Nicotto Town


ま、お茶でもどうぞ


モンスターハンター 勇気の証明~三章0-7

【覚悟】

「…ふうん」
ミランダは、思惑ありげにユッカを見おろした。
「…そうだ。あんた、あたしと来る気はあるかい?」
「えっ?」
「ニャ! 旦那様、何言ってるのニャ~!」
驚いてユッカが顔を上げるのと、ランマルがぷんすか怒って腕を振り上げるのと同時だった。
「こ~んなひよっ子、連れて行ったら旦那様の足手まといになるニャ!」
「お前、前から自分にも相棒が欲しいって言ってたじゃないか。ランマル、お前この子の先生になってやりな」
「ニャニャ! そんニャ~」
ランマルは大げさなくらいに飛びあがったが、主人の命令は絶対だ。
一瞥されると、大人しく「はいニャ…」とうなずいた。
「ええっ、あなたが先生なの?」
ユッカが目を丸くすると、ランマルはあからさまにムッとした。
「なんニャ。ユッカよりは場数を踏んでるニャよ。モンスターにびびって、おしっこちびりそうになってたお子様には言われたくないニャ」
「も、漏らしてないもん! 袴が濡れてるのは川の水のせいなの!」
「どうだかニャ~」

「こらこら。二人とも、そのへんにしな」
ケンカ腰に睨みあう一人と一匹に、ミランダがにこりともせず間に入った。
「そろそろ日が暮れる。さっさと今夜の食料を確保して、ねぐらを探そう。ジンオウガは厄介だが、あの痛手だ。しばらくこちらには来ないだろう」
「いいんですか? わたしがついて行っても」
ユッカは不安そうにミランダを見た。ミランダは短くうなずいた。
「ああ。あんたみたいな女の子、ひとりにしておけないだろ。
それに、あんたの兄さん達も気になるしね。ついでになら、探してやってもいい」
「ほんとですか?!」
「ああ。キャンプに戻ってもいいけど、あたしもまだクエストの途中なんだ。残り日数も少ないし、早く片付けないといけない」
ごろごろと、空が鳴った。ジンオウガが呼んだ雨雲は、もう少しで雨を落としそうだった。
「わかりました…。こちらこそ、一緒に連れて行ってくれたら嬉しいです。お願いします」
ユッカは深々とお辞儀をした。迷う気持ちはほとんどなかった。
ここに来るまでに、ユッカは地図をなくしていた。メラルーに盗まれてしまったのである。
とてちて~と二本足で小走りに近寄ってくる黒猫族のメラルー達は、手癖が悪いことでハンターや旅人に嫌われている。
ユッカも例にもれず、崖沿いの道でメラルーの一匹にかすめ取られてしまい、道に迷ったというわけだ。
このまま山奥で力尽きたとしても、近隣にいるアイルー達がキャンプまで運んでくれるだろう。
でも、せっかく無理を言ってハンターになったのに、そんな終わり方をしては、「だから言ったのに」と溜息をつかれるだろう。両親と、グロムに。
何より、消息を絶った兄達も心配だ。もしかしたら、二人も地図を盗られて道に迷っているかもしれない。
それとも、あのジンオウガに…?
(ダメダメ! お兄ちゃん達なら、きっと大丈夫のはずよ)
ぶるぶるっと不吉な考えを追いだし、ユッカは笠の顎紐を留め直した。

「それじゃ、狩り場を移動するよ」
ミランダは青い銃を背負い直すと、大股で先に歩きだした。そのすぐ後にランマル、そしてユッカが続いていく。
(お兄ちゃん、ミーラルさん…無事でいてね)
ぽつぽつと降り出した雨が、徐々に渓流の水を濁らしていく。二人と一匹は、濁流になるのを避けて、地図で言えば中央付近の森に入っていった。


「…あんた、ハンターに向いてないね」
パチパチと、野営のたき火が燃えている。アイルー達のすみかでもある、竹林の断崖が今夜のねぐらだ。ここには絶対に、モンスターは訪れない。

ぐうううう、とユッカのおなかが鳴った。
大きな音は斜め向かいに座るミランダとランマルにも聞こえたはずだ。けれどミランダはまったく関心を示さないで、両手につかんだこんがり肉にかぶりついた。
ランマルは、ちら、と気遣わしげにユッカを上目づかいで見たけど、やっぱり無言で自分の肉にかじりつく。
(おなかすいたよぉ…)
二人がおいしそうに肉を食べるのを、ユッカは指をくわえて見ているしかなかった。
あの後、三人で森に入ったのだが、ミランダは自分の分だけガーグァを狩り、ユッカの前で肉や羽を剥ぎ取った。
――あんたもやりな。
もくもくと作業を続けながら、そっけなくミランダは言った。
ユッカは、森のあちこちで虫をついばむガーグァの群れを見て、もじもじとためらった。
――ダメ…。できない。
村のハンター訓練所では、狩り場でのサバイバル方法として、教官に肉を焼くテストがある。
教官のその日の夕飯にかかわるので、上手に焼けるまで家に帰してくれない、過酷なテストだ。
料理が得意なユッカは、肉を焼くのは上手だった。
けれど肝心の狩りの方は、女の子には格別優しい教官も呆れかえるほど下手だったのだ。
武器は扱える。どう振り回すか、敵との距離は。型は完璧だ。
でも、生き物を殺すことが、ユッカにはどうしてもできない。

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2011/07/26 09:31
アイマールさん、レス感謝です。

レイズナー知らなかったので、画像検索してみましたw
頭のコクピット、ガラス張りだあ。叩かれたら終わりですね^^;
へえ~、当時としては、ガンダムに近いリアルなストーリーだったんですね。
ファーストのガンダムは、最も早い時期に「戦争のリアルな顔・まきこまれた若者・青春の苦悩」を見事に描ききっておりました。今でも名作と言われるゆえんですね^^
で、レイズナーの主人公は人殺し、できたんでしょうか?打ち切りになって終わってるそうなので…。
決着は語られなかったのかな^^;

ユッカが「ガーグァ可哀想」って言ってるのは、彼女自身の性格や優しさもありますが、育った環境にもよるところが大きいです。
これ以上は続きで語ります^^;

ゴキブリって、大きい奴は未だに見たことないんですよ。ネズミも。俺ってラッキー?ww
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2011/07/25 23:08
おお~、なるほど~。ユッカはモンスターを殺すのが苦手なんですねぇ。
ナウシカみたいな優しい子♪^^
イカズチさんも仰ってますけど、クエスト物には割と珍しいタイプの主人公ですよね~。
昔、「レイズナー」ってロボットアニメで、主人公は兵士のクセに人殺しができなかったですけどね。
主人公は最後まで敵を殺せないのか、それとも殺すのか、そこに焦点があてられたアニメでしたねぇ。
結構好きだったのです。
ユッカ、がんばって一人前のハンターになって欲しいですねぇ。
グロム君はあんまり応援する気にならないけどw、この子はつい温かく見守っちゃいますよねぇ。
グロム君は放っておいても大丈夫そうだし。 ( ̄m ̄*)ププ

ちなみに私は、普通の虫は殺せるけどゴキちゃんだけは殺せませ~ん。^^;
かわいそうって言うんじゃなく、気持ち悪いからです。www
ゴキちゃんって何であんなにエグイ姿してるんでしょうねぇ? 強烈すぎ。www
アバター
2011/07/25 11:08
いちごさん、コメント感謝です。

そこまで恐縮されなくても結構ですよ^^
この小説は一般公開なので、どなたでも閲覧と感想は自由です。
お読み頂き、本当にありがとうございます^^

あ、シマシマはアプトノスって言うんですね。あんまり名前が出てこないので、勝手にシマシマとか、ゼブラって呼んでましたw

女性は母性本能が強いせいでしょうか。虫も殺せないって方、多いですね。
俺も昔は平気で虫を…いや、子供の頃ですが。今は、蚊とハエぐらいしか叩けません^^;
あの草食系は、親子連れってところが倫理観に訴えかけますよね。よほど腹が減ってないと、狩れない。

ウィキにも、
>ほぼ、生肉の剥ぎ取り用モンスターだが意味もなく狩るのはプレーヤーの人間性を問われる。

と、ありますし^^;

このユッカの腹減りのお話も、そこを題材にしています。もちろん、このまま腹ペコではいられないので、行動を起こすんですけどね。人間的成長が描けたらいいなと思っております。

読者さんになって頂けるんですか?嬉しいです!ありがとうございます!
頑張って書きますので、どうぞよろしくお願いいたします(^∇^)
アバター
2011/07/25 09:15
お友達でもないのに書き込み失礼します。

しましまのアプトノスさん、可哀想で狩れないですよね>_<;
トライの時、結構そんな「女子ハンターさん」に会いましたよ
無抵抗な草食系のモンスターさんを狩るのってやっぱりはばかられます
大型モンスターに捕食されてしまった亡骸を時々剥ぎ取らせてもらったり
大型と戦っていてうっかり殺傷してしまった時剥ぎ取らせてもらったりしてました^_^;
MHP3は時々行商人のお兄さんが「生肉」売っているので見付けた時にまとめ買いしちゃってます

小説、すごく情景がうかんで楽しく読ませてもらっております
定期購読したいので、お気に入りに登録させてもらってよろしいでしょうか??
アバター
2011/07/25 07:57
イカズチさん、コメント感謝です。

ありゃ、そうだったんですか?
意外と多いかと思ってました…心優しきハンター。
というか、半分は俺です^^;
攻撃してこないガーグァやケルビなんて、必要以上に狩れませんよ。
重皮竜とか、ポポ、シマシマの大きい奴(名前なんていうんだろう。よくレイアやレウスに捕食されてる、あれ)
も、どうしてもという時以外は狩らないです。
だって、親子で歩いているじゃないですか。ポポとか、シマシマとか。それを殺るなんて、かわいそうでかわいそうで…。
しかし、レイア戦などで俺の目の前を塞いだり、戦いの邪魔になる時は容赦なく倒してます^^;
自分の命には代えられない、あはは…w
重皮竜って、普段はおとなしいのに、大型がいると興奮して、こっちにも襲いかかってきますよね。
ああいうのは、「邪魔~~~!」ってさすがに叫びながら倒してます。(^w^;)

モンスター怖くて狩れないって、その気持ちもわかるな~ww
俺もいまだに怖いですもん。ティガとか、ナルガとか。早い奴。彼らと戦うときはいつも憂鬱ですよ…。
反対に、ドボルベルクなど遅いモンスターは楽なので嬉しかったりしますw
アバター
2011/07/25 01:04
むうう……。
そこに来ましたか。
ユッカの性格からすると、確かに生き物を、それも無抵抗に近い肉剥ぎ取り用のモンスターに刃を突き立てるのは躊躇するでしょうね。
そもそもハンターになった動機が『兄恋し』ですから、そこまで考えて無かったのかな。
どう克服するかが見物ですね。

過去、可哀想で狩れないと言うハンターはリアでも創作系のお話でもお目にかかった事が無いです。
(私が知らないだけかも知れませんが……)
その意味でもユッカはnewtypeなハンターと言えるでしょう。

余談ですが、モンスターが怖くて狩れないと言うハンターは居りました。
ウチの相方……。



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