モンスターハンター 勇気の証明~三章 25
- カテゴリ:自作小説
- 2011/08/11 15:23:50
【反撃】
「お兄ちゃん!」
ユッカはとっさにグロムの元へ駆け寄ろうとした。が、傍らのランマルが鋭く叫ぶ。
「待つニャ! 今は奴の気を逸らすのが先だニャ!」
「――っ!」
ユッカは歯を食いしばり、次の矢をつがえた。ランマルもウルクステッキを手に、巨大な獣へ飛びかかる。
「大丈夫か、グロム!」
「うあ…油断した…」
ユッカ達の牽制でジンオウガの視線が逸れた隙に、ミーラルがグロムを助け起こした。
よろめきながらも立ち上がったグロムは、まだ軽くめまいがあるのか、足元がおぼつかないでいる。
「薬が必要か? 今、生命の粉塵を…」
「いや、いい。そいつは全員やばくなるまで取っておいてくれ」
ミーラルがポーチに手をかけると、グロムはかぶりを振って断った。
「全員やばく、か…そんなのごめんだ」
「俺もだよ」
ミーラルが苦笑すると、グロムも兜の下で笑った。そして、二人はうなずくと、遠くに走り去った敵を追いかける。
「先生、注意が向いたのはいいけど、わたし狙われてる!」
「ここはこらえるニャ! 相手がそのうち息切れするまで頑張るニャ!」
「――くぅっ!」
敵の繰り出す雷球や、凄まじい体当たりの連続に、ユッカとランマルは翻弄されていた。
ジンオウガの最も恐ろしい武器は、放たれる電撃ではない。スピードである。
牛三頭分はあろう巨体が、まさしく電光石火の勢いで跳躍し、鋭い爪のついた前足で襲いかかってくるのは脅威だ。
重装備のグロムでさえ、あの痛手である。ガンナー装備のユッカが受けようものなら、ひとたまりもない。
ユッカは必死になって地面を転がり、走り、ジンオウガから逃げ続けた。
けれど、それにも限界がある。息切れがひどくなり、胸が苦しくなってきた。
(ダメ、もう走れない…!)
ふらふらと足をゆるめて立ち止まり、ユッカは膝に手をついて息を整える。ランマルが叫んだ。
「ユッカ、電撃が来るニャー!」
「――え!?」
見れば、ジンオウガが一度飛び退り、腰を高く持ち上げて唸っている。びりびりと口腔に青白い光を溜めていた。
(来る!)
ジンオウガの放つ雷光球は、さほど早くはない。弾道さえ見切れば当たらない。それまでに、この荒い呼吸と鼓動を静めないと。
走り過ぎてスタミナが切れているのが自分でもわかる。最初の回避が肝心だ。ユッカが緊張に身を堅くした瞬間。
「おおりゃー!」
「せいっ!」
復帰したグロムとミーラルが、駆け寄るなり一斉に敵の無防備な背中を切りつけた。ギャアッと一声鳴いて、ジンオウガは身をのけぞらせる。
「お兄ちゃん、ミーラルさん!」
ユッカが喜びの声をあげると、ふたりはこちらに手を挙げて応えた。
「ユッカは頭を! ミーラルは前足! グロムはシッポを狙うんだニャー!」
ランマルの指示に、ユッカ達はそれぞれ武器を構える。かつて上位ハンターに仕えていたランマルは、ジンオウガと戦うのはこれが初めてではない。
敵の弱点が氷だということや、電撃を軽減し、咆哮を無効化する装備など、その経験から教えてくれたのは彼だ。
(先生がいてくれて、ほんとによかった…!)
溜め撃ちに構え、ユッカは再び曲射を放った。味方に当たらないよう、細心の注意を払って射る。
勘が良いのか、ユッカは先読みが得意だ。相手の行動が出るまでのわずかな時間も見切って当てるのが上手い。
放った矢は、今度も見事に敵の頭上で弾ける。すかさず、ミーラルが前足を、グロムがシッポに斬りかかる。ランマルも大タル爆弾を投げつけ、またもジンオウガは怯んだ。
「効いてるぜェ! こりゃ、楽勝かも!」
「バカ、油断するな!」
グロムが快哉をあげ、ミーラルが叫んだ傍から、ジンオウガが彼に飛びかかった。納刀していなかったのが幸いし、グロムはとっさに大剣でガードする。が、敵の爪の鋭さに、硬い剣の刃がいくつもこぼれた。
「ぐはっ、やべっ…!」
「はああっ!」
ユッカが貫通矢を放つ。休んでいる暇はない。とにかく今は、少しでも多く相手に痛手を与えるのが重要だ。
ミーラルも再び前足を狙って斬りつける。足を狙うのは、狩りの常識だ。モンスターの攻撃手段であると同時に、移動手段でもあるそれを弱体化させるためである。
手数が効くミーラルの剣は、次々とジンオウガの足に切り傷を刻んだ。
「ちょっと俺、研ぎたいんだけど!」
刃こぼれしたグロムの剣は、斬っても斬っても弾かれている。後にするニャ、とランマルが怒鳴った。
「相手が退くまで、とにかく今は、攻めて攻めて攻めまくるニャー!」
「無茶言うな~!」
必死なはずなのに、ランマルとグロムのやりとりが漫才のように聞こえて、ユッカは戦いの最中だというのに、思わず噴き出してしまった。
(…不思議。最初の頃は、あんなに怖かったのに。…みんなと一緒だからかな?)
オトモって微妙な立ち位置ですよね。友達でもないし、ペットともいえない。
プレイヤーのことは「旦那さん」と呼んで尊敬しているかと思いきや、アドバイスがなぜか上から目線w
オトモはオトモ、なんですよね~。
ランマルも、今は先生役ですけど、いずれユッカを主人と崇める日がくるんでしょうね。
まだまだ先の話ですが^^
近接+遠距離の組み合わせがベストだと、どのゲームでも実戦されてますよね。
近接で集中砲火しつつ、遠距離でさらに上乗せ。役割分担がとれたパーティーの戦いは美しいですねw
セレーネおめでとうございます!
強い弓だそうで…。ああ、俺も早くそこまで行きたいなあ。
でも★8クエが強すぎて…。ディアブロス亜種に苦戦中です、;;
桃太郎のおとも、的確な表現かもです。
ベテランのオトモって、新人に配信すると主人より強かったりしますから。
ランマルの場合、頼れる先生なんでしょうね~。
皆さんにパーティーバランスを誉めて頂けるのも、ユッカの参戦があったればこそですね。
ミーラルが半サポートの役回りとは言え、近接二人では全方位攻撃に対処しきれない時もあるでしょうから。
そうそう、私も弓を練習してまして、『月穿ちセレーネ』作りました。
ペットじゃなくてオトモですww
桃太郎が連れて行く、あの手の動物です。家来に近いかもしれませんが、この話だとそうでもないですねw
ありがとうございます^^
強敵相手ではありますが、苦しいだけの戦いの様子だと、ゲームの楽しさが出ないんじゃないかと思いまして…というか、自然とこうなりました。イカズチさんの作ったミーラルとグロムのキャラが、こんな風に動かしてるっていうのもあります。
まあ、今は戦いの序盤なので楽しそうですが、あとあと…でしょうかね?^^;
お盆休み、ゆっくり楽しんできてください^^
すごくいいパーティだ、こんな感じの仲間って素敵です。
う~ん、これからジンオウガとの戦いがどうなるのか・・・
気になるところですが、数日ほどニコタに来れないという;;
次に来る頃には決着がついているかも?楽しみにしてます。
グロムとミーラルは、勝手にこうなりましたね~。
いや、イカズチさんから見せてもらった全体の筋も絡んでいるから、こうなったと言うべきですが。
ちょっと大人っぽくなってますが、まだ15歳なので。最後の文では、くだけた雰囲気になりました。
若いっていいなあw
反面、ランマルは経験がユッカ達より豊富なので、司令塔と化しています。
先達はあらまほしきこと…「何事にも先生はいて良し」
グロムとミーラルにもアリスがいますしね。教えてくれる人って大事ですね。
俺は手探りで始めたから、モンハン日記の出だしが間抜けなことになりましたがww
初心者の頃は猪だったグロムも成長したというか……
うん、『先達はあらまほしきこと』ですね。