無名沼での出来事 7
- カテゴリ:自作小説
- 2011/06/12 18:27:40
猫死天狗(ねこじにてんぐ)は遺体の横にそっと立ちました
河童のキュウリッパは虫妖怪のフンスイバエの動きをじっと見ていて、そちらに気を取られて猫死天狗に気が付きません
フンスイバエはせっせと鼻の穴からハエの卵を鼻の奥に押し込んでいました
しばらくの間、二人はまだ猫死天狗が側に立っている事に気が付きませんでした
「君達は何をしてるのかね?」
猫死天狗が声をかけました
キュウリッパは突然の声に驚き、猫死天狗を見上げました
「びっくりしました。あなたは猫死天狗さま」
キュリッパは驚いた様子で目を丸くしながらそう言いました
「そう、私は猫死天狗だ。それで君は何をしてるのかね?」
「僕は別に何もしてないけど。フンスイバエが人間の死体に卵を運んでいるのを見ていました」
「ハエが卵を死体に産みつけるのは自然界では当たり前だが、その死体をどうするかが問題だ」
「どうするって、どうしようもないです」
「死体は放っておくわけにはいかないのだ。人間の世界では、人間には霊魂があり死後それが彷徨うとされている。だから遺体は手厚く葬らなければならないのだ」
「人間は死んだら霊魂になるのですか?」
「そのように昔から生きてる者の間では言われていて、それは一つの物の思い方にしかすぎないのだ。なると思えば成るし、ならないと思えば成らない」
「でも、この死体の持主は幽霊になって一度現れました。それにこの死体からなんか快感を感じてたみたいです」
「ええ、もう現れてしまったのか。それは困った事で、この沼の地縛霊になる危険があるな。この沼にとどまるかもしれない」
猫死天狗は霊魂が地縛霊になり、この沼にとどまる事を恐れていました
「今、霊魂など存在しないと皆で思えば大丈夫なのではないですか」
キュウリッパはそう考えました
「それは霊魂が現れる前の話だから、霊が現れてからそう考えても遅いのだ。一旦スイッチが霊魂存在に入った以上、それを変える事はもうできない。地縛霊はその地にとどまりいろいろな災いをもたらすから厄介なのだ」
「困りましたね」
キュウリッパは自分はぜんぜん困っていないけれど、猫死天狗が困った様子なので話しを合わせました
しばらくの沈黙の後、猫死天狗が思いついたように突然言いました
「そうだ。虫の知らせを使ってみるか」
キュリッパは虫と聞いて卵を押し込んでるフンスイバエを思わず見てしまいました
そして猫死天狗に聞きました
「このフンスイバエ君を使うのですか?」
「いや違うよ。ワシが人間の第六感に訴えてこの遺体の持主がこの沼で死んでいることを告げるのだ」
猫死天狗が答えました
そして何やら呪文を唱え始めました

























水死体を検索して死体の変化を知りました
死んだら肉体はまず細胞レベルで自己融解を始めます
そして格臓器レベルでガスを発しながら腐ってワックス(死蝋)になり
やがて骨だけに
発生するガスは死臭ですがとても臭く強烈な臭いだそうです
肉体はそのヒトの象徴であり存在の証
それが腐ったのでは意味が無くなりもうお仕舞いです
その人を知る人がいれば象徴として残して置きたいのが人情ですね
いつか生前の柔らかさと暖かさをそのまま残した腐らない生きた死体ができるかも
すでに人生に消極的になってる人や脳死の人はそう言えるのかもしれません
心の死も怖いです
実は、キュリッパは天然ですか?