Nicotto Town


濃すぎる毒入り日記


晴れ、ときどき・・・

(今回は小説風に始まりますが、例によってグダグダなので、面倒な方は、下の方から読んで下さい。

昭和54年 5月
 梅雨にはまだ早い雨のあがった五月晴れの空の青さを映していた水たまりは、空そのものを見上げる子供達の長靴にピチャンと消えた。まだランドセルの方が背中より大きいような子供達は、既に用のない傘を振りまわしながら、ガヤガヤと帰宅を急いでいた。
 「は~れ、ドキドキ ルビー」もう何年か成長すれば、そんな意味をなさない歌詞があるはずもないことが分かるのだが、ようやくビリの学年を卒業したばかりの彼らは、テレビCMでやたらと流れる、その歌を呪文のように、しかし大声で叫んでいた。
 「は~れ、ドキドキ、ルビー♪えいっ!」用のない傘は彼らにとっては、剣代わりでしかない、ランドセルを使わなくなる頃の彼らが本当にドキドキしてチラ見することになる「にっかつロマンポルノ」のポスターの隣に貼られた、まだ少女の面影を残す美女のポスターに傘を突き立て、それが誰かも知らぬまま、走り抜けて行った。
 「晴れ、ときどき●人」と、彼らには「ときどき」しか読めぬ映画の主人公である少女は、頬に穴を開けてもなお美しかった。

平成4年 6月
 ザーッ・・・それが案外と激しい雨音だと気付いても、彼は、そこがどこで、何故そこにいるのかを思い出せないでいた。誰かの声がする。暗い部屋にボンヤリとした光とともに聞こえる声は、その意味が掴めないものだった。
 「起きたの?」その声は、ブラウン管とは別の方向から聴こえた。この声・・・ようやくに彼は自分のいる場所とそこにいる理由に気付いた。だから・・・布団の中の足をばたつかせて、その辺にあるであろう「何か着るもの」を探さなきゃという、とりあえずすべきことにも気付いた。
 何度か会う中で映画談議の好きな 声の主の家に初めている自分。だんだんと慣れてきた目に、食べ残しの宅配ピザと転がったワイン瓶が映り、いまだに何なのか分からぬブラウン管のドラマよりは明らかに、昨夜からここまでの自分のストーリーが思い出された。
 「ごめん・・・」とりあえず呟く台詞、それって何にごめんさい?
 「寝ちゃったねぇ。飲むと寝るんだって自分で言ってたけど、何しても寝るんだね」
 「何したんですか?」とは聞けないので、黙っている彼に、彼女はコーヒーを差し出した。「何か飲みたくなったんで、ごめん」と、同じく何にごめんなさい?だ。
 いまだケータイとは呼ばれぬ頃の携帯電話と、Googleもwikiもない平成4年には、途中から見始めたテレビの深夜映画が何であるかを知るには、彼女に尋ねるか、彼女の取っているであろう新聞のテレビ欄を見るしかなかった(こういう彼女も新聞を取っていた時代だ)
 「なんだろうね、これ。なんかサスペンスっぽいんだけど、へんにチャラケてるし」コーヒーをグーッと飲んでから、彼女が教えてくれた。その通りの映画だが、大団円とはいえないようなドタバタながら、もうラストに近い感じだった。
 ポツポツと彼女と会話にもならぬ言葉を交わす中で、その映画は終わっていた。昭和の映画らしいエンディングソングが、おそらくは主演女優と同じ声で聞こえてきた。なんとものどかなメロディーラインから、高揚感のあるイントロでサビへと向かう「は~れ、ときどき、きるみ」きるみ?と思う間もなく、主演女優とは違う、メゾソプラノのそれでいてチュッパチャプスのようなベタっとした甘さのある歌声が、それも間近で聞こえてきた。
「は~れ、ときどき、キルミィ」あ、kill meって、え、キミ犯人じゃないよね?なんて思う彼に、更に歌声が重なる「あなたとならしんでもいいの」「どうせならば 優しくしてねぇ」何すんだよー 彼にとって、久しく思い出すことのないエピソードの幕開けだった。

 というわけで、渡辺典子「晴れ、ときどき●人」です。赤川次郎原作の角川映画は、いずれも「さつじん」と読みますが、18歳の角川三人娘の3人目のデビューソングですから、そうは読まずにキルミーと歌わせています。
 映画同様、ほとんど記憶にも残らない歌詞なのですが、不思議とサビだけが頭に残っていました。
 なんでこの話って理由はありませんが、何か書き残そうと思っただけです。

たぶん、使用禁止の文字なんで、伏せ字にしました。

#日記広場:音楽

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2011/06/25 11:53
ぺー子さん へ

本文のとおり、僕もこの映画をキチンと観てないですよー
角川三人娘とか公開年度なども、検索してリサーチしたし(何でもかんでも記憶するような容量ないんで、ヒヤヒヤ生活です)

歌自体は、youtubeでフツーに聴けますので、よければお試しください。
アバター
2011/06/25 11:17
へー、と感心。
この映画知らないので、でっちさんの実話かと(特に平成4年の下り)ww

失礼しました。

渡辺典子さん、ね、なんか顔は知ってるけど、映画に主演していた、しかも角川3人娘とは知りませんでした。…私、若いんで…(ウソ)単なる無知です。

なんか小説でも読んだみたいで得した気分でしたw



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