Nicotto Town


暇人の暇人による暇人のためのブログ


パンドラの鍵 1章〔前編〕


『選ばれし者』


このフレーズを聞くたび、俺は勇者を思い浮かべる。

伝説の剣を振りかざし、仲間と共に魔王へと戦いを挑む。

人類の存亡を賭けた、戦い。

正直、憧れる。

男のロマンって奴だ。

だけど、思ってもみなかった。

まさか、自分がそんな『選ばれし者』なんてのに選ばれ、あんな戦いに巻き込まれるなんて-














5月、中旬。


徐々に気温が上がり、夏の到来を感じさせる、そんなよく晴れた日曜の昼下がり。
ここは市内の中でも活気づいている商店街。
その一角に存在する、場違いな骨董店に、二人の少年が居た。
一人は中肉中背、黒髪のどこにでもいそうな顔立ちの少年、もう一人は髪を金色に染めた、黒髪の少年より少し背の高い、顔立ちの整っている少年少年だった。


黒髪「おい、まだかよ」
金髪「まあ、待てって。お、なあ、この壷結構よさげじゃね?」
黒髪「俺が知るかよ・・・。てか、そのナリで趣味が骨董品収集ってどうよ。まあ、普通の高校生の趣味でもねえけど」
金髪「うるせ」


この黒髪の少年は日向真。
市立宝来高校に通う一年生だ。
成績は中のちょい下、運動神経は結構ズバ抜けていたりするが、彼女はナシ。
極めて普通の高校生だ。
そして金髪の少年は東幸久。
日向の幼馴染で、同じ高校に通っている。
見た目どおり頭はよくないが、小学生の頃から無遅刻無欠席の真人間だったりする。


東「まあ、確かに来るなら来るで女の子と来たかったけどな」
日向「いや、デートでこの場所選ぶってどうよ。100%引かれんぞ」
??「うっさいよ!そんなこと言うんならさっさと帰んな!」


その声と共に、店の奥から70歳くらいの老婆が現れる。
この老婆の名は、崎村千代。
『崎村骨董店』の店主であり、この商店街の元締めである・・・通称ボスだ。


東「ホラ、出てけだってよ」
ボス「何言ってんだい。アンタもだよ」
東「そ、そんなボス!殺生な・・・」
ボス「誰がボスだい!アンタさっきから一時間もここに居るじゃないかい。いい加減迷惑だよ。帰った帰った」
日向「・・・・・どうせ客なんて来なアイタ!」
ボス「聞こえてんよ、真!ったく・・・ホラ、上がんな。どうせ暇なんだろ。茶ぐらいなら出してやるよ」


なんだかんだで世話焼きなボスなのだ。

そして、家に上がらせてもらった二人は、ボスと世間話に花を咲かせた。


日向「そういえば弥生は?」
ボス「まだ寝てるよ」
東「は?もう1時になるぜ?」
ボス「昨日、部活で6時に帰ったかと思ったら、飯食ってそのまま走りに行ってね。10時頃戻ってきて、風呂入ったら勉強さ。んで、夜中はゲームやったりテレビ見てたりしてたんだと。それで、やっと7時に寝たよ」
日向「・・・・相変わらずすごいな」
東「ど、どんだけ化物なんだよ、あの猪」
弥生「んー?誰が猪だってー?言ってごらん?」
東「・・・コレハヤヨイサン、コンニチハ。イヤ、オハヨウカナ?HAHAHA・・・ア、ボクハヨウジヲオモイダシタカラコレデ、ジャ」
弥生「待てやコラ」


弥生のボディブローからジャーマンスープレックスの見事なコンボを見ながら、ボスが日向に話しかける。


ボス「・・・弥生は、学校でうまくやれてるかい?確か同じクラスだろ」
日向「え?ええ。俺が見てる限りは。友達も多いみたいですし」
ボス「そうかい」


ボスが優しげに微笑む。


ボス「・・・あんな性格だからね。男の一人でも出来れば少しは落ち着くんだろうけどね」


ボスが日向をチラりと見るが、日向はそれに気付いた様子もなく


日向「あ、それだったらあいつ、引く手数多ですよ。まあ、全部フってますけどね」
ボス「・・・そうかい」


ボスは深いため息をつく。
そして、「あの子を任せられんのがアンタを置いて誰が居るってんだい」と憎々しげに呟くが、残念ながらそれが日向の耳に届くことはなかった。
すると、東にチョークスリーパーをかけていた弥生が日向に向かい


弥生「あ、真。居たんだ」
日向「最初からな!地味で悪かったなこんちくしょう」
弥生「はは、嘘だよ。てか、アンタ等も暇ねぇ。日曜にこんなとこしか行くとこないなんて」
ボス「こんなとことはなんだい」
日向「しょうがねえだろ、暇なんだ」
ボス「それは暇だからしょうがなくここに来たという事かい?」
弥生「にゃはは、彼女の一人でも作ればいいのに」
日向「アホ、そう簡単にできたら苦労しねえっての」
ボス「・・・無視してんじゃないよ!」


二人に拳骨を食らわせながら、未だチョ-クスリーパーが極まっている東は、「(あ、これマジヤバい)」とか思いながら意識が飛びそうになっていた。

そんなこんなで、ようやく4人は落ち着き、卓袱台の周りに座り歓談を始める。


弥生「あ、そういや祖母ちゃん。真になんか渡す物あったんじゃないの?」
ボス「ん、そうだったそうだった」


ボスは二階に上がって行き、数分後、直径30cmほどの木箱を抱え戻ってきた。


日向「・・・これは?」
ボス「さあね。アンタの宛名なんだけど、何故か家に届いたんただよ」


〔中編に続く〕
 

#日記広場:自作小説

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2011/04/26 19:15
皆さん、コメントありがとうございますorz

ホント、めっちゃ嬉しいです^
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2011/04/25 20:55
wwwなんか情景が目に浮かびそうな
動きのある小説ですねー^^

選ばれし者の、書き出しがいいですね。
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2011/04/25 20:50
面白い!
中編も観ました。
次がラストか!?
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2011/04/25 19:26
おお。
すごいw
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2011/04/25 01:35
ありがとうございますorz

とても嬉しいです!
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2011/04/24 23:16
本格的に次回が楽しみですw
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2011/04/24 23:11
おもしろいwww行区切りがうまいですねw



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