モンスターハンター 勇気の証明~三章0-5
- カテゴリ:自作小説
- 2011/07/19 11:36:08
【渓流のミランダ・2】
ずしん、ずしんと重い足音がこちらに近づいてくる。
時々、めりめりと木が裂けて倒れる音もする。アオアシラかと思ったが、渓流の暴れん坊も、そこまで乱暴な歩き方はしない。
飛び交う虫達はさらに数を増している。雷光虫は、集めてランプの中に入れ、民家の照明にも親しまれている虫だが、これは似たようで違った。
光り方がさらにまばゆく、ユッカの顔の近くをかすめただけでピリッと放電が走るほどだ。
ガーグァ達が我先にと、憩いの場を駆けだしていく。
けれど、ユッカはその場を動かなかった。いや、動けなかったのだ。
(足が…足が、動かないっ)
せまる気配に、足が石になったようで、ぴくりとも動かない。背中の剣を握った手指も、柄に張り付いたようだ。
雷光虫が雷雲まで呼んだのか、にわかに晴天が曇りだした。そして、辺り一帯に凄まじい雷鼓がとどろき渡る。
否――。雷鳴は、天の響きではなかった。
それは、獣。一頭の巨大な獣の咆哮だった。
ずしん。
全身に電光をまとわせた碧玉色の獣が、森の闇から姿を現す。
頭部に突き出した二本の角、全身を覆う無数のトゲ。大地を踏みしめる四肢は太くたくましい。
決して優美ではない。だが、雄々しさと均整のとれた姿が、モンスター随一の美しさと言われている。
放たれる禍々しい殺意さえなければ、ユッカも神様だと思ったかもしれない。
雷狼竜ジンオウガ。それが、この獣の名だった。
(ど、…どうしてこんな所に!?)
ユッカは目を見開いたまま、凍りついていた。
ジンオウガが、ガーグァを主食としていることは知らない。
でも、最近急にこの地域に住み着いて、訪れるハンターや旅人を襲っているという被害は、店を訪れる客達からひんぱんに聞いていた。
けれど、まさか自分がその相手に出遭ってしまうなんて――。
(お兄ちゃん、助けて!)
狙っていたガーグァが消えるのを許さず、ジンオウガはこちらへ向かって走り出した。
巨体が地面を蹴るたびに、足元がわずかに振動する。その拍子にへたり込み、ユッカは完全に腰を抜かしてしまった。
最後のガーグァが森の中に走り込む。ジンオウガは獲物を逃がした苛立たしさで、力任せに咆哮した。びりびりと空気が鳴り、両手で耳をふさいでも鼓膜が破れそうになる。
やがて、獣はゆっくりと首をユッカに向けた。この獣は人も食う。新たな獲物に、眼光が青白く光った。
何も考えられなかった。
一歩ずつ近づくモンスターを前に、ユッカはただ見あげるしかできない。歯の根が、さっきからがちがちとうるさく鳴っている。
来なきゃ良かった。やめておけばよかった。ハンターなんて、なるんじゃなかった。
(わたしの、バカ…!)
両目から涙があふれて頬を流れる。
モンスターは、そんなユッカを見て笑ったかどうか。大きく吼えると、鋭い鉤爪のついた右前足を振りあげた。
――ガアア!
「えっ、何っ――?」
ジンオウガの頭が、破砕音とともにのけ反った。急所を突かれて悶える彼の体に、もう一発、巨大な弾丸が炸裂する。
モンスターの怯みでユッカも我に返り、はっと銃撃のあった方向を振り返る。
いつの間にそこにいたのだろう。滝壺にほど近い浅瀬で、一人の女ハンターが長大な銃を腰だめに構えていた。
女はユッカと目が合うと、苛立たしげにハスキーな声で怒鳴る。
「邪魔だよ! そこどきな! あんたに当たる!」
「――は、はいっ!」
女の声は、凍りついていたユッカのおなかに焼けた石炭を投げ入れたようだった。
たちまち足腰に感覚が戻り、転げるようにしてユッカはその場から飛び退く。モンスターの前爪がその後を追ったが、寸でのところで空振りに終わる。
その隙を見逃さず、女の放った銃撃がモンスターの眉間を続けざまに2回撃った。
「行け!」
女が、傍らに控えていた純白のアイルーに手を振って合図する。
「特攻ニャ~!」
大きなタル爆弾を頭に載せた彼は、ジンオウガに向かって突進した。
そんな、猫の身で特攻なんて!
悲惨な結末を想像し、ユッカは思わず両手で顔を覆った。
しかし、アイルーは器用に大タル爆弾を敵の顔めがけて放り投げると、すかさず飛び退いて爆風を避ける。身のこなしは軽く、さすがは猫族である。
雷光の王者も、急所に痛手を受けては不利と思ったのだろう。一声吼えると身をひるがえした。
「…助かったの…?」
浅瀬に尻もちをついて、ユッカはジンオウガが森の奥へ姿を消すのを見送った。まだ手足がひどく震えている。
そこへ、ぴちゃぴちゃと小さな足音がユッカに近づいてきた。
恐怖の余韻で反射的にびくりと肩を跳ね上げると、顔を覗き込んできた猫は、困ったようにヒゲをぴくぴくさせた。
「ニャ、まだ子供ニャのか。旦那様~、お子様が迷子のようですニャ」
「なんだって?」
ヘビィボウガンを折りたたんで背にしょった女が、ゆったりとした足取りでこちらにやってくる。
「あ、あの…」
ユッカがお礼を言おうとしたら、女ハンターは「ふっ」と鼻先で笑った。
最初にゲームで感じた感動が、ジンオウガ登場に詰まってます^^
モンハンはいろいろと私に衝撃と感動をくれたゲームです。ただの怪物じゃなくて、モンスターは世界に生きる動物。その観念が素晴らしいです。ほかのゲームにはなかった発想かもしれません。
ちなみに私も、あんまりラノベとか読まないです^^;
昔読んだドラクエのノベライズとかが今も根底に残ってますね~。
久美沙織さんという作家さんのドラクエの小説は、ゲームの世界観を広げるだけじゃなく、キャラにも意外性と深みを付けておりました。1~3と8の小説も全部手がけてくれてたらよかったのに(笑)
とっても躍動感と緊張感があって盛り上がりますです^^
そうそう、次に書こうと思っているのは、こういう場面もちらほら出る予定!
こういうの普段、読まないから参考になるわぁ♪
「雷狼竜」ですか! 強そうですねー!
ユッカちゃん命拾いしましたね^^
今回はまぷこさんに、本当に教えられました~^^;
比喩は、例える言葉の前の文章との比較で生きる!
貴重な教えでした。目からうろこw ありがとうございます^^
まぷこさんの仰る通り、「すみあがった」は、「凍りついた」と同義語なんです、ここでは。
でも、「凍りついた」が浮かんでこなかったので、この言葉で代用。
動けなくてがたがたしているユッカに、温度が戻った様子を書きたかったんです。
喩えってほんと、奥深いですね。これを使いこなせば、真の小説家になれますね。
…私も南国育ち?(愛知県は沖縄より暑いですw) だから、全然分かんなかったです。^^;
完全にゲームの設定だと思い込んでました~。
ある意味素直すぎ?www
住んでる地方によってイメージするものが違うって、発見ですねぇ!
これは面白い!^^
なるほど、まぷこさんの例みたいに対比を持ってくると良いんですね。 〆(-_-*)メモメモ
コメ欄読んでるだけでも勉強になりますね~。得しちゃった♪ (^m^*)
ああ、そうでしたか~。住んでる土地によって、比喩の受け取り方って違うんですね。勉強になりました。
アドバイス感謝です。なるほど、対比を持ってくるんですね。そこは気づきませんでした^^;
あの、それ頂いちゃっていいですか?
あとでこっそり直します^^;
いまいち効果がつかめなくて。なるほど~。
爆弾の見た目も楽しいですよね。耳がついてて^^
MHP3のオープニングで、シビレ罠をかけるよう、女ハンターが指示を出してますよね。
あれをそのままやってみました。
なつき度が低いオトモは、とにかくサボりますよね。なつくまでが長いんだ、これが…。
配信オトモ、悪口言ってるんですか~そりゃまたw^^;
それだけ、前の主人への愛が深いんですねえ。
このランマルも、そういった展開になる予定です。
だんニャさま…その呼び方は萌えますww(´m`*)
解決策の例を示すと、その直前にある、『すくんでいだ』を『凍りついた』に換えれば、比喩が呼応してわかりやすくなるんじゃないかと。
あくまで、例ですけどね。
効果のほどは……楽しいだけかもしんないですけど。
こう言う風にオトモとコミュニケーションが取れたら楽しいでしょうね。
でも、なつき度が低いと貰って来たオトモは前の旦那さんを懐かしむばかり。
さらに配信した先のオトモはと言うと……私の影口を叩いているらしいです。
『前の旦那さんはガンランスばっかり使ってたニャ』
『かなりへっぽこだったニャ』
お~この野郎、解雇したろかぁ。
ちなみに『旦那様』はぜえったい『だんニャさま』と言ってると思います。
いえいえ…。実際は、オトモにはじかに命令できないんです。
これは、話なので指示を出させていますが。ゲームでは、彼らは自分の判断で勝手に行動しています。
だからすぐ負けちゃうんです。大型モンスターに。(体力回復したら、何度でも復帰しますけどね)
爆弾のタル攻撃は、実際にあります。
スキル強化すると、俺より敵に痛打をあびせますよ。でも、こっちも巻き込むので、文字通り取り扱い注意ですがw
あ~、石炭のくだりはですね…比喩ですwww
なんつうか、女ハンターの声が、ユッカに気合いと勇気を与えたという…。
…わ、わかりずらかったですかね?^^;
俺もまだまだだなあorz
爆弾の樽を投げつけるのかぁ…。
モンハンって1人で黙々と狩りをするイメージだったんですけど、サポートどころか
主力級じゃないですか。
爆破攻撃、私も好きです~。ただの趣味だけど。www
…何か私の頭の中では、モンハンのイメージがどんどん膨らんでるんですけど、きっと
実物とは似ても似つかないんだろうなぁ。www
ところで、腰抜かしてるユッカのおなかに焼けた石炭を投げいれるって、これ、ゲームの
中の設定ですか?
イヤ、腰抜かした人に石炭って効くのかな~って、ちょっと気になったんですよ。www
一抹の寂しさ…確かにそうかも。俺もあの孤高な感じに惚れました。
あ、俺ってジンオウガ大好きだったのか…(笑)
音楽も好きなんですよ。ロックな中に、和風が入ってるでしょう。琵琶の音、渋くて良いですね。
俺も最初の遭遇では逃げましたさ。初期装備で勝てるわけないですよねww
牙竜を頭に着けて名乗らせるのは、迷ったんです。
おっしゃる通り、あだ名とは微妙に違いますしね。でも、種類~ドラゴン系かどうか~を分からせるために、つけてみました。
アイルーって、メラルー同様マップにいるんですが、アイルーは盗みを働かない半面、たまにこっちに攻撃してきますよね。すみかを守ろうとしているんでしょうか。俺のオトモと時々ケンカしてるし…。
攻略ページに、ガンナーのオトモは爆弾系が良いとあったんで、こっちも爆弾オトモです。
というか、爆弾オトモは最強じゃないですか?
ほんとに…彼らの大タル爆弾には、何度も助けられました…ううう;;
均整の取れた肉体美と孤高の中にも一抹の寂しさのようなものが感じられて好きなモンスターです。
最初に会った時ですか?
一目散に逃げ出しましたとも。
そのジンオウガですが『牙竜ジンオウガ』と表されていますよね。
正しくは『牙竜種ジンオウガ、またの名を雷狼竜』と言います。
モンスターは『種』と呼ばれるカテゴリーで大まかに分類され、種別ごとには別の呼び名があるんですね。
あだ名みたいなものでしょうか。
ちなみにドスファンゴは『牙獣種』、リオレイアは『飛竜種、陸の女王』と呼ばれています。
同様にオトモのアイルーも『獣人族』と言うモンスターです。
ほぼ猫なのですが……猫と言われると怒る固体もおります。
にしても……爆弾オトモは蒼雪さんの趣味でしょう。
白いアイルーはちゃんといます。オトモにできるんですよ~^^
俺も2匹おります。オトモの白い奴ら。気づけばオトモも10数匹…猫天国です。
トロか、そこは気づかなかったw
「どこでもいっしょ」昔やりました。でも、途中から面倒くさくなって、彼らのブログがすかすかになってたな。「今日も蒼雪は遊んでくれなかった」とか書かれて^^;
ああ懐かしい…w
(白い、という事で、頭の中ではトロに変換されてます)