ジョーカーの冬から夏の国より~その9(END)
- カテゴリ:自作小説
- 2011/06/24 01:14:24
ナイトメアは食卓で左目を丸くした。
「……何だ、コレは?」
「そうめんです」
さらっとグレイは言ってのけるが、同席するアリスも、ユリウスも、同意できない。
ボリスとピアスに貰ったそうめんつゆは、グレイの独創的かつ大胆なアレンジが施され、珍味として生まれ変わっていた。
黒か黄色だったつゆが、緑色の液体に変わっている。これに真っ白な麺を浸けるのは、もはや罪悪ですらある。
ユリウスが慎重につゆのにおいを嗅いだ。
「刺激臭は……ないが、一体何をどう入れたら、この色が出せるんだ? トカゲ。真冬にそうめん以前の問題だぞ」
「色はいまひとつかもしれんが、味と栄養には自信がある」
ナイトメアの険しい目が、グレイの真顔を直視した。
「いまひとつ? いまひとつと言ったのか? 今」
「ええ。とにかく食べてみてください」
その目が、今度はアリスを咎めるように促す。視線の意味は大体わかった。
食べてみろ、という命令か指示、もしくは懇願だ。
(わかったわよ、食べるから、そんなふうに睨まないで)
誰かが試食しないことには進まない。腹を括ってアリスは、慣れない箸で、白い麺を小さく摘んだ。その半分ほどを正体不明のつゆに浸してから、いよいよ口へと運ぶ。
そして、恐る恐る味の正体を噛み締める。
「ン……。えぇと、その、ど、どう表現すればいいのかしら」
お世辞にも美味しくはなかったが、破滅的に不味くもなかった。
次にユリウスが、アリスよりも多くの麺を取り、一度に啜る。
「……そうめんの味でないことは確かだ」
「そうめんだ」
グレイの訂正に説得力なし。
ナイトメアが涙目で後悔を語る。
「今にして思えば、お前に料理を任せた私が愚かだった……。未だに私は、お前という男を見誤っていたようだな……」
「麺が伸びてしまいますよ、ナイトメア様。そうめんを食べたら、溜まっている仕事を片付けてくださいね」
「この寒いのにそうめんなんぞ食えるか! 常識で考えろ、常識で!」
本末転倒かつ支離滅裂なナイトメアが喚く傍で、アリスとユリウスはなお試食中。
「なんというか、ふむ。食べているうちに……妙に味が増してこないか?」
「それだわ! まず……とは言い切れない何かがあるのよ。うん」
冬のクローバーの塔ではしばらく健康食品「そうめん」が流行った。
おしまい☆

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- LeE~リィ~
- 2011/06/25 00:08
- メガ花もご覧くださいませ~(@^▽^@)
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- 一方通行
- 2011/06/24 18:44
- 訪問感謝です^^
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