モンスターハンター 勇気の証明~三章-15
- カテゴリ:自作小説
- 2011/07/31 21:04:18
【敗走・承前】
腕の中のランマルは、今にも命の灯を消してしまいそうだった。そして、目の前で恩人が殺されようとしている。それなのに、自分は動くこともできない。
(誰か、助けて…! お兄ちゃん…!)
「ユッカ…逃げるニャ…。ユッカだけでも、早く…」
「ラ、ランマル! だめよ、立ち上がったら…あなたこそ、早く手当しなきゃ!」
「ボクなら平気ニャ…。アイルーは地面に潜れば不死身なのニャ。これくらいニャンとも…!」
ランマルは起き上がると、よろよろしながらジンオウガに向かって歩いていく。
いや、本猫は走っているつもりなのかもしれない。
「何をするつもりなの、そんな身体で…!」
「こいつを、ぶつければ、どんなモンスターもひとたまりもないニャ…。これさえ投げれば…」
ランマルは、着ていた黄緑のチョッキから、握り拳ほどのどどめ色をした玉を取り出した。ぷーんと漂う臭気は、厠の匂いそのものだ。ペイントの実とは違う、ある意味なじみ深い臭いに、ユッカも思わず鼻を覆う。
「う! くさい~」
「うにゃ、め、目がかすんで…。にゃんたる失態…ニャ~…」
「ランマル!」
ミランダとジンオウガのところへたどり着く前に、こてんとランマルは前のめりに倒れた。手にしたこやし玉が、ぽろりと手から落ちる。
「うぐあああ!」
「――ミランダさん!」
女のものとは思えない凄まじい苦鳴に、ユッカは心臓が潰れる思いがした。
見れば、ミランダがジンオウガの前足に押さえつけられているではないか。
丈夫な鎧を着けているとはいえ、さほど上等な装備ではない。ミランダが圧死するのは確実だ。
「ユッカ…何してる、早く、逃げるんだよっ…!」
「だめー! できない!」
ぎりぎりと胸に体重をかけられているミランダの顔は、苦悶に満ちている。もう、もがく力も残っていないようだ。ユッカは泣き叫んだ。ランマルが、地面に伏せたまま、落ちているものを指し示す。
「そいつを奴にぶつけるニャ…! 急ぐニャ…!」
「~~っ!!」
ひぐひぐと泣き喘ぎながら、ユッカは砕けそうになる膝を叱咤して落ちているこやし玉を拾った。モンスターの糞を粘着草で混ぜ、小石を芯にしてお握りのようにまとめたそれは、丸くて軽い。
見た目は汚いが、ハンター達には黄金玉、もしくは救命の玉と重宝されるそれを、ユッカはしっかりと携えた。
「このおおお!」
泣きながら走って、思いきりモンスターの背中にぶつけた。ばしっと玉が砕けたとたん、吐き気を催す臭気がたちこめる。心なしか、空気も黄金色に染まったようだ。
人間より鼻が利くモンスターは、ガアオと悲鳴をあげてのけぞった。拘束がゆるみ、ミランダは渾身の力で横に転がってその場を逃れる。だが、さほど離れないうちにうつ伏せに倒れ込んだ。
「ミランダさん!」
今度こそ、ユッカは彼女へ駆け寄った。モンスターは、まだ臭いにとまどって、やみくもに爪を振り回している。
「ミランダさん、薬です、飲んで!」
「…ユッカ…。ばかだね、逃げろって…言ったのに…」
「しゃべらないで、早く飲んで!」
ユッカはミランダを抱き起こすと、彼女の頭を膝に載せ、薬を半開きの唇に近づけた。しかし、ミランダは息をするのも精一杯のようだった。薬を飲もうと唇を開くが、歯の表面を素通りして顎を伝ってしまう。
弱々しくミランダは苦笑した。
「はは…だめだ、あたしは、もう…」
「そんなこと言わないで…!」
ユッカは泣きながら怒鳴っていた。怒る理由はないとわかっている。でも、腹が立って仕方がない。
何にこんなに怒っているのか、ユッカ自身にもわからない。
自分の無力さのせいか、恐ろしいモンスターのせいか。それとも、無謀な戦いを挑んだミランダに対してなのか。
「お願い、死なないで…!」
「……」
ミランダはユッカを見上げ、何かを言おうとした、そのときだった。
「――やっと追いついたぜ、ジンオウガ!」
「待て、深追いするな、グロム!」
「え、この声…?!」
聞き覚えのある声にはっとして、ユッカはそちらを向いた。こちらへ走ってくる少年少女の姿を認めて、目が見開かれる。
ここの話はですね、モンスターがいかに強いかっていうのを強調したくて、だからこんな絶望展開にしました。
冒頭でも触れましたが、モンハン世界のモンスターは、すんごく強いんです。ちょっと大きいトカゲ・ドスジャギィのシッポひと振りで、大きな岩が砕けるんですよ!w
そういう奴らに、普通の人間はかないませんって。
で、それに立ち向かうハンターもピン切りがいるってことを…、
あ、ネタばれになるので、続きは次回^^;
グロム達がなぜはぐれていたのかも、明かします。みんながどう感じるか、ちょっと緊張しますね。
え~?!と言われるの覚悟で書きます。
まあ、やり手はやり手なんですが、実はミランダって…、
というのが、次(の次)くらいに明かされます^^;
ご指摘の通り、ふたりはナルガ狩猟に力を入れていたので、手持ちの装備がジンオウガの乱入に対応しきれていなかったのも、敗因ではあります。
うっ、グロム遅いと言うご意見がここにも^^;
毎日ちょっとずつ連載していること抜きにしても、遅い展開ですかねえ。違う?もっと早く助けに来い?
それにも一応理由があるんですよ。みなさんが読んだらどう反応するか、不安しきりです^^;
おお、華さんもゲームに夢中ですか?
ピコさんもオンラインRPGにハマっているそうですし、同じやつですかね?^^
俺もモンハンやり始めてから、いろんなことがおろそかになりそうですww
んーとですね、これはイカズチさんとのリレー小説なんですが、俺の方は「ユッカ編」なんですよ。
なので、あえてグロム達の出番を少なくしています。
グロム、ミーラルに加えて、ユッカは3人目の主人公ということで。ひとつよろしくお願いします^^
やっぱりとは…まさか、この先の展開、読めてます?^^;
それじゃあ、なぜグロムが今頃になって来たのかも…。
くぞ~、予想を裏切ってやる!www
かなり危機一髪でしたね、ヒーローは必ず遅れて現れるもんだって言うけど…。
お兄ちゃん、遅~い!www
なるほど、イカズチさんの解説があるから、そういうことなのかって納得です。
これ、きっとモンハンの経験ある人ならすぐに分かるんでしょうねぇ。
FFシリーズでも、属性攻撃間違うとダメージ0って事が往々にしてあるし。
納得です。 ((-_-*))ウンウン
ユッカは新人ハンターですからジンオウガも下位の若い固体だと思います。
なのに何故ここまでミランダチームが苦戦するのか。
私なりの解釈なのですが、元々ミランダたちはナルガクルガの狩猟が目的でしたよね。
迅竜ナルガクルガの弱点は『雷』
対してジンオウガは雷狼竜の名の通り『雷』属性の攻撃は一切効きません。
ミランダはガンナーですから弱点をつくのは当然、持っている装備も雷系のものでしょう。
ジンオウガに対するのは本文にある通り無謀とも言えます。
コテンパンになるミランダを見て、老婆心ながら私なりの解釈を述べさせて頂きました。
グロム、やっと来ましたね~。
遅いよ、お兄ちゃん。
モンハンですね(*≧∀≦*)
実は華も只今オンラインゲームにどっぷりはまってますの
辞めれない( ロ_ロ)ゞ
どうにも主人公がいないような気がしてて・・・・