モンスターハンター 勇気の証明~三章-13
- カテゴリ:自作小説
- 2011/07/30 15:25:30
【ハント】
一度腹を決めてしまえば、ブルファンゴはユッカにとって恐れるに足らなかった。
「やあっ!」
重たい剣に手こずらされ、幾度もからぶりしたが、大上段からふりかぶった剣がイノシシの体を斬り裂く。
斬りおろした切っ先が、がっと浅く地面にもぐる感触がした。同時に、ごろりと獣の体が横たわる。
「…まだ、いる」
いったん剣を背負い、ユッカは素早く周囲を見渡す。ミランダが、ランマルとともに必死にナルガクルガと応戦している。
その周辺で、不自然に盛り上がってくる地面があった。
ぼこり、とブルファンゴ達が顔を出す。
「ミランダさん達の邪魔はさせない!」
ひとつの仕事を与えられた使命感がユッカを突き動かした。姿を現したブルファンゴ達を片付けるために走りだす。
だが、それまでミランダとランマルにばかり気を取られていたナルガクルガが、ふいにこちらへ飛んできたではないか。
まるで振り向く気配もなく、いきなり、後ろ向きに跳躍してきたのである。ユッカには、真っ黒で大きな影が、突然自分に降りかかってきたと思った。
「きゃあー!」
「ユッカ!」
思わず両腕で顔をかばい、しゃがみこむ。ミランダが怒鳴った。と同時に、黒い巨体がユッカのすぐ前に舞い降りた。ヒョウの属性があるためか、着地はほとんど振動がしない。
「た、助かったの?」
おそるおそる、ユッカはかばっていた腕を下ろして立ち上がった。すぐ目の前に、真っ黒な長いシッポや肢体が息づいている。月下でも艶やかな毛皮の美しさに、ユッカは一瞬見とれかけた。が、鋭いミランダの叱声が飛ぶ。
「早くどきな! そこにいたら、殺されるよ!」
「え――?!」
理由を問う余地などない。考える前に、ユッカは飛び込み前転でそこから離れていた。
間一髪で、ナルガクルガがシッポで周辺を薙ぎ払う。
近くにあった太い樹木が小枝のように折れて、めきめきと倒れた。ユッカはぞっとした。
「掃除はもういい、離れるんだ!」
頼みの綱の電撃弾は尽きたらしい。貫通弾に切り替えたミランダが、懸命に敵に向かって撃ち続ける。
ランマルも戦うが、激しい戦闘に疲れてきたためだろう。さっきから攻撃が当たらない。投げたタル爆弾は敵にあっさりとかわされてしまう。
ナルガクルガの注意は、またふたりに移ったようだ。さっきよりも凄まじい早さで、彼女達を仕留めようとする。ユッカは離れた場所で、その様子を見つめるしかできなかった。
騒ぎを聞きつけて出現したブルファンゴが、見境なく突進しては、ミランダやナルガクルガに返り討ちに遭っている。考えなしに助けようと間合いに入ってしまったら、きっと自分もニの舞を踏むだろう。
(…お兄ちゃん、だから、あんなに嫌がったんだ)
足手まといの意味を、ユッカはようやく理解した。
アオアシラ相手に、今のグロムとミーラルが苦戦するとは思えない。けれど、ユッカが一緒に戦おうとしてくっついていたら、二人は思うように戦えなくなってしまう。
ミランダとランマルにしてみても、それは同じ思いだっただろう。でも、ミランダは同行を許した。それはきっと、ユッカに見せたかったからかもしれない。
実際のハンターの戦い方を。
「ミランダさん、ランマル…!」
近づけないもどかしさと焦りの中、ユッカはミランダ達の懸命な戦いを見つめる。
「旦那様! ペイントするニャ!」
「ああ、わかってる!」
もともと手負いだったナルガクルガは、体力も限界に近付いているようだった。
ひとしきり暴れまわったあと、二人から距離を置いて飛び退り、ぜいぜいと息をつく。だらしなく開いた口からは、透明なよだれを垂れ流していた。
敵が動きを止めたのを見計らい、ランマルがペイントの指示を出す。
ミランダは、ペイントボールではなく、ペイント弾を撃ち込んだ。巣に戻られる前に、少しでもダメージを重ねておこうというのだろう。
ナルガクルガの眉間に、夜目にも鮮やかなピンク色が弾けた。ペイントの実が持つ、強烈な臭気が、ユッカの鼻を突く。
ナルガが、ヒョウのような雄たけびをあげた。せめてもの威嚇だろう。弱っている。
ユッカにも、それがわかった。敵が動かない隙に、ミランダはさらに銃撃を加えた。この分だと、敵は巣に戻る前に倒れそうだ。
(勝てそう!)
ユッカが勝利を確信した、そのときだった。
突如、低い咆哮が轟いた。昼に聞いた声と同じだ。
さかんにシッポを振り回し、ミランダ達に抵抗していたナルガクルガでさえ、一瞬動きを止める。
「――雷光虫?!」
ユッカの全身の毛穴がぞわっとした。昼に見た、無数の青白く光る虫達が、どんどん数を増してこちらへ飛んでくる。
「まさか――!?」
攻撃をやめ、ミランダは素早くあたりを見回す。ランマルが、さすがに怯えた声をあげた。
「ジ、ジンオウガがこっちに向かってるニャ! 旦那様、ここは…!」
「くそっ、奴が逃げる!」
焦ったように、ミランダは舞い上がるナルガクルガを見上げた。
グロム達が何やってるのか、も。
結局グロムは…、あ、続きをお楽しみにw
トライの件…つまり、身の程をわきまえろ、と。うんうん、わかる気がします。
俺もマルチレイド2で、自分が足手まといだとわかっていた場合、回復の援護にひたすら回っていましたね。
でも、あるときメンバーのリーダーから「もっと戦って」と言われちゃって^^;
って言われてもさ~、俺装備があんたらと違って弱いのよ、と言いわけしたかったんですが、そこは素直にうなずいて去りました…。
やっぱ、実力に開きがありすぎるといけないな、と勉強になりましたね。
でも、最強装備の実力者が、中級者と一緒に戦ってくれることも多かったです。親切な人達でしたね。こっちの手持ち武器を見れば、今どのくらい進んでいるのか把握しているはずなんですが、見下さない。
むしろ手伝ってくれる。ありがたかったです。
まあ、オンラインにはいろんな人がいるってことですね。
あー、でも、イカズチさんの例はひどすぎますね、確かに。
勝手な行動なんて、チームでやることじゃないですよ。弱いなら弱いなりに、回復役をするとか、ザコを片付けているとかすべきです。でなきゃ、離れておりなさい、という。
…というのを、今回書いてみました。いろんなことに自分で気づいて、どんどんたくましくなっていくユッカです。
前門のナルガ、後門のジンオウガですね、この場合w
さー、この続き書かないと…。毎日原稿用紙5枚分。筆力上がると良いなあ(^∇^;)
問題は足手まといは足手まといなりに、やるべき事をやろうとしているか、ですよね。
装備も整えず、明らかに力量以上のクエに同行し、勝手な行動を取って3落ち。
これでは狩り友どころか知り合いにさえなりたくなくなってしまいます。
なにより謙虚さを弁えていないネットハンターが多い。
上記の例は3(tri)での実話ですが、そのハンター君、恥ずかしかったのか一言も無しにロックラックから消えました。
困ったモンです。
ユッカはその点に気が付き、自分なりに精一杯の行動を取ろうとしていますね。
かつ、兄グロムの言動が決して妹を邪険にするだけのものでは無い事にも気が付いた。
良い子だなぁ。
前門の狼、後門の虎……でもないな。
何て言うのがふさわしいのかな、こういう時。
…………
『おたのしみは、これからだ!』(←誰にとって?)