モンスターハンター 勇気の証明~三章-19
- カテゴリ:自作小説
- 2011/08/05 09:23:08
【ミランダの過去】
ジエン・モーランは、全長百メートルを超える、超大型モンスターだ。
長く前に伸びた牙を持つクジラのような見た目をしていて、季節風が吹く頃に、砂漠の海に現れる。
主食は砂の中の有機物だ。口から大量の砂を吸い込み、噴気孔から吐き出して生きている。
だがその巨体のため、吐き出した砂や巻き起こした流れが、広大な範囲で影響を及ぼしてしまうのだ。
砂上船と呼ばれる砂の海を行く船が、ジエンの起こした砂津波で転覆、最悪の場合、沈められることもある。
当然ながら、その巨体が街へ直撃した場合の被害は、いうまでもない。
しかし、背中には鉱山でもめったに採れない貴重な鉱物が付着しているのと、ジエン自体の出す素材が貴重な資源のため、人間達にとってはまたとない獲物なのである。
「ジエンの回遊ルート上にあるロックラックは、シーズンが来ると大きな祭りになるんだ。ジエンがもたらす被害は大きいが、勝利すれば同じくらいの富も与えてくれる。だから、奴は破壊と繁栄の象徴と呼ばれているんだ」
腹の上で組み合わせた両手に見るともなく目を落とし、ミランダは言った。
「ジエンを狩る船――撃龍船に乗る者は、男の中の男と呼ばれていてねえ。あたしの旦那も、名うての撃龍船乗りだった。ジエンに挑み、無事に帰ってくる者はほんの一握りだが、旦那は、いつもたくさんの土産を持って帰って来た。…あたしの誇りだったよ」
でも、とミランダは、力なく声を落とす。
「その年に来たジエンは、例年にない年を経た個体だった。モンスターは、長く生きれば生きるほど強さを増すのは知っているだろう?」
三人はうなずいた。モンスターにも寿命はあるが、人間と同じで成長の度合いというものがあり、若い個体と熟年の個体がいる。
モンスターの年齢は外見ではほとんど区別できないため、判断を誤って返り討ちにあったハンターも多い。
そのためギルドでは、事前に標的を調査して強さの度合いを測り、上位と下位に仕事を分けて、ハンター達が不用意に命を落とすことのないよう配慮している。
「撃龍船は、普通は仲間と組んで乗りこむものだけど、旦那は、オトモを2匹連れただけで砂の海に出ていたもんだ。あの人は、自分の力だけで狩りをすることを信条にしていたから」
「…ミランダさん…」
だんだん、ユッカ達にも事情が呑みこめてきた。ユッカは、そっと隣を窺った。黙って聞いているランマルの横顔は、いつになく固かった。
「…そのジエンは、かつてないほどの大きさと強さを持っていた。しかも最悪なことに、奴の通り道の真上にロックラックがあってねえ。ギルドは全力をあげて奴の撃退を要請したんだ」
峯山龍狩りは命の危険も大きいが、その分報酬がとてつもなく高い。そのため、知らせが出ると世界各地からハンターたちがロックラックに集まってくる。
その当時は、腕利きや山師合わせて、およそ千人ほどのハンターがつどった。
「…けれど、生き残ったのはわずか二百人ほどだった…。彼らの犠牲で、なんとか街は直撃を免れた。けど、ジエンが起こした砂津波で、街の三分の一が大打撃を受けたんだ。…あたしがやっていた店も、砂の中に埋まっちまったよ」
浅黒く日に焼けたミランダの顔色が蒼白になる。組んだ両手に力がこもり、関節が白く染まった。ランマルが、そっと猫の手をその上に載せた。
「もういいニャ…。旦那様、もういいニャ…」
「…ありがとう、ランマル。お前は優しいね」
ふっと力を抜き、ミランダは淡く微笑んで彼の頭を撫でた。そして、悲痛な目で見つめるユッカ達を見渡す。
「もう、気づいたと思うけど…。そう、あたしの旦那も、ジエンに挑んで命を落としたんだ。最後まで奴の背中に乗って戦っていたそうだが、振り落とされて、それっきり。船は体当たりで大破してね。ランマルは端材につかまって砂に呑まれずにすんだけれど、かわりに、目の前で仲間のアイルーを失った…」
ユッカ達はうつむいた。モンスターに挑むことへの恐ろしさを、改めて突きつけられた気がした。
「…それで、仇を討つために、ミランダさんもハンターになったんですか?」
泣きそうになりながら、ユッカは尋ねた。ああ、と低くミランダは答える。厚めの唇が、苦い笑みを刻んだ。
「半年、抜け殻になってて…、同じようにぼんやりしていたランマルを見ていたら、この子のためにも、あたしはハンターになった方がいいと思ってね。ランマルも、仇を討ちたいだろうし…。いや、本音を言えば、やけっぱちだったのもある」
「…わたし、ミランダさんはハンターを楽しんでいたのかと思ってた…。出逢った夜だって、自然を見るのが楽しいって言ってたし…」
「…動機がなんであれ、5年も続けていれば、馴染もうと努力はするよ。仕事の良さ探し、みたいなものかね」
街をそこに作った人間が悪いのか、障害物(街)があるのに避けないモンスターが悪いのか…。
なんて、どっちに否があるか問うのは、ナンセンスなんですよね。
どっちもただ、生きている。生きるための殺生は仕方のないことで…、それが世界の摂理ですからね^^;
狩ることで、モンスターと共存。確かにそうですね。
ギルドの受付の女性って、実はモンスターや生物学にすごい博識だそうですね。ギルドに勤めている人はみんな、学者並みに知識のある人なんでしょう。
モンスターは人を襲うから、どうしても抵抗しないとならない。でも、素材目的で乱獲され、絶滅に瀕したモンスターもいる。生態系がくずれると自然も壊れるので、誰かが乱獲を止めないといけない。
ギルドは、自然の監視者なのかもしれませんね。
まあ、環境テロリストはいけませんが^^;
彼ら自体は人間に危害を与えようとしているわけでは無く、彼らの通る方向にたまたま街ができていただけなんです。
台風の進路にたまたま都市があり、被害が出てしまうのと一緒。
だからと言って人は何もしないわけではありませんよね。
突風に備え窓を補強し、停電に備えて蝋燭を準備する。
抵抗する方法は異なりますが同じなのです。
ゲーム中でギルドがモンスターの個体数を調査し、絶滅などしないように狩りを制限していると言う話がありました。
ギルドはモンスターも自然の一部として共存を目的としているのではないかと。
逆に以前読んだモンハンノベルで、行き過ぎた環境保護団体(グリー○ピースみたいな)が飛竜の保護を訴え、ハンターに詰め寄ると言うシーンが描かれていました。
何事も行き過ぎはいけませんよねぇ……。
そうそう、男のロマンなんですよw
ジエン狩りは、音楽も操作も燃えますよ~。例えるならマグロ釣り漁船くらいか?(笑)
ジエンの食べ物は地味なんですよね。みみずと同じ、確かにww
ゲーム内でもジエンについて言ってますが、彼ら自体は、ある意味、悪じゃないんです。
でも台風と同じで、近くに来ると災害が起きてしまう。だから駆除する…みたいな理由がありました。
(文中にある通り、素材も大変魅力的だから、というのもあります)
猛獣扱いの例えは正解だと思います。
説明書には、「モンスターは人間を狩りの対象としか見ていないので、バンバン狩ってよし」みたいなことが書かれてあります。
原始時代のような世界観です。仰る通り、双方、食うか食われるか。
実際にゲームするとわかりますが、モンスターも必死ですよ。生き残るために。
もちろん、俺らも死にたくないから頑張る。
勧善懲悪はありませんね。かといって、倫理観を押しつけるとゲームがつまらなくなる^^;
けれど小説では、その辺も書けたらいいなと思います。
じゃあジエンを狩るのは男の中の男なんだろうな~って思ったら、やっぱりですか。^^
海はねぇ、やっぱり男の世界のイメージが強いんですよねぇ。
でもジエンの主食はミミズと同じなんですね。そこが何とも…。www
何だかこの回の話って、昔の狼VS人間の生存競争のようで興味深いですねぇ。
どこの国でも狼って害獣扱いされて、駆逐されちゃったじゃないですか。
モンハンでも、モンスターは現実の世界の肉食獣と同じような扱いなんでしょうね。
生きるのに必死で、どっちが悪いって単純な問題じゃないんですよね~。
難しい問題だわ…。
トライでは当てづらい槍だったんですか~^^;
スイッチ押しちゃう人の気持ち、わかります。俺も初戦で間違って押して失敗しましたww
撃龍槍、当てるタイミングをたまに間違って、自分もダメージ喰らう事があります。★多めのクエだと、それで即死したことがあったなあ。
ジエンの上位素材が欲しいんですが、配信クエでは、俺ひとりじゃ無理そうです。
決戦ステージの音楽は燃えますよね! 俺は闘技場の演習クエでかかる曲も好きですがw
2も面白そうですね~。いつかやってみたいです^^
あ、決戦ステージの船は、壊れてなかったんですね。砂に埋もれてるだけだったのか。
槍や銅鑼の機能は生きてるけど、船を動かすエンジンとかは壊れてるんだと思いました。
確かに、全部壊れるとクエ失敗ですね。おっしゃる意見の方が正しいようです^^
ミランダの過去設定は、お察しの通り、この後の大きな章への伏線です。
この三章も、あと少しで終わります。そしたら、またイカズチさんの章へバトンタッチですね^^
PSPでは当たり易くなりましたが、3以前のバージョンでは結構ヒットさせるのが難しかったですよ。
特に知らないメンバーが居ると『ナニ? これ』といきなりスイッチを押しちゃうもんだから……。
(撃龍槍は一度使うと再装填に時間がかかる)
2のラオ○ャンロン戦では城に装備されていたのですが、城のステージになると音楽がメインテーマに変わるのです。
ジェン戦でも決戦ステージで撃龍槍を使うと音楽が変わりますよね。
おおお~燃えぇぇぇ!
ちなみに蒼雪さんは撃龍船が大破していると見られましたが、撃龍船が壊れるとクエスト失敗ですし、ジェンの体力が一定以下になるとステージが変わるので、『ジェンが高速で泳げなくなったから停船して迎え撃つ』と考えた方が自然ではないでしょうか。
ミランダの過去設定、良いですね。
これを受けて……と考えさせて頂きます。
まぷこさんって、モンハン3プレイされたことおありですか?
プレイ動画でも見られますが、あれ…自動操縦っぽいんですよww
勝手にずーっと走ってます。見た目帆掛け舟なんですが、エンジンがあるらしくて。巨大なカラクリ槍も搭載されていて、なかなかハイテクです。
船室は、ベッドがあるきりで、洗濯ものとか干されていて、小さい漁船みたいな雰囲気が出ていますw
でも、舵取りは人間かアイルーがやらないとダメでしょうね、当然ながら。
ジエンは、ほぼまっすぐ砂を泳いでいるので、それに合わせて船を走らせているように見えますね。
だからなのか、ジエンにとどめを刺すステージでは、船はキャンプの近くで大破しています。勝手に走らせていたから、どこかに突っ込んで壊れたように見えるんですが…^^;
そうだったんですよ…(;д;)
この設定は、決して後付けじゃなくて、ユッカ編を考えた当初から温めていたアイデアです。
ちょっと重い展開ですが、モンハン世界の現実問題として、ありうる話だと思ったので。
実際、村とか滅ぼされたケースもありますし。
ハントしている間の船の操縦って、だれがやってるんでしょう?
……アイルー?
それともこれは訊いてはいけないこと?
ミランダさんのオンナぶりの良さが、倍増しました。