Nicotto Town


ま、お茶でもどうぞ


モンスターハンター 勇気の証明~三章0-8

【覚悟・承前】

訓練場では、こちらに襲いかかってくる獰猛なモンスター達に、必死で応戦していた。
なのに、のんきに虫をついばむガーグァ達となると、勝手が違う。どうしても、背に負った剣を振るうことができない。
――だって、かわいそうなんだもの…。
いっこうに狩りをしないユッカに、ミランダはなぜか、何も言わなかった。手も貸してくれようとしなかった。
そして今、ユッカはおなかを空かせてたき火を見つめているというわけである。

「…あの、ミランダさんは、何のクエストをしているんですか?」
手持ち無沙汰なので、ユッカは食事を続けるミランダに尋ねた。
「ナルガクルガの狩猟。ナルガクルガは、知ってるかい?」
肉を豪快に噛みちぎりながら、ミランダは言った。ユッカは首を横に振る。
「ナルガは、ヒョウと竜をかけ合わせたような、真っ黒で恐ろしいモンスターさ。奴はとにかく動きが早くてね。あたしらガンナーには構える隙も許さない。手ごわい敵さ」
「ジンオウガじゃ、なかったんだ…」
「いずれは、奴も狩ってやりたいけどね」
不敵に微笑むミランダに、ユッカはどうしてか目をそらした。
「…ナルガの奴、かなり追いつめてやったんだけどさ。今日、ここぞというところで逃げられちまったんだ。戦いに夢中になって、ペイントボールを追加で投げつけるのを忘れちまってね。居場所を見失って、ずっと探し回っていたんだ」
「そこで、お前に会ったんだニャ」
肉球についた肉の脂をぺろぺろ舐めながら、ランマルがにっこりする。目がきゅっと細くなった顔がかわいい、とユッカも微笑みかけて、やめた。
得体のしれない不安が、みぞおちのあたりに重くのしかかっている。
「…ここは、村に一番近いから、大丈夫だと思ってた…」
膝を抱えてうつむき、ユッカはぽつりともらした。
「ジンオウガや、ナルガクルガなんて恐ろしいモンスターが平気で歩いているなんて。ちっとも知らなかった」
「飛竜のリオレイアや、リオレウス、歩く小山と言われてるドボルベルクなんかも来るニャよ。ここは危険がい~っぱいなのニャ」
どこか浮かれたように、ランマルが両手を広げた。
ユッカはますます膝を固く抱える。
(わたし、ほんとにピクニックのつもりで来てたんだ。お兄ちゃん達が、いつも楽しそうに狩りの話をするから、こんなに怖い仕事だってこと、すっかり忘れてた…)

「…ユッカ。ちょっと、あれをごらん」
手にした肉を地面に敷きつめた笹の葉の上に置くと、ミランダはすぐ近くに掛かっているつり橋を指差した。
とてつもない高さの渓谷を結ぶ、太いツタで作られたつり橋は、長い時を経てもなお、旅人やハンター達を向こう岸に渡している。
ユッカはぼんやりと顔を上げ、ミランダの示す方向を見た。
つり橋の入り口。そのちょうど真上に、木の枝とツタが絡んだ、屋根のような箇所がある。
まるで小さな洞のような部分に、小さく光る金色の目があった。
「あれ…フクロウ?」
「あたし達は、番人って呼んでる」
じっと動かない鳥を見上げて、ミランダは薄く微笑んだ。
「あいつ、夜になるとあそこでじっとしているんだ。だから番人。かわいいだろう?」
「…かわいい」
こわばっていたユッカの頬に、笑みが戻る。恐ろしいモンスターが徘徊する深い自然の中にも、こうして小さな生き物達が暮らしている。なんだか安心した。
「あたしがハンターを辞められないのも、こういう発見があるからなんだ」
再び肉を食べながら、ミランダは言った。
「この世界には、命が満ちている。一見不毛な砂漠でも、雪山でも。耳を澄まし、空を見上げれば、ありとあらゆる命が溢れてるってことに気づくはずさ。あの星空みたいに、うじゃうじゃとね」
ユッカ達の真上には、砂糖をばらまいたような星の海が広がっている。
いくつも流れる流星に、ユッカは見とれた。村でも星はたくさん見られるけれど、こんな、怖いくらいの星空を見たことはなかった。
「ユッカ。あんたはどうしてハンターになったんだい?」
ミランダはまっすぐこちらを見た。ユッカは、なんだか恥ずかしくなって口ごもった。
「…ミランダさんに言ったら、怒られそう」
「そんなにくだらない動機なの?」
「ち、違います! …違うけど、でも…」
「言ってごらん。笑わないから」
ミランダは視線を外さない。ユッカは叱られた子供のように、しょんぼりして打ち明けた。
「…お兄ちゃんの傍にいたかったから。それだけ、です」
「…そっか」
ミランダは、食べ終わった骨をたき火に放り投げた。
「いいじゃないか。それでも。健気な子は好きだよ」
「え…?」
ミランダは、ユッカの傍らに立てかけてある大剣を見やった。
「あんた、細い体でそんなのしょってるけど、それがあんたの友なの?」
「友?」
「自分に一番合った武器は、過酷な戦いを生き抜くための、まさに友さ」

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2011/07/26 09:43
アイマールさん、コメント感謝です。

おお、ありがとうございます^^
ミランダのモデルは、アニメ「精霊の守り人」のバルサですw
俺、彼女のめちゃくちゃファンなんですよ~。声がぴったりですね!(原作は未読ですが^^;)
喋り方も、頭ではバルサの声で喋ってます。お読みになる時は、あのハスキーな声で読んでくださると嬉しいですねw

アイマールさんの作る男性キャラがお笑い路線…そ、そういえばそんな所もありますねえw
いえ、カッコいい所はカッコいいですよ!
ベトナム戦線の話とか。硬派な男性書かせたら、俺らの中でピカイチですし。
これからも、その路線極めていってほしいです^^

もしかしたら、みんな背景まで細かく見てないと思います。モンスター狩ることに集中してて^^;

「その場に自分が生きてるって実感する世界・ゲームを作る」というのが、スタッフの意図だったそうですよ。だから、モンスターの動きや風景が、あんなに生き生きしてるんですね。
難易度も絶妙で、クエに失敗しても、次頑張るぞ!って思える。住人でいることがこんなに楽しいゲームは久しぶりです。
それまで、住人楽しかったゲームは、ワールドネバーランドとアストロノーカくらいだったからw
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2011/07/25 23:26
う~ん、私、ミランダさんのめちゃめちゃファンです~♪
セリフ(口調)が凄くツボ。銀髪ってのも大好き。 (^m^*)ウフフ♪
こういうぼくとつな喋り方の女性キャラに弱いんですよね~。
すぐ惚れちゃう。www
私が書く話の傾向って、いつも「女性キャラはかっこよく、男性キャラはお笑い路線」になっちゃう
んですよ~。
似通ったキャラにならないように気を付けないと、ヤバいヤバい。www
優しすぎるユッカには、ミランダさんみたいな師匠がちょうど合ってますよね~。
良い師匠にただで出会えて良かったわぁ。 (^m^*)

へ~、モンハンって風景にもこだわってるんですねぇ。
PS1以降のゲームは、ホント背景がキレイな作品多いですもんね。
そういうのを見るのもゲームの楽しみの一つですよね。
ゲームのマップとか見るの、私も好きです~。^^
アバター
2011/07/25 13:49
…ちなみに、文中で出てくる「番人」とあだ名されたフクロウは、ほんとにいます^^;
夜に、タケノコが採れるマップにいくと、つり橋の上の方に。
見つけたときは、良い仕事してるなあと感心しましたw

モンハンのマップは、大自然満喫!ってくらいに書き込まれていて、昼と夜の変化も非常に美しいですよね。
砂漠の流れ星や天の川、火山で降っている火山弾、マグマの海。しんしんと降りしきる雪。
水没林の夜明けとか…。クエが終わった20秒~1分の間、ぐるぐるカメラ回して見入っています。
アバター
2011/07/25 08:08
イカズチさん、コメント感謝です。

あはは~、得して頂けたら嬉しいですww

あ、ミランダの装備はこの文章に…

>いつの間にそこにいたのだろう。滝壺にほど近い浅瀬で、一人の女ハンターが長大な銃を腰だめに構えていた。

長大な銃を ってところで、ヘビーボウガンだと気づかないでしょうか…。
…ダメだったか…。
す、すみません~! 
これ、前の章で名前出しときます。装備の名前わからないと、不満が残りますよね^^;
アバター
2011/07/25 08:04
まぷこさん、コメント感謝です。

章の番号を見間違え…というか、うっかり前の章を飛ばして解除してしまったんです^^;
あわてて取り消そうとしたけど、もう見た人いると思って、そのままにしました。

俺もエディターとかに打ち込み作成を考えたんですが、おっしゃる通り、字数オーバーと場面転換のキリが悪くなるので、直接書き込みしています。
ほんと、貼り付けだと削除部分の推敲が大変ですよね^^;
アバター
2011/07/25 01:09
逆に読み手としては
『わ~い、得しちゃった』感がいっぱいですけどねw。

ところでミランダの装備詳細は……う~む、ユッカ視点だから表現が難しいのですかね?
それとも私が詠み逃しただけ?
アバター
2011/07/24 23:57
↓ありがちです。
私はあらかじめテキストファイルにベタうちして、1日分ずつブログにコピペしていましたが……
それだと、『切りのいい場面で切ると文字数が30字ばかりオーバーしちゃう。かといってその前の場面ではちょっと分量が少なすぎるし』みたいな時に削るのが大変でした。
アバター
2011/07/24 23:33
しまった…これ、あさっての分だったのに、今日公開してしまいました^^;

いいや、2つ連続で出します。そのかわり、明日はお休みということで。
続き、急いで書きます。



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