無名沼での出来事 8
- カテゴリ:自作小説
- 2011/06/14 12:53:55
猫死天狗(ねこじにてんぐ)は何やら訳の分からぬ言葉を吐いて呪文を唱えていました
「えい、やー、とー」
と、気合を入れた呪文で最後を締めくくり、空気を縦横に手で切る真似をしそして両手を合わし合掌しました
キュリッパは、ただそれを横でポカンと見ていました
「これで虫の知らせは届くはずだ」と、猫死天狗は簡単に言いました
「誰に届くのですか?」と、すぐにキュリッパが聞き返しました
「それはだな」
猫死天狗はキュリッパの質問に言葉を詰まらせて、少し考え込んでしまいました
「まあ、誰でもいいじゃないか。この遺体を人間が見つければ、人間が後の処理はするから」と、言葉を続けました
「人間の臭いがします」
キュリッパが人間の臭いを嗅ぎ付け、突然そう言いました
「おう、もうおいでなさったか。効果効き目が早くて抜群だな」
猫死天狗が少し自慢したように誇らしげにそう言いました
「早いですね」
キュリッパは人間の臭いのする方向を見ながらそう答えましたが、実は猫死天狗が呪文を唱えて入る時からキュリッパはその臭いにもう気付いたのでした
「皆さんこんにちは」
そこに現れたのは、全身黒ずくめの西洋のお坊さんのような格好をした、人間のようで人間で無い半人間の生き物でした
「こんにちは」
キュウリッパがまず最初に挨拶をしました
「死体の臭いがしたので、その臭いを追ってここまで来ました。そこにあるのは、若い女性の全裸死体ですね。何か事件に巻き込まれたのかな」
その黒ずくめの人間が言いました
そして死体に近寄り、二人と一匹を無視した感じでその様子を観察し始めました
「あなたは誰ですか?」と、キュリッパが聞くと
「私ですか。これは失礼。まだ自己紹介をしてませんでしたね」と、ペコリと頭を下げ名刺をポケットから取り出してキュリッパに「こういう者です」と手渡しまた
「人間剥製会社。社長。エンバーミング」
と、キュリッパが渡された名刺を読み上げました
「へぇ、こんな会社があるのですね。人間を剥製にするのですか」
猫死天狗がキュリッパの持っている名刺を覗き込み、そのように感心した不思議そうな様子で言いました
黒ずくめの自称会社社長エンバーミングが会社の説明を始めました
「当社でははおっしゃる通り、人間の剥製を作っております。しかし当社の剥製はそんぢょそこらの剥製とは訳が違います。ただ動かないだけで、生きた人間そのものなのです。当社の開発した方法を使うと皮膚の触り心地が柔らかく潤い滑らかで、まるで生きた人間に触る感覚をそのまま再現しているのです。触り心地を重視した剥製なのです」
「へぇ~すごい」
キュリッパと猫死天狗は声を合わせて感心しました
「タイプは三種類御用意しております。ひとつは崇拝用で生前に偉業を成し遂げた人間の為にご用意します。二つ目は一般用で仏壇に置いて供養する為のものです。全身でなく胸像にしたものが良く出ます。そして三つ目は性器をいつまでも使えるようにしたものです。男性の場合は男根を立てたままのやつ。女性の場合は挿入できるよう膣を残したものです」
エンバーミングの説明はキュリッパと猫死天狗には理解できない内容でした
「死体でそんなもの作っていいのですか?」
キュリッパが質問しました
「人間剥製を理解するには今までの死体の概念を変えないと難しいですね」
エンバーミングはそう答えました
























