続・小料理かっぱの夜
- カテゴリ:自作小説
- 2011/08/22 01:27:25
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喧騒は、決して蒼雪の集中を途切れさせることはなかった。むしろ、賑やかな人の群れの中にいると、自分が埋没するかのような安心感を覚える。
「揚げだし豆腐お待ちのお客様ぁ~!」
「はいはい、こっちですぅ~!」
和やかな声は、女将のそらだ。明るい女性客が賑わう座敷に、盆に載せた料理を運んで行く。
いそいそとした着物姿を見送り、蒼雪は微笑みながら、またカウンターの上に目を落とした。彼のために用意されたビールとおつまみの他に、一冊のノートが拡げられている。
いつもなら、モバイルノートを持ち歩くのだが、この店ではそうしない。店の賑わいに、硬いキーの音はふさわしくないからだ。
ある雨の日に女将と再開して以来、蒼雪はすっかりこの店の常連になっていた。酒の席が苦手な彼だが、ここだけは、不思議と落ち着いた。
そこへ、新たな客が引き戸を開けた。ガラガラという音に、女将のそらが機敏に応対する。
「いらっしゃい。おひとり様で…あらっ? あさみさん?」
「…どうも。お久しぶりです」
淡い紫色をしたスーツ姿の女性は、きりっとした佇まいで会釈を返した。その名を聞いて、蒼雪の肩がびくっと跳ね上がる。
「奇遇ね~! 今、じゅらさんとピュア~さん達も来てるのよ! なんだか同窓会みたいね。今日は、食事で来たの?」
「…いえ。あの…蒼雪さんはいますか? よく、こちらに来られると聞いたので」
「蒼雪君? ええ、いるわよ。ほら、あそこ」
そらが指をさすまでもなく、あさみはカウンターの端っこで、ノートで顔を隠している蒼雪に近づいていた。
「…隠れても無駄です」
「…あ、あさみさん…もう来たんですか」
「もちろん。その約束だったでしょう?」
「なになに~? あっ、あさみしゃんだ~! お久しぶり~!」
「この間の同窓会以来ですね。お久しぶりです」
奥の座敷から、じゅらとピュア~が顔を出し、あさみを見るなり顔をほころばせた。その奥では、酒に弱い櫟が酔い潰れて畳に大の字になっており、彼の隣では、shaneが静かにグラスを傾けている。
「みなさん、お久しぶりですね。…といっても、二か月前のことですけど」
あさみが穏やかな微笑を返す。そして、うつむいている蒼雪の顔を覗き込んだ。
「蒼雪さん。次の作品のプロット、今日提出のはずでしたが?」
「うっ…。すみません、まだ、その、ちょっと…」
「見せて下さい」
「ああ!」
ごまかし笑いで乗り切ろうとする蒼雪から、あさみは華麗にノートを奪い取った。その様子を見て、じゅらとピュア~が顔を見合わせる。
「あさみしゃんって、編集者しゃんだったっけ?」
「そうですよ。結構大手の。大衆小説の編集やってるとか」
「…全然だめですね。これは、編集長に見せられません」
パラパラとノートをめくっていたあさみは、小さく吐息をついて蒼雪に返した。がっくりと、蒼雪は肩を落とす。
「…すみません。まだ、これといって書きたい事が浮かばなくて…」
「それは、わかります。でも、無理やりにでも構想を決めないと、いつまでも先に進みませんよ」
「…わかってます。でも…」
一作目で全力投入してしまった蒼雪は、次に書くべきアイデアを持っていなかった。なんとなく書きたい事はあるのだが、形にならない。そんなこんなで、もうずっと編集であるあさみを待たせてしまっているのだ。
「…私も、焦るなと言いたいのですが…。まずは一冊書いてもらわないと。新人は、書かないと消えてしまいますからね」
「…承知しています」
「まあまあ」
二人のやりとりを横で聞いていた女将のそらが、やんわりと間に入った。
「あさみさんも、そんなにきつく言わないで。蒼雪君だって、それはわかっているわよ。ほらほら、座って」
「あ、あの…私は食べに来たわけじゃ…」
なかば強引に蒼雪の隣の椅子に座らされ、あさみは戸惑った声をあげた。何言ってるの、とそらは笑う。
「ここでは、仕事の話は野暮なのよ。楽しく飲んで、食べなきゃ。適当にみつくろってあげるわね」
「は、はあ…」
女将が厨房に消えると、あさみは困ったように柳の眉を寄せた。蒼雪が苦笑する。
「いいんですか? まだ、そっちは就業時間でしょう?」
「…いえ、いいんです。夕飯もまだだったし、ここでごちそうになって行きます」
「そうですか」
蒼雪が笑った。するとあさみは、やや気恥かしげに目を逸らした。ぽつりと呟くように言う。
「…蒼雪君。頑張ってね。…私、ずっとあなたの書く小説が好きだったから…」
「…はい」
蒼雪は笑った。高校の同級生だったあさみが、自分の編集についた時は驚いたものだ。
これも縁なのか。
「さあさあ、二人とも! こっちにいらっしゃいよ。みんなで楽しみましょう」
そらが、じゅら達の座敷に料理を運びながら言う。
「…行きましょうか」
「はい」
あさみが促し、蒼雪はうなずいた。
なんとなく、自分達の事を書いたら楽しそうだ。そんな気がして、彼は微笑んだ。
了
ありがとうございます!(*^ワ^*)
その褒め言葉、よく言われます。そこが持ち味というか、長所なんでしょうね。
もっと精進いたします^^
こうなったら、いろいろな人を登場させたいです。軸さんもね^^
また、書いてくださいね☆
俺も弱いものでww
女性陣が健啖家で男性陣は…w
このギャップが良いですよね、あははwww
女性陣の方が強いという。。。www
俺、考えがまとまって「書くぞ!」と決心がつくまでが非常に長いんです^^;
これで良いのかな、間違ってないか。いつも迷います。
作文って、列車と同じで走り出したら急に止まれないし、進路変更もできないので。
なので、すぐに次とはいきませんが、また書くことがあったら、楽しいお話にしたいと思っております。
なかなか書かないと思われたら、どうか尻をひっぱたいて急かして下さいwww
膨らんでいく様で 楽しみが 増えそうです
それに、管を巻くと言ってもですね、それは相当カッコよく管を巻くんですよ。
イメージ損なわないので大丈夫ですから!www
とはいえ、まだいつになるか未定ですが^^;
何か笑えるお話が良いですね!
ところで、この男性陣メンバーって、下戸が多いですね…^^;
実際、お酒もあまり飲めないし、管も巻きませんw
まあ、フィクションだから、面白いの書いて下さい^^v
照れますけれど、よろしいですよ~^^
そんなに気に入って頂けて、本当に嬉しいです!ありがとうございます!w
shaneさんが酔っ払ってじゅらさんに管を巻く所、書いてみたくなりましたww
続編はいつになるか分かりませんが、今度はそういうの書いてみたいですねw
よろしでしょか?(人´Θ`♥)♪
そんでもって ☠shane☠さん♪が 酔っ払ったとこ
見たことがないから・・・真実か否かは 不明なりで~っす!ヾ(≧∀≦*)
ちなみに。。。σ(*・Θ・じゅ)あたし♪はっ しゃべりまくってますっ!。。。たぶん!?www
何度も読んで頂いて嬉しいです。ありがとうございます(^∇^)
shaneさんは酔うとおしゃべりになるんですか? それリアでも?www
良いかもしれませんね~ww意外な一面が見えた気がします(^m^)
じゅらさんって、地でもこの可愛い喋り方なんですか?あははw面白いですねw
お読み頂きありがとうございますw(*^∇^*)
今度書くとしたら、何かイベントとかで集まった時に撮影した写真を使って書こうかと思ってます。
その時は、DOLCEさんも登場させてくださいね^^
(*^・ノΘ・)コッチョリ♪。。。☠shane☠さん♪は 酔っ払うと おしゃべりに;・・・って設定が いいかもです!( ´艸`)むぴぴ♪ww
そしてっ σ(*・Θ・じゅ)あたし♪は リアでも擬態語 頻繁に発してます(*σ´θ`)σ у◎~❤ww
(。・w・。 ) ププッ♪
ニコのみんなが登場してるんですね^^
続き…
見たいです><
寡黙でクールなshaneさんが、こんなに長い感想を仰られるなんて!気に入って頂けてすごく嬉しいです!
ありがとうございます~!(*^ワ^*)
キャラのつかみ上手とお褒め頂き嬉しいです^^
でも、俺がすごいのではなくて、皆さんがそれぞれ個性的だから書きやすかったんです^^
原稿用紙5枚程度の短いお話でしたが、こんなに喜んでくれるとは思わず…感無量ですw
すぐに次を書きたい所ですが…ネタが降りてくるまで、しばらくかかりそうです^^;
あ、もし書くとしたら、次はセリフありで重要な役どころに付けたいですねww
すいません、酔っ払いの役で…(=´▽`)ゞwww
櫟さんがお酒に弱い事をふいに思い出し、こうなりました。横のshaneさんとの対比が生きてるでしょw
定期連載はちょっと無理ですが、また何かの機会があったら書きますね~^^
ここだけの出番なのに、こんなに喜んで頂けてほんと嬉しいです。次回作があったら、セリフ出しますねw
あははwとっても気に入って頂けて嬉しいです!ありがとうございます!(☼゜∀`)ノ~~~♡
結構人間観察鋭いでしょ。俺も、皆さんの描写は気に入っています。特に櫟さんがwww
じゅらさんのセリフは、書いていてすごく照れましたww
こうして仲間と集まる会、実現できたら楽しいだろうなあ~^^
次回作は未定ですが、なんかの拍子に書くかも? たぶん^^;
そこは、前回の「小料理かっぱの夜」をどうぞ☆
大人の淡い恋愛が語られておりますのでww
いえいえ、お礼はあさみさんに言ってください^^
あさみさんのリクエストがなければ、永遠に書かなかったと思うのでwww
またこの設定もどうかと思いましたが、皆さん喜んでいただけて嬉しいです。
何かネタが降りてきたら、書くかもしれません(^m^)w
時々集まるメンバーを登場させてみましたw
お気に召して頂けて何よりです~w(^∇^)
櫟さんが酔って寝ているのは、以前俺に「酒がめちゃくちゃ弱い」と教えてくれたからです。
そういう面白い事はちゃんと覚えるタチなので、皆さんもうっかりしていると書かれますよww
あははww(´ェ`*)
確かに、連ドラみたいですよね。朝の連続テレビ小説とか、TBS系のw
続編はどうなるかわかりませんが、何かの拍子で俺と関わった人が登場するかもしれません。
ゆめさんも出るかも?^^
はい、実在の人物のフィクションですw
照れてるの伝わりましたか? 著者の俺が照れながら書いていたので、そういうの投入されてしまいましたねww(○´▽`)
じゅらさんとピュア~さん登場にさらに、にやけw、いっちゃんの大の字で
思い切り笑い、その後自分の名前見つけて、恥かしくなりましたww
それにしても、あさみさんといい、いっちゃんといい、みんなのキャラを
ちゃんと分かってますよね!実際にはあった事がないのに素晴らしい!^^
写真には写ってないのに
じゅらさん&ピュア~さんコンビが奥でワイワイやってるのも、想像できました^^
とても面白かったです。
出演させてもらえて光栄です。
次回もワンカット、セリフナシでお願いしますwww
「あぁ~いいなぁ~」って思ってたら・・・
酔い潰れてましたwww
憧れの「蒼雪小説」に登場出来て、夢のようです
ありがとうございます^^
僕も 定期連載希望です!
あさみさんって すっごくまじめそうに 見えるんだけどね
ほんとは 意外に気さくで おもしろそって ちゃんと見抜いてるところも
さっすがだなぁ~って 思っちゃいました(*σ´θ`)σ у◎~❤
いっちゃんっっ!大の字っっ!!!!!。゚(*゚´Θ`゚)゚ノ彡☆プヒャヒャヒャ♪
なんだか そのまんまっ・・・リアルでも存在してそうっっ!ヾ(≧∀≦*)
それぞれの人間性?ってのも ほんとよく捉えてて おっもちろぃ~ぃっっ♪(。・‿‿・。)ぷぷ♪
いつか こんな同窓会 実現できたらなぁぁぁぁ~っ!
ぜひぜひっ。。。そんな日 来ますように。。。(人´Θ`♥)♪
あぁぁぁ。。。おもしろくて 何度も 読み返しちゃったどぉ~っ!www
PS.この際 この登場人物たちで また・・・よろしくねぇ~っ♥(人´Θ`✿)♪ww
!……何を?
蒼雪さん、ありがと~~~~
もうこれでおしまいって言っていたので、半ばあきらめていたんです。
みんな出演していて、うれしいな~~~
こんな感じで、と~~きどきでいいから、連続番組になってくれると楽しいんだけど!
ね、ね。
人生、楽しみましょう(^o^)/
名前見つけて嬉しかったです^^
酔いつぶれてるイッちゃんwww
フィクションだけれど ノンフィクションみたいです^^
東海テレビの昼ドラみたいw^^
このままドラマ化を目指しちゃってもイケそうやんw^^
フィクションなんやぁー
すごいすごい。
ノンフィクションかと おもったw
なんか テレてるのとか 伝わってきたw ( ´艸`)w
その前に、大変お待たせしてしまい、申し訳ありません^^;
あさみさんに合うような設定をいろいろ考えて迷っていたのですが、結局ここに落ち着きました。
蒼雪視点で書かせて頂きましたが、お気に召して頂けたようで嬉しいです。
断りなく皆さんも出してしまいましたが、雰囲気壊してないかドキドキものでしたww
またこの設定で書きたいなあと、自分でも思っております。(了ってつけちゃったけど)
機会があったら、また書かせてください^^
私の名前を 文中に 見つけて 心臓が ピクンと 跳ね上りました。
皆さんも 登場させて 頂いて 和気合い合いの
状況が 目に見える様です。
十分 楽しませて 貰えました。
シリーズ物にされたら 良いのでは、、、、などと
想像を 膨らませています
とても 嬉しいです。 こういう風に 出演できたのは、初めての経験です。
又 居酒屋 かっぱさんで お会いしたいです(笑)
身内を実際にモデルにして書くのは、かなり照れます^^;
ほかにも、断りなく登場させてしまった方々がおります。この場にて、ご理解とお許しを…。
楽しんで頂けたら幸いです。