夢をね、見たんですよ・・・あぁ、今朝の話なんですけど。

スイカが食べたくて食べたくて仕方なかったんです。
でも、季節は真冬で、どこを探しても手に入らないんです。

天気予報では「今年一番の寒さだ！」って、手袋とマフラーした雪だるまが踊ってたりするんです。
雪も降り出して、どこかで事故でもあったのか、道路は渋滞する車で埋め尽くされてます。
フワフワと舞う雪、動かない車の列、止まったような時間の中で、私だけが走っているんです。

見えてきた公園で、クリスマスだかバレンタインだか、イルミネーションの明かりが見えます。
何組もの男女が寄り添い、愛を語らう姿を横目に見て、私はなお走ります。

夢中で探すも見つからず、諦めが見えたとき、私は寒さに気付きます。
次第に体の力が抜けて行き、たまらずその場に座り込みます。

近くに、人が寝ています。
疲れてウトウトしているだけなのか、帰る家がないのか・・・もしかしたら後者かもしれません。
くたびれた身なり・・・いろんなものをくくりつけた自転車・・・
・・・これから登山に行くかのような大きなザックも、汚れ放題で穴も開いています。
そんな彼が持っている不自然なギター、そして僅かな小銭が入れられた帽子・・・。
彼は旅人かなにかで、ここで歌って路銀でも稼ごうってことかも知れません。

疲れ果てた私は、終焉を受け入れていたのでしょうか。
彼の帽子に、ポケットから出した財布をそのまま入れ、ギターを借りて爪弾き始めます。

　　君に逢いたくて　重い瞼を下ろす
　　僕は安らかな眠りに包まれる

　　夢の中で君の優しい横顔を
　　朝方の白い月が　やんわりと照らす

　　唇のカサつきさえも聞こえそうな静寂
　　明かりはなく　窓に雪が積もる　小さな世界

そうして夢の中の私は意識を失ってゆき、そこで夢は終わりました。
朝になって目が覚め、気が付くとこの部屋にいました。
目の周りには少し泣いた跡がありました。

なんでしょう・・・スイカ一つで随分と・・・アレな感じになっちゃいましたね。
夢の話ですからね？
あくまで夢の話ですよ？私、楽器なんか弾けないし。
それに実際は、今じゃ大体いつでも食べようと思ったものを食べられる時代なんですけどね。
そんな時代、少し面白みに欠けるような気もしますが・・・
今日のところはそれに感謝してスイカを買いに行くことにしようかな、なんて思ってたりします。

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