モンスターハンター 勇気の証明~三章-20
- カテゴリ:自作小説
- 2011/08/06 15:21:17
【心、託されて】
でも、向いてなかったんだ。
ミランダは、もう何度目か知れない微苦笑を浮かべた。本当は、泣こうとしているのかもしれない。
「旦那の真似してハンターになったけれど、あたしには戦いのセンスがなかったようだ。あたしより若い子が昇級していく中で、ずっとランク2をうろうろしているんだから。それでも、いつかジエンを倒したくて、自分を信じて頑張って来たけど…。どうやら限界みたいだ…」
「そんな…! ミランダさんは、強いです! あのジンオウガだって追い払ったし、ナルガも追いつめていたじゃないですか」
ユッカはミランダのベッドに身を乗り出していた。間近に見つめてくる小さな顔に、ミランダは小さく吹き出す。
「そんな偉いもんじゃないよ。あたしは凄腕なんかじゃない」
「そんなことないです! 戦ってるミランダさん、すごくカッコよかったです!」
「…ありがとう、ユッカ」
ミランダは、まるで母親のような眼差しでユッカの髪を撫でた。
「…さっきは、ごめんね。ずっと看病してくれていたのに、怖い顔しちゃって。お礼も言わず、医者呼んでこい、なんてさ」
「そんなことないです。だって…悪いのはわたし達だったし…」
しょげかえるユッカに、ミランダは静かにかぶりを振った。
「…あのことは、誰のせいでもないよ。ただ、多少なりともショックではあったけれど。あのナルガを倒せば、初めての昇級試験が受けられるはずだったから」
「え…」
ユッカ達は青ざめた。上位モンスターに挑み高給を得るためには、ハンターランクを上げる必要がある。しかし試験を受けるには、いくつもの難度の高い仕事をこなさなければならないのだ。
ハンターの人生を決めるといっても過言ではない、そんな大事なチャンスを自分たちがふいにしてしまったなんて。
「すみませんっ! 俺達の勝手な行動のせいで、こんなことに…!」
グロムが、床に着くんじゃないかという勢いで頭を下げる。ミーラルとユッカも続いた。
「ごめんなさい…!」
「…今さら謝ったって遅いニャ! 今まで旦那様がどんな思いで狩ってきたか、わかって言ってるニャか!」
「やめな、ランマル」
ここぞとばかりに憤慨するランマルを、ミランダは片手で制した。
「…三人とも、頭を上げな。もう済んだことだ。それに、実際にジンオウガと戦って、あたしは自分の実力がわかっちまったから…」
ジンオウガの狩猟は、ランク3昇級テストになっている。つまり、遅かれ早かれ、ミランダは奴と戦う運命だったのだ。
「実力がないなんて、そんなことないです…! あの時は、条件が悪かっただけだと思います。ちゃんと装備を整えて、敵のことも研究していけば…!」
「ありがとう、美人さん。…でもね、無理なんだよ」
ひたむきな目で前に出たミーラルに、ミランダは落ち着いた声で言った。
「あたしは、もう、ハンターを続けることはできない。…足を、やられちまったからね」
「足を…?」
ユッカは耳を疑った。思わず毛布の下に隠れたミランダの足を見る。
ミランダは表情のない面ざしで、自分の右の腿に手を置いた。
「ジンオウガにのしかかられた時、ちょっと悪い折れ方をしたみたいでね。歩くまでには回復するようだが、狩りはもう、無理だって。…医者がそう言っていた」
「そんな…!」
ユッカは口元を両手で覆い、ミーラルは唇を噛み、グロムは歯を食いしばってうつむいた。
「…自分を責めないでおくれね」
三人が謝罪の言葉を口にする前に、きっぱりとミーラルは言った。
「あんた達はまだ、子供だ。失敗は誰にでもある。それに、これはあたしが招いた結果でもある。誰を責めるとか、そういうのは、よそう」
「…でも、旦那様はこれからどうするニャ…」
「…ユッカ」
ランマルの問いには答えず、ミランダは、ほかでもないユッカをまっすぐに見すえた。
「…あんた、あたしの代わりに、いつかあいつを…ジンオウガを倒しちゃくれないか」
「ええっ?!」
突然の頼みに、三人はすっとんきょうな声を上げていた。ユッカは、慌ててかぶりを振る。
「そんな、無理ですっ! わたしだって、きっとハンターに向いてないもん…!」
しかし、ミランダはユッカから視線を外さなかった。
「いいや。あんた、あたしより素質があるよ。あたしは、人を見る目はあると思ってる。あんたはきっと、良いハンターになれる」
「どうしてそう思うんですか?」
不安そうにユッカが見つめ返すと、ミランダは微笑んだ。
「…優しいからさ」
「え…?」
「優しい者は、オトモを大事にするし、仲間をよく助ける。それに、勇気がある。考えの切り替えも早い。またとない逸材だと思うけどね」
「そりゃ、買いかぶりすぎじゃあ…」
「おや。兄貴の言うことじゃないねえ。それとも、妹に先を越されるのが怖いの?」
「ち、違いますよ!」
「どうだか…。確かにお前より、頼りになりそうだけど?」
必死に弁明しかけたグロムに、ミーラルがちらりと横目を使った。
「ミーラルゥ~!」
あ、そうなんですね!ww
要は、どのくらい信頼関係を築けているかなんですね~。
つか、相方さんおちゃめですね。うははwwwかわいいです~(^m^)
水を差すようで申し訳ないんですが、渡したオトモが全て元の主人を敬愛しているわけでは無く、なつき度の低いうちに渡したアイルーは元の主人をバカにした台詞も吐きます。
ある日、相方がクスクス笑ってるので何かと思いPSPを覗いてみると
「元の御主人はガンランスばっかり使ってたニャ」
「成績から言うと結構ヘタレだったニャ。今の方が居心地がいいニャ」
みたいな事を言ってました。
解雇したろかぁ!
ファイブスター物語とは、お詳しいですね!
名前だけなら知ってます。昔、有名でしたね。アニメ誌にも良く載っていたような。
ファティマを意識したわけじゃないんですが、執筆にあたってイカズチさんと打ち合わせした際に、
「オトモアイルーは非常に元の主人を敬愛している」という話が出たんです。
アイルーを雇うと「初代旦那さん」として、ステータスにプレイヤーの名前がつくんです。
この名前は一生消えなくて、配信でよその人に譲っても、ずっと残ります。
さらに、譲られたアイルーは、次の主人(プレイヤー)になつくまで時間がかかるそうなんです。
しかも、前の主人を恋しがるあまり、現在の主人をないがしろにするようなセリフを言うとか^^;
ユッカ編では、オトモとの交流を書きたいと思ったんです。
が、初めから仲良しじゃなくて、なんかドラマチックなやり取りが欲しいと思いまして。
イカズチさんとのやり取りも踏まえ、こうなりました。
ゲームでのアイルーは勝手に戦っているので、参謀とまではいかず…。
もちろん、指示が出せないので、優秀な部下とも言えず…w
レベル20(最高)にしても、あっけなくやられてしまいます。
でもリアルに考えたら、参謀役や隊長的な渋いアイルーもいると思うんですよ。
彼らは子供みたいな雰囲気だけど、しゃべるし、賢いですしね。
ランマルはユッカより年上の設定なので、こんなに男前なんですよ。
指導・見守り役ってところでしょうか^^
悲しいけど、これが戦場の掟なんですよねぇ。 (T T;|||)ウウ…
でも、この失敗が次世代に生きてくるなら、偉大な礎になるでしょう!
って、ミランダさんは老兵じゃないし。無礼な。www
今ふっと思ったんですけど、永野護さんのファイブスターストーリーズってマンガ、知ってます?
アイルーって、何だかそのマンガのファティマに似てます。
主人(騎士)は何代も変わっていくんだけど、戦闘の経験はファティマの方が上で、膨大なデータから
その時の戦闘に一番適した戦術をサポートするっていう。
なかなか面白い存在ですね、オトモって。^^
そうです。数奇な運命をもつアイルーなんです(笑)
書いてて、ちょっと十二国記の彼とか、マルドゥックのあのネズミとか、彼らを思い出しました。
忠臣ほど遍歴って多いのかも。
これ以上長引くと、次のイカズチさんの章に行くまでに秋になっちゃうので、今月中には、ユッカ編その1(第三章)は終わらせます。