モンスターハンター 勇気の証明~五章 01
- カテゴリ:自作小説
- 2011/09/14 00:05:44
【男とは】
ひとり寂しく飲む夜は
せめて雨でも降ればいい
酒の肴がないのなら
雨だれの音を友にしよう
物悲しいメタルバグパイプの音が流れている。客のほとんど帰った酒場の片隅で奏でているのは、流しの『笛吹き』だ。
普段は狩猟笛を使うハンターとして生計を立てるが、音楽好きの彼らは、こうして酒場などで自前の曲を披露する事がある。
「……女将、酒!」
どん、とやけっぱちな音を立てて、ごついジョッキがカウンターの上に置かれる。古ぼけた木の板の上に顔を伏せた男は、首筋まで真っ赤に染まっていた。
ミランダは呆れたように、カウンターの向こう側から客を覗き込んだ。
ジンオウガと対決して足を負傷し、ハンター生命を絶たれた彼女は、ここユクモ村の唯一の酒場『狩りの友』で、やとわれ女将として暮らしている。
ロックラック出身の彼女が作るスパイスたっぷりの料理が評判で、毎晩店は客足が途絶えることはない。
行き場を失った彼女に、新たな居場所をくれた心優しきユクモ村の人々を、ミランダは第二の故郷として愛し始めている。
そんな穏やかな生活の中で、この異邦人の客だけは、どうにもミランダの気持ちを落ち着かなくさせる。
穏やかな温泉村の中で、この男だけは異質だった。
かつてドスファンゴを蹴り一発で気絶させ、上位の要注意モンスターでさえ半分の力でひねりつぶしたという、伝説のハンターである。
しかし、今はその栄光の見る影もない。前線に出ることもなく、村の片隅でほそぼそと訓練所を開いて生計を立てている。
この男の名を知る者はない。人は皆、こう呼ぶ。
教官、と。
「女将、酒……うっぷ」
「もうその辺にしときな」
空になったジョッキを手から取りあげるのは簡単だった。カウンターにつっぷした教官は、半分夢うつつの状態だった。ミランダは、溜息をついた。
「……毎晩毎晩、そんなに無茶な飲み方をして。いつか、身体壊すよ」
「心配には及ばず!……ひっく、こう見えても我輩は、ラオシャンロンをソロ五分針で倒したことがあ……あ……」
「ちょ、ちょいと!」
いつもの他愛ない与太話が始まるかと思いきや、教官が頬をリスのようにふくらませて一点を凝視し始めたので、ミランダは慌ててカウンターの下から洗面器を出した。彼の顔の前に差し出した途端、うげえええっ、という、耳を覆いたくなるような声が響く。
酒場につきものとはいえ、そう毎日お目にかかりたいものではない。
ミランダはカウンターを出ると、教官が胃の中の物を吐き終わるまで、黙って背中をさすりつづけた。
「……す、すまん、女将……」
「謝るんなら、最初から無茶飲みするんじゃないよ」
嘔吐したものを片付けるミランダの背中に、教官がかすれた声で謝る。ミランダは苦笑すると、口直しに冷たい水をコップに入れて差し出した。
「……いったい、どうしたんだい。ここんとこ、ずいぶん飲むじゃないか。あんた、前からそうだったの?」
カウンターに肘をついて、ミランダは尋ねる。コップに髭面をうずめるようにして、教官はお冷をすすった。
「……最近、不安なのだ。我輩の人生、このまま終わっていいのかとな。かつては世界を駆けまわり、ありとあらゆるモンスターを狩った……。ひとかどの栄光も手にした。だが、今となっては……」
「そういや、あんた借金があるんだってね。二十億ゼニ―だっけ?」
「ぶふうっ!」
無造作なミランダのひと言に、教官は派手に口に含んだ水を吹き出した。きったないねえ、とミランダは眉を寄せながらカウンターに散ったしぶきを布巾で拭く。
「あたしもロックラックにいたからね。あんたのことは知ってるよ。達人ビールで大儲けしたけど、悪徳業者にだまされて、一夜で無一文になった伝説の男」
「やっ、やめろぉー!」
わっと教官は泣き伏した。かつてロックラックに十億ゼニ―の大豪邸を建て、左うちわで暮らしていけると思ったのもつかの間。悪徳業者にだまされてビールの特許権まで奪われ、豪邸と工場あわせて倍近くの借金を背負ってしまったのだ。
砂の街だけに、まさに砂の城であった。
「言うなぁ、言わないでくれぇー」
「……後悔するなら、なんでこんな所にくすぶってるのさ」
おいおいと泣く教官は、まるで子供のようだ。ミランダは思わず頭を撫でてやりたくなったが、さすがにそれはやめておいた。
「ラオシャンロンをソロで倒せるくらいなら、アカムトルムでも狩りに行ったらどうだい」
「……それができるなら苦労はしない」
ぴたりと泣きやみ、教官はつっぷしたまま言った。
「行けるものなら行きたいさ! ああ行きたいですとも! だが、我輩にはかわいい教え子達がおる! あやつらを放ったままでは……」
「あ~、腹減った~!」
夜遅くだというのに、酒場のドアが開いた。ぞろぞろとやってきたのはグロム達だ。
狩りを終えて今、村に戻って来たのだろう。
俺は前作やってないので、教官の達人ビール借金のてん末を知らないのですが、ウィキに10億z豪邸を建てたとあったので…。
そんなにすごい数字とは知りませんでした。あのアカムをもってしても、まだ足りないとはww
俺だったら世を儚みますね…;;
オリジナル小説なので、そのあたりはこちらの想像で変えていこうと思います。
あらかた予想されちゃうかもしれませんが(笑)、楽しみにしてくださると嬉しいです。がんばります^^
こんなとこで何してらっしゃるんですか・・・。
達人ビール・・・できるなら私が全ての素材売り払って購入したのに^^;
アカム1頭が10万zくらい・・・ゲーム内での所持金のカンストが999万z・・・
考えると、途方もない金額、もう絶望的です・・・
果たしてこれからどうなるのか、
第5章、頑張って下さい
教官も種類があって、おなじみの彼は2からだそうで?
前作はやったことないんですが、このずれた熱血漢、お気に入りになっちゃいましたww
ギリギリアイルー村ってアニメでも、良い味出してました。
こいつは自分で動かしてみたい、と思った次第です。期待を裏切らないよう頑張ります^^;
季節の変わり目、なんとか乗り切りました。
あとは、モチベーション下げずに書ききるのみですw
応援ありがとうございます^^
新章では教官が活躍するのですか??
実は凄腕ハンターだったんですね、忘れてましたよすっかり^_^;
次が楽しみになる書き出しで、もうわくわくしちゃいます
リア生活に執筆に狩りにと忙しそうですが 季節の変わり目
どうぞご自愛くださいませ~
出たとこ勝負の第5章、ついに始まりました^^;
今回はとにかく教官が書きたくて思いついた話です。ほかのシリーズだと、教官と一緒に狩りができるらしいですが…や、やってみたい!w
達人ビール関連のことは、前作をやっていないので完全に想像で書いています。
イカズチ換算のことは考えてませんでした。1ゼニ―1円単位で、単に10億円くらいだと…。
wikiには、10億円豪邸建てたとありましたので。
借金したら、利子がついて倍は膨れ上がるでしょう。ぶるぶる…><
今回、教官が天然ボケなので、グロムがツッコミ役になりそうです。
ミランダは動かしやすいので好きです。酒場の女将として、みんなの良いまとめ役って感じです。
さて、続き書きますね^^;
のっけから教官登場で目が放せない展開ですね。
一モンハン・ファンとしても、とても先が楽しみです。
二十億ゼニー!
イカズチ・レートだと日本円で二千億円。
何処をどうだまされりゃ、こんな額の借金が出来るんだか……。
でもあの教官ならやりかねないと、何処かしらで納得している自分もいたりして。
次回以降、グロムと教官の掛け合いがもの凄く楽しみですねぇ。
ミランダさん、お久しぶり。
私としては前章で彼女の存在に助けられたので頭が上がりません。
お元気そうで何より。
次のクエストは、さーてなんでしょうかね~(^m^)
アカムではないですよ!
ヒントは、3章で説明したアレですアレ。
仰る通り、教官は商売に向いていません。根が正直なんでしょうね。俺も良く知らないですけど(笑)
実際の負債総額は知らないですが、豪邸が十億だったそうなので、そのくらいは膨れ上がるかと。
俺だったらその時点で生きる希望を失いますね…。
なんだかんだ言ってタフなこの人、憎めないです。
いやいや、先走るのはやめとこう。
それにしても、一夜で20億……
商売やるのに向いてないんじゃないかと思う……