パンドラの鍵 2章〔前編〕
- カテゴリ:自作小説
- 2011/05/05 17:54:32
5月16日(月)18:15
日向は、昨日爆発のあった双葉銀行前に来ていた。
6番鍵の『ホルダー』の手掛かりを探すためだ。
日向「(それにしても・・・まさか弥生も『ホルダー』だったとはな・・・)」
今朝の出来事。
日向は、弥生に屋上へと呼び出され、昨日、日向がボスからもらった鍵と同じ物を受け取ったと告げられる。
日向「んなっ!?・・・マジで?」
弥生「うん・・・マジで」
弥生は制服のポケットから日向の持っている鍵と同じ型をした鍵を取り出す。
柄の部分には小さく『8』と彫られている。
弥生「それでさ・・・同封されてたSDの中見てみたら・・・」
弥生が昨日経験した出来事は、真のそれとほとんど同じものだった。
弥生「その男の人は、フールって言ってたんだけど・・・真に電話してきた人もその人?」
日向「・・・ああ、多分な」
弥生「これって・・・イタズラとかじゃないんだよね?事件のこと。あんなに詳しかったし。・・・・じゃあ、鍵を奪われたらホントに死んじゃうの・・・?」
日向は、弥生の肩が小刻みに震えていることに気付いた。
日向「お、落ち着け。まだそうと決まったわけじゃない」
弥生「でもっ」
日向「・・・仮に本当の事だったとしても、俺が絶対に守ってやる。・・・だから心配すんな」
こうやって強がってはいるが、実を言うと、日向も昨日から怖くて仕方なかった。
9人もの人間が、自分を殺そうとしているのかもしれないのだ。
だが、目の前の幼馴染も、こうやって震えている。
ただそれだけで、日向は立ち上がることが出来る。
勇気を振り絞ることができる。
日向「・・・とりあえず、今日の放課後に双葉銀行に行ってみるつもりだ。何か証拠が残ってるかもしれないしな」
弥生「そう、私も行くよ」
日向「お前は部活あんだろ?真面目なお前がいきなり休んだら怪しまれる。うちの学校に10人しかいない『ホルダー』が2人もいんだぞ?学校内だけでももっと居ると踏んでもおかしくねえだろ」
弥生「・・・分かったよ」
そして、現在に戻る。
日向は目前の双葉銀行を見た。
中へはさすがに立ち入り禁止になっており、外から見ても爆発の規模が伺えるほどボロボロになっていた。
日向は外から見た銀行などを携帯で撮影したり、裏へ回って調べてみたが、犯人に通ずる痕跡は見たからなかった。
日向「もう7時か・・・今日はこのくらいにしとくかね」
こうして、日向は帰宅の路に着いた。
が、この時彼は気付いていなかった。
既に『ホルダー』との戦いは始まっていたのだ。
帰宅後、日向は弥生に電話をかえ、収穫がなかったことを報告する。
弥生「そっか・・・残念だったね」
日向「ああ。これで早くも手詰まりってわけだ」
弥生「うん・・・ねえ、幸久にはこの事言わないの?」
日向「・・・言えるわけねえだろ。あいつまで巻き込むわけにはいかない」
弥生「・・・でも」
その時、日向の電話にキャッチホンが入る。
日向「・・・悪い、ちょっとキャッチ入った。また明日な」
弥生「うん・・・またね、じゃ」
弥生との電話を切り、携帯のディスプレイを確認すると、非通知と表示されていた。
また幸久のイタズラかと思いながら、日向は通話ボタンを押す。
日向「・・・もしもし?」
??「んん?お前が日向真かな?」
電話の相手は男のようで、日向はすぐに警戒する。
何故自分の名前、そして電話番号を知っているのか。
日向「・・・アンタ誰だ?」
??「その様子だと正解みたいだな、ひゃははww」
日向「・・・・・・・」
日向は露骨に不快感を示す。
??「んん、怒っちゃった?ざまあw」
日向「・・・イタズラなら切るぞ」
??「うるさい黙れ。今は僕が喋ってんだ」
日向は電話を切った。
どうやって携帯の番号を知ったのかは気になるが、イタズラ電話に付き合っている暇はない。
すると、すぐにもう一度非通知で電話がかかってくる。
日向は面倒そうに電話に出る。
日向「・・・もしもし?」
??「オイ!なに勝手に切ってやがんだ、ぶっ殺すぞ!」
予想通りにさっきの男で、日向は心底ウンザリした。
日向「・・・いい加減にしないと警察呼ぶぞ?」
??「黙れっつってんだろ!・・・ああ、それともこう言えばいいのか?」
??「3番鍵の『ホルダー』さんよぉ!」
日向「なっ!?」
??「お、ビビった?超ウケるww」
日向「・・・お前、誰だ!」
??「教えてやんねーよバカ。一生考えてろ」
このままでは電話の相手に主導権を握られてしまう。
日向は考える。
この状況を逆転できる方法を。
そして、一か八か。
相手にカマをかけることにした。
失敗すれば、相手の情報をろくに握れず、アドバンテージを取られた状況から、これから始まるであろう『話し合い』に望むことになる。
日向は大きく息を吸い、緊張の気を悟られないよう電話に応じた。
〔中編〕に続く
ぐっときたw。