月の雫のティールーム ~ニコとお茶会~ 2
- カテゴリ:自作小説
- 2011/04/22 21:34:16
しゃららん。しゃららん。
月明かりの雫は、今日も透き通った良い音色。
桜のミツを垂らした紅茶は、ふくよかな中に微かに甘い春の香り。
このミツが手に入るのも、あともうちょっとの間だけ。
そう思うと、使ってしまうのが惜しいような。
だけどやっぱり、今このキセツだからこそおいしいような。
アイル、ミツボトルをたくさん持ってるよね。
ときどき分けてもらえないかしら、なんて。
わたしがアイルとお話できたら、頼んでみたらいいのかもしれないんだけど。
あ。
こんばんは。
なんて、これもまた、届いているのかはわからない声だけど。
もし、誰かに届いていたら。
こんばんは。
わたしは、ニコ。
ホントウは、おしゃべりするのはときどきだけって、思っていたんだけど。
今日またこうして話してるのは、『今だけ』のことがあるから。
もうすぐ、ね。新しい家具が出るんだって。アイルがうきうきしていたから。
新しい部屋は、楽しみ。
だけど、今の部屋が見られなくなっちゃうから。
だから、今のうちに。
今の部屋のこと。
『カフェ・ブロッサム』。
今の部屋を、アイルはそう名付けてる。
桜の樹をモチーフにした壁と、コート掛け。
大きな木から切り出した、まるいテーブル。
そんな家具に合わせて、アイルはケーキのショーケースやランプもピンク色のをえらんできた。
クリックするとカプセルがとびだす『ガチャガチャ』が、たのしくってお気に入り。
それから、アイルのコダワリは。
厨房が覗き見える窓と、そこに紛れ込ませた『タイムカード』のキカイ。
こうやって、こっそり何かを忍ばせるの。アイルは好きみたい。
イタズラ好きなんだね、アイル。
たのしい。
でも、わたしがもっと好きなのは。
この部屋には、前の部屋から『続いてる』おはなしがあること。
『Brandnew days』。
そういう名前の部屋だった。
(今は、見られないから。アルバムの、「桜尽くし」っていうのを見てみて。)
おおきな、桜の鉢植えがあって。
そのうしろに、隠れるみたいに、鏡があって。
帽子が、かけてあるでしょう?
その、帽子。
ね、今、『カフェ・ブロッサム』の。
コート掛けに、かかってる帽子。
男のヒトと、女のヒトが。新しい部屋で、新しい生活を、一緒に始めて。
引越しの荷物も片付いて、久しぶりにゆっくりできるお休み。
新しいまちを歩いてみよう、ってふたりで出てきて。
そうして、この部屋に――このカフェに、入ってきたの。
そういう、『おはなし』。
ふたりが座るのは、どのテーブルかな。
まちをあちこち歩き回って、おなかを空かせてきたのだったら、お昼ごはんかしら。
それとも、お昼はおうちでふたりで食べて。
偶然見つけたカフェに、素敵ねって入ってきたのだったら、甘いものを頼んだあのテーブルかしら。
――ね。
こうして、いろんなことを想像するのが、わたしは好き。
この部屋に、その向こうに、いろんなヒトがいる、暮らしがある、って考えてみるのが、好き。
もうすぐ、この部屋は新しい部屋と入れ替わってしまう。
お庭も、今は満開の桜が、別のお花を植えるために見られなくなる。
さみしい。
けど、たのしみ。
新しい部屋は、どんなかな。
桜の次のキセツは、どんなお庭かな。
わたしはニコ。
見えなくても、話せなくても、ここに居て一緒に暮らしてる。
巡りゆくキセツを惜しみながら、巡り来るキセツを心待ちにしてる。
アナタ達と一緒に、このまちを探検してる。
わたしは、ニコ。
* * * * *
新家具リリースのお知らせが出たので、慌ててニコに再登場願いました。
新しい家具は「コンビニ」だとか。お店シリーズが続くなぁ、と、捻りたいひねくれ者としては悩みつつw
どんなお部屋に出来るかな、と、私もやっぱり、楽しみなのです。




























