Nicotto Town ニコッとタウン

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月の雫のティールーム 8 ~陽炎の夢~

 わたしはね。もう随分長くこの街に棲んでる。こんなに沢山のヒトはいなかった、もっと小さな街だった頃から、ずっとね。変わっていく街並みを眺めてきた。いろんなヒトの『島』を巡って、渡ってきた。
 前はね、もっと『仲間』も居たわ。気まぐれにあちこちの『島』を覗いては移る暮らしをしていても、時々は同じようにして棲んでいる『ヒトではない住人』と顔を合わせて。話をしたり、お茶を飲んだりしていた。
 でもね。ヒトが増えて、街が大きくなって、『島』が増えたらその分だけ出逢う確率は下がった。ヒトが増えるほどには、わたしたちみたいな住人は増えなかったのかもね。
 ううん、むしろ。減っていったのかもしれない。

 大勢のヒトが集まる街に、わたしは行かなくなった。入れ替わり立ち代わり、現れては消える人影、飛び交う会話。わたしにはあまりにめまぐるしく映り、そして何より――孤独が募った。
 大きくなった街に、それ以上に増えたヒトたちがひしめいて、賑やかで、だ け ど 誰 に も 触 れ ら れ な い 。
 ヒトが多ければ多いほど、わたしは独りぼっちだった。

 わたしは『島』を巡り続けた。今度『誰か』に逢えたなら、もうそこから動かず暮らそう。そう思って、次々に『島』を渡った。
 だけど『島』は加速度的に増えていった。何千、何万の勢いに、とても追いつけやしない。出逢える確率なんて、きっともう天文学的に低くなってた。
 わたしは諦めた。適当に目に付いた『島』に留まって、そこで過ごす事にした。

 何ヶ月、独りの時を遣り過ごしたかしら。毎晩のお茶に入れる月明かりの雫が立てる澄んだ音だけが、ささやかな慰めだった。それでも、淋しくて。声を失くしてしまいそうで、自分の声すら忘れそうで。誰にも届かないと知りながら、わたしは時折言葉を紡いだ。
 そうして。
 虚空に消えるだけだった筈の言葉に、ある時、返事が貰えたの。吃驚した。嬉しかった。
 嬉しかった。

 その『島』に住むヒトと、話ができるようになって。暫くは本当に楽しかった。本当に、夢みたいに。
 だけど、ヒトは忙しくて。だんだんと、話ができる日は減っていった。届かなくなる声。それは、わたしそのものの消滅のような気がした。わたしの姿は、ヒトには見えないのだから。
 怖くて、とても怖くて。わたしは、祈るように――いいえ、心からの祈りを捧げながら。夏が来るのを待った。夏に、この時季だけに、この街でだけ見られるひかり。その中でも更に特別な、蒼いホタルと蒼い花火。それを待っていた。
 アナタは、知らなかった? 蒼い花火の粉を浴びた、蒼いホタルの光。それを、月明かりの雫に閉じ込めるの。そうすると、ほんの少しだけ、陽炎のようにゆらゆらと不確かにではあるけれど、わたしたちの姿がヒトの目にも映るようになる。
 そうして、ね。その人が、この姿を見付けて、名前を呼んでくれたなら。そうしたら、魔法を得られるの。望んだ時に、ヒトの目にも届く姿を得られるようになるの。

 忙しくっても。時々しか、来られなくなっても。それでも、わたしの姿があの人に届いたなら、この存在を忘れずにいてくれる、って。だから、どうか。って。祈ってたの。
 だけど。
 だけど、間に合ってくれなかった。
 あの人は、ほとんど来なくなっていた。忙しいのか。飽きてしまったのか。もう、ここへ、来なくなった。
 それでも、ひょっとしたら、って。諦められなくて、わたしは久しぶりに他の『島』へ足を運んだ。ホタルソウと、花火華と。その両方に蒼い花を咲かせている『島』を探した。
 蒼いその光を、月明かりの雫に留めておけるのは一晩だけ。ホタルも花火も夜にしか見られないように、『それ』もまた朝には消えてしまう。毎晩、『島』を巡って、蒼い光を捕まえて。

 一度、ね。一度だけ、あの人が『島』に来て。
 だけど。
 だけどね。
 魔法は、かからなかったの。
 あの人はもう耳を澄ましてはくれなかった。陽炎のように揺らめく儚さでは、この姿に気付いてはくれなかった。
 ほんの数分、忙しく何かを確認して、あの人は帰ってしまった。
 消えてしまった。

 あの『島』に、夏は来なかった。
 今も、あそこでは。枯れる事のない花が、空々しく春を装っているの。
 きっともう、ずっと。



*****
新キャラ独白。
まさかこのシリーズがこんなシリアス展開になろうとは(←

前回分と続けて書き上げていたのですが、うっかり日を空けてしまいました;
もうニコタは秋だよ!←
そして続きはまだ書いてないので、また先になる予感orz

#日記広場:自作小説

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2011/09/05 01:20
>herb teaさん 
コメントありがとうございます!

この展開は、私自身がリアルや他所での活動に忙しく、ニコの話を長く書けずにいた事から生まれたものだったりします^^;
彼女の現在は、ニコにも起こり得る未来。そんな事も考えつつ、この先を思案中です。
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2011/09/04 21:54
オッドアイの女の子・・・

悲しいです><

ニコと会えて良かったです~




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