Nicotto Town



被曝に関する考察2

つづき

 呼吸に伴う内部被曝を防ぐためには、放射能防護マスクや防塵マスクが必要となり
ます。現在、半径20キロ圏内の避難区域で作業する警察や消防関係者の皆さんは、
DS2,3区分などのN95やN99規格に匹敵する防塵マスクを使用しているようですが、テ
レビの放映を見ていると隙間が開いた状態で使用している人々も多く、内部被曝を適
切に防ぐことが出来ていないのではと危惧します。放射性物質による被曝を防ぐ目的
でマスクを使用する場合、マスクの漏れ率が問 題となります。たとえN95クラスのマ
スクを使用しても、マスクの漏れ率は約50%前後にも及ぶという報告もあります。し
たがって、放射性物質を吸入しないためにはマスクを正しく使用することが必須です
し、高濃度に放射能汚染された地域では原発敷地内で作業員が行っているようにテー
プ等でマスク周囲を密封することも必要でしょう。新型インフルエンザが流行した時
には、実際にテープでマスク周囲を密閉するN99マスクも市販されましたから、放射
能汚染の場合でも爆発後の風下など本当に危険性が高い環境では実践すべきだと思い
ます。手袋の着用や肌を露出させない服装などの基本的な被曝対策は言うまでもあり
ません。

 原子力安全保安院も被曝対策としてマスクの着用を勧めてはいますが、前述のよう
なマスクの選択や着脱について具体的な使用方法を説明していません。このため、屋
内退避地域でマスクを使用する場合でも一般的な花粉症用マスクを勧める人々もいま
す。しかし、スギ花粉の大きさは30~40μmで、花粉症用のマスクにはN95マスクに匹
敵するようなフィルター機能がありませんから、十分に説明することなく、ただ単に
マスクの使用を勧めるべきではありません。また、マスクを使うと周辺の塵を集塵し
ますから、高濃度の放射能汚染がある地域では一定時間使用したマスクは使い捨てと
し、適切に廃棄する必要があります。長期間使用したり、使用したマスクを触った後
で手洗いを怠ったりすれば、かえって内部被曝を誘発する危険があります。

 いま、主に放射性ヨードやセシウムの計測結果だけが公表されていますが、空間や
食物や土壌に放射性ヨードやセシウムが存在するということは、その他にも観測され
ていない様々な放射性核種が存在していることを意味します。現在のように福島原発
からの放射性物質の拡散が少ない状況が続けば問題ありませんが、今後、3号機が爆
発し4号機で火災が起きた時のような状況が繰り返された場合、セシウムばかりでは
なくストロンチウムなどの様々な放射性核種による内部被曝が増加する危険性が高ま
ります。3月14日から16日にかけて北西30~40キロの広範囲に拡がった放射能汚染が
再発する危険性は今後とも実在するわけですから、内部被曝による被曝者の増加を最
小限に抑えるために、正しい防塵・被曝防護対策を啓蒙して頂きますようお願い致し
ます。

共立耳鼻咽喉科院長 山野辺滋晴




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