名前を消した男 16
- カテゴリ:自作小説
- 2011/04/25 21:19:28
僕は気がつけば車のフロントガラスに顔を近づけ、中の人の頭の近くのガラスを必死で手袋をした平手でたたいていた
「大丈夫ですか」
何度も僕は呼びかけた
けれど車の中の二人に反応はなかった
「死んでる。もうだめだ」
僕はそうひとり呟いた
『このままほっておこう。かかわらないほうがいいかも』
そう思って立ち上がり、改めて車の型と色を見てびっくりしてしまった
「まさか。あの駐車場に止まっていた車」
僕は思わず声をだしてしまった
すぐにナンバーを確認するために車の前に回ったけれど、すっぽりと間に挟まった車は前のナンバープレイトが橋脚に当たっていて見えない
後ろはバンパーの幅だけ隙間があるのでなんとか見えた
『京都ナンバーの車だ。あの車に違いない』
そう思った僕は、誰の車か急に知りたくなった
『そうだ車のフロントガラスを割って中に入ろう』
僕はすぐにそう考え、近くに落ちている大きな石を捜し拾ってフロントガラスにそれを投げつけた
ガラスは鈍い音を立て、くもの巣状にひびを走らせた
僕が足でそこを蹴るとガラスはすぐに粉々の破片になって割れてゆく
車に入った僕は、まず二人の呼吸を調べた
どちらも目をつむったまま呼吸は止まっていた
二人とも男性のようだ
『やっぱり死んでる』
事故や災害で死んだ人の死体を見るのは初めてだった
僕は何か恐怖を感じていた
今、ちょとでもこの二人が動いたら僕は腰を抜かしてしまうだろう
急いで一人の男性の背広の内ポケットの辺を外から触ってみた
手帳らしき形をした物と胸に何か堅いもを付けているのがわかった
背広の内側に手を入れ手探りでそれに触ってみた
『えぇ、拳銃』
僕はただびっくりしてしまった
その時だ
車の下のほうから水がうっすら入ってきた
『また津波が来た』
そう思った僕は急いで拳銃と手帳を抜き取り、車から出て橋台横の藪の斜面を必死で登った
水かさがどんどん増してゆく
僕は死に物狂いで登って三陸鉄道の線路上にやっとでた
下を音も無く水が上っていく
やがて木々をざわめかしながら波が上ってきた
僕は片手に拳銃を握りながらその様子を呆然と見ていた

























手帳を見れば、僕が知りたかった事も書かれているのでしょうか。
重要アイテムGETです ^^