に敵を仕留める場合が多い。
魔法使いは詠唱の短い下級魔法を連発するよりは、威力の大きい中級以上の魔法を使ったほうがモンスターに与えるダメージが大きい。そのため魔法使いは基本的にグループ狩りをする。
そして詠唱を早く言い終われば早く魔法が発動する。逆に何度も詠唱の途中で噛んでしまうと発動が遅くなる。
このことから、魔法使いはグループ狩りをする事が多く、早口言葉が得意な人に向いているだろう。
そして魔法使いの弱点。それは――
「はい、これでHPが満タンまで回復しました」
「おう、ありがとな」
「ところでカズヤくん」
「ん? なんだ?」
「詠唱ってちょっと中二病な感じがしますよね」
――そう、詠唱が少しばかり、いや、高レベルの魔法になればなるほど詠唱が中二な感じになってくるのだ。人によっては詠唱をする事自体が不可能だろう。
中二病とは、中学二年生くらいの少年達が、少し難しい言葉を使ってみたり、自分を特別な存在だと思ったり、呪文を考えてみたりすると言うモノだ。周りの人は微笑ましく見守ってあげよう。
そんな事を考えている間は、自身の言動に何の疑問も持たない。しかし、高校生になってからその頃の事を思い出すと恥ずかしさのあまりに身悶えてしまう。そして中学二年生ごろの事は、その人にとって黒歴史になってしまうのだ。
つまりサヤは何が言いたいのかというと、高校生にもなって呪文を詠唱するのは少し恥ずかしいということだ。
魔法使いに向いている人に、中二病の人物、もしくはそういったものをノリノリでやれる人物だと言う事も加えられるだろう。逆にそういった人物でなければ魔法使いは向いていない。
「あー、確かにそうだな」
首を縦に振り、肯定する。カズヤも同じように感じたらしい。
「だから、ちょっと恥ずかしいです」
「まあ、分からなくもないな」
もう一度肯定。
「だからその……詠唱するのに慣れるまで、できるだけダメージを受けないでください!」
「それだと魔法を使う機会が少なくなって詠唱をあんまりしなくなるから慣れないんじゃないか?」
カズヤに言われ、その事に気付く。
「無理に使わなくてもいいぞ? 他の魔法使いやってる連中とは違って、お前は偶然魔法を使えるだけなんだから」
「だけどサポートキャラをやってみたいとは思ってたんですよね……。詠唱さえなければなぁ……」
でもサポートするのは好きだしなぁ……とつぶやく。サヤのように「詠唱さえ無ければ魔法使いをやるのに……」と思う人物は割と多い。
現在の魔法使いは中二病な人か、そういったものが好きな人か、もしくは「詠唱でもなんでもやってやる!」と開き直った人の三種類に分けられるだろう。
「まあ、嫌な事はやらなくていいと思うぞ。ゲームなんだからわざわざ嫌な事はしなくていい。ゲームなんだから楽しめばいいんだよ。……マナーの中で、という条件は付くがな」
「カズヤくん……。そう言ってくれると、助かります。いつか……魔法を使えるようになります」
「そうか。サヤがそうしたいならそうしろ。手伝える事があれば、何でも手伝おう」
「はい、ありがとうございます!」
そう、オンラインゲームの世界は現実でありながらもゲームでもある。現実と同様にマナーを守らなければだめだが、ゲームなのだから楽しくなければ意味がない。
現実とゲームの中間であるMMORPG。マナーさえ守れば、自身が思い描く理想の自分を演じる事も、巨万の富を得る事も、世界最強の戦士になる事も、巨大ギルドのマスターになることも、何をしようとも自由だ。
だからカズヤは、一人の友を探す旅人になる。サヤが何をしているかは、まだ分からない。
この世界に、偽りなど一つもない。全てが本物だ。
そこで得た富も、そこで得た力も、そこで得た絆も、全て本物。
だからカズヤは、そこで得た絆を大切にする。友達を作る事が苦手だから、より一層。
これを書いたきっかけが「天然な可愛いキャラを書いてみたい」と思ったからなので、サヤがかわいいと言ってもらえて嬉しいですw
面白かったです♪
というか、サヤちゃんかわいいw