Nicotto Town


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モンスターハンター 勇気の証明~三章-18

【思い、空回り・承前】

ユッカは言葉が出なかった。自分のあずかり知らぬところで、勝手に話が進んでいたことに呆れたのだ。
『なによ…。どうしてふたりとも、わたしのこと信じてくれないのっ?』
『違う、ユッカちゃん、これはそういうことじゃなくて…!』
ミーラルが弁解しようと身を乗り出す。
『わたしだって、ハンターだよ? ちゃんと自分でお仕事したいのに、全部手伝ってもらったって、そんなの嬉しくない!』
ユッカの剣幕に、さしものグロムとミーラルも、うつむいて黙り込んだ。
『ごめん…。こんなことになるなんて、思ってもみなかったんだ。臆病なお前が、まさかキャンプから出てくるなんて、考えもしてなかったしよ…』
グロムが呟く。ユッカは呆れを通り越して、悲しくなった。
『…お兄ちゃん、わたしのこと、ちっともわかってないんだ…』
『ユッカ…』
グロムが言葉を継ごうとした時、今まで黙りこんでいたランマルが、仏頂面で言った。
『…全員、ハンター失格だニャ』
『ランマル…?』
驚いてユッカは傍らのランマルを見た。向かいに座るふたりも、はっとして彼を見つめる。
ランマルは、きっと三人を見渡して言った。
『パーティーを組んで行動するなら、お互いの行動は事前に打ち合わせるべきだニャ。持ち場を勝手に離れて単独行動なんて、言語道断だニャ!』
『でもよ、あのジンオウガだぜ? ハチミツ集めの最中に襲われたらたまんないだろ』
グロムの言いわけに、ランマルはカッとなった。立ち上がり、グロムに向かって一喝する。
『仮にも兄貴なら、余計なお節介焼く前に、妹にしてやることがあったんじゃニャいのか!』
まるで、年長の男が怒鳴ったような迫力だった。怒鳴られたグロムはもちろん、ユッカとミーラルも息を呑む。
ランマルは、仁王立ちになり、息を乱してしばらく佇んでいたが、やがて、気が抜けたように腰を下ろした。
『…お前らがジンオウガを刺激しなければ、こんなことにはならなかったニャ…。旦那様だって…』
『……』
三人とも、うつむいて肩を落とした。
ハンター失格。ランマルの言葉が、全員に重くのしかかっていた。


ミランダは、黙ってユッカ達の謝罪を聞いていた。
村医者が立ち去った後、ユッカとグロム、ミーラルは、改めてミランダとランマルに会った。そして、今回のてん末を、逐一話したのだ。

ミランダは、怒りもせずに静かに聞いていた。そして、彼らの話が終わると、ぽつりと尋ねた。
「…あんた達、今、いくつ?」
「俺とミーラルは15…。こいつは、14です」
グロムが言い、ユッカの肩に手を置く。
そうかい、とミランダは薄く苦笑した。
「…まだそんなに若かったんだねえ。あたしは今年で35だよ」
「あ…えーと…」
ミランダさん、若いですね。いえ、俺達はそれほどでも? グロムが何と言って良いものかどうか目を回していると、ミランダがまた尋ねてきた。
「ランクは?」
「私とグロムは、去年ハンターになって、ランク2に昇級しました」
ミーラルが答える。ミランダはそれを聞いて、またやるせない眼差しでまぶたを伏せた。
「…そう。才能溢れる若き新人ってところだね」
「いえ、そんな…」
「謙遜しなくていいよ」
ミーラルの言葉をさえぎり、ミランダは疲れたように吐息をもらした。
「あたしのランクは2。もう5年もハンターをやっているけど、未だに2なんだ。笑っちゃうだろう?」
ユッカ達三人は、言葉が見つからなかった。ミランダの微笑は、いつになく自虐的に見えた。
「…5年って、ミランダさんは、30歳でハンターになったんですか?」
体力勝負のハンターを目指すには、ずいぶん遅い年齢だ。
ぶしつけかと気がとがめつつも、思わず、ユッカは尋ねてしまっていた。「こら」と、さすがにグロムが注意しかけたが、ミランダが軽く首を横に振って許す。
「そうだよ。…あたしは昔、ロックラックでハンター相手の食堂をやっていたんだ。5年前までね」
「ニャ、旦那様…!」
それ以上は喋るなと言わんばかりに、ランマルがかぶりを振る。ミランダは、「いいんだよ」と言った。
「なんだか…昔話をしたい気分なんだ」
ランマルに目配せして、ミランダは体を起こすのを手伝ってもらった。ベッドの背もたれに枕をふたつ敷いて、疲れたように身体を預ける。
「…あたしの旦那はハンターをやっていてね。旅と狩りが大好きな人だった。中でも、ジエン狩りに命を燃やしていたんだよ」
「ジエン?」
初めて聞く名に、ユッカが首をかしげる。勉強家のミーラルが教えてくれた。
「ジエン・モーラン。またの名を峯山龍(ほうざんりゅう)。古龍と言われる、生態も謎の巨大なモンスターの一種よ。ロックラックに広がる大砂漠に棲んでいて、何年かに一度、砂嵐とともに現れるんですって」
「よく知ってるね。そうさ、そのジエンさ」
ミランダは、わずかに目を細めた。

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2011/08/06 22:27
アイマールさん、コメント感謝です。

これは最初から決めていた設定なんで、決して後付けじゃないですから!w
肝っ玉が据わった人で、ランクはともかく、人生経験が深いですからね。貫禄があります。
モンハンのランクって、数だけ見てると「まだレベル2?」とか思うかもしれません。
ですがレベル2でも、普通の人の何倍も強いんですよ。
もちろん、ミランダだってそうです。
囲碁、将棋のプロ棋士の初段でさえ、素人何十人束になってもかなわない。モンハンのプロも同じようなものだと考えています。

ランマル、なんか考えた以上に男前になってしまいましたww
夏目に出てくるニャンコ先生は可愛さとカッコよさを兼ね備えていますよね。ランマルもそうなったらいいなと考えてますw
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2011/08/06 18:20
へ~、意外でした! ミランダさんってハンターになったのは30歳の時なんですねぇ!
私はてっきり、ハンター歴15年くらいのベテランだと思ってました。
うわ~、完全に騙されました!www
雰囲気が完全にベテランの雰囲気なんですよねぇ。
これ、みなさん引っ掛かったでしょうね。多分大成功ですよ。^^

それにしてもランマル、どんどんかっこよくなってきましたね~。
ユッカにとっては、オトモじゃなくてもう完全に師匠ですね。
ちょっとドラゴンボールの悟空とカリン様みたいて、絵的にカワイイ♪ (^m^*)
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2011/08/06 00:44
イカズチさん、コメント感謝です。

ミランダがあまり自分から突っ込まない人になっちゃったんで、ランマルしか叱り役がいないんですよ。
仰る通り、こういう指導役がいると、方向の道筋がブレなくていいですね。
こういうキャラがいないと、いつまでもみんな、うだうだしてましたから。
アリスさんも言い役どころでした。ふたりを叱り飛ばすところなんて、カッコよすぎて惚れちゃいましたよ。ああいう、男前な女性好きですね~^^

ランマルの立場は、今後ユッカにとって、よりかけがえのない存在になっていくんでしょうね。
俺も気に入っています、ふふふ…w

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2011/08/06 00:15
2000字の制限って以外にキツイですよね。
私も書いて見て初めて知りました。
あまりキチキチに書くととんでもない所で終わりになっちゃうし、余裕を持たせ過ぎても物足りない……。
道場とは違った気苦労があります。

ランマルの使い回し方、良いですね。
このようにズバッと本質を突くキャラが一人居るとお話の筋道がブレません。
私の章ではアリスがその役回りでした。
でも師匠でなく、オトモと言う立場から主人を思うランマルの言葉にはベテランと言うだけでは無い説得力が感じられます。
良いキャラを手に入れましたねぇ。
羨ましい限り。
アバター
2011/08/04 23:16
>お読みになる皆さまへ
あと、今日ずっと考えていたのですが、細かい所をあちこち修正(訂正)いたします。
グロムとミーラルのハンターランクは、やっぱり2にします。
3になるためには、どうしても「奴」が立ちはだかってしまうので…。ペイントボールを外したエピと矛盾してしまうんです。

それと、渓流の廃村の説明で、滅んだ理由が間違っていたので、ここも訂正しました。
先日ハンターランク6になったんですが、村人の話で、なぜあそこの村が滅んだのか理由がほのめかされていたので…。間違っていたので、直しました。

勉強不足、恥ずかしいですが、何卒ご容赦くださいませ。
アバター
2011/08/04 23:16
まぷこさん、コメント感謝です。

はい、ご予想の通りです^^;
ここは一気に読むべきシーンなんですが、字数の関係で「つづく」になっちゃいました。
2000字以内に1話って難しいです…。
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2011/08/04 17:17
ミランダさんが旦那さんの事を語る時の言葉が過去形なのは、もしかして……



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