モンスターハンター 勇気の証明~五章 06
- カテゴリ:自作小説
- 2011/09/19 10:53:59
【乙女爆発】
思えば、ミーラルは一度もグロムから女の子扱いされたことがなかった。
集会浴場で一緒に湯船に浸かっても、グロムが何か特別な視線を送って来たりはしない。インナー着用でも、ミーラルのグラマラスな肢体は、他の男達の目を惹きつけてやまないというのに。
ミーラルもそれなりにおしゃれに関心がある方だ。防具とはいえ、見た目の美しいものには目がないし、それを身に付けた自分を褒められたら嬉しい。
なのに、グロムときたら。
ミーラルが初めて耳飾りをつけた日も。唇に紅をさした時も。ファメルシリーズの防具を着た時でさえ――、
(なんっっにも言わなかった……)
がっくりと、ミーラルは抱えた膝の上に額をぶつけた。グロムの無頓着さは今に始まったことではないが、こうも無視に近い反応だと、逆に不安になってくる。
(……キスまでしたくせに)
あの水没林大連続狩猟は、昨日のことのように思い出せる。
モンスターに父親を殺されて、憎しみと悲しみで心が塗りつぶされていた自分を救ってくれたのは、バカでアホでまぬけな、でも、いつも誰よりも優しかった――グロムだった。
そうだ、グロムは優しい。間が抜けた行動でミーラルを怒らせはするけれど、いくら自分が殴っても、彼は反撃しなかった。
男が女を殴るなんて言語道断だが、何か言い返してもよかったはずである。むしろ、男の矜持が、幼なじみとはいえ女に一方的に打ち負かされるのを良しとしないはずだ。
でも、グロムはミーラルにいくら怒鳴られ、殴られても、決定的な反抗はしなかった。それは彼なりの強さ、優しさの表れだったのかもしれない。
(それが……コンビ解消してやる、だもんなあ……)
はーっとミーラルは重い溜息をつく。グロムがああいうからには、腹にすえかねたものがあったのだろう。
ショウコが苦笑して、温めたお茶を差しだした。
「グロムはんとケンカしたの気にしてるんなら、いっそ、あんさんから謝ったらどうや?」
「……私が、謝る?」
ミーラルが顔を上げると、「そうや」とショウコは、白い歯を見せてにっこり笑った。
「男は、いつだって女に立てられたいものなんやで。グロムはんがキレたんは、今まであんさんに男のプライドをないがしろにされたうっぷんが、溜まりにたまっとったんとちゃうか?」
「そ……そうなのかな……」
さっき自分が考えていたことを指摘されて、ミーラルはぎくりとした。
「せや。そういう時は、しおらしく女が謝ったらええんやて、うちのオカンが言うてたわ。夫婦円満の秘訣やて」
「……夫婦」
ぽっとミーラルの頬が熱くなる。まだグロムとはそんな関係じゃないのに、ささいなひと言にまで反応してしまう。
自分は、すっかり別の生き物になってしまったみたいだ。
今までの関係では物足りない。もっとグロムの、自分へのいろんな言葉が聞きたい。そして、あの時みたいに……抱きしめてもらえたら。
「……うん。村に戻ったら、ちょっと謝ってみる」
「せやせや。こじれる前にすぐ折れた方が、案外うまくいくもんや。仲ってやつはな」
まるで経験豊富な言い方のショウコがおかしくて、ミーラルは吹き出していた。きっと、まわりの大人達にそう言われて育ったのだろう。彼女の故郷ナニワ村の、人情の豊かさが感じられた。
(コンビ解消だなんて、冗談だよね。……あのバカ、私がいなくて、今頃ユッカちゃんを困らせているんだろうな……)
くすくす笑いながら、ミーラルはキャンプに設置されているベッドへもぐりこんだ。自分を前にしたグロムが、どう言いわけして泣きついてくるのか想像したら、妙におかしくて仕方なかった。
一週間かけて、ミーラルとショウコはユクモ村に戻った。だが、グロムやユッカは村にいない。二人は凍土のクエストに行って、今夜帰還の予定だと、ギルドの受付嬢が教えてくれた。ミーラルは、定刻にギルドへ迎えに行くことにした。
(ちゃんと謝るぞ~。あ、緊張してきた……)
そしてその夜、グロム達はギルドに戻って来た。なぜか教官がいるのが気になったが、ミーラルはグロムの満足そうな笑顔を見つけ、ドキンと鼓動が跳ね上がった。
「グ、グロム! おかえ……」
しかし、グロムはこちらを見ようともしなかった。悠然と歩く教官にべったり張り付いて、歩み寄ったミーラルを素通りしてしまう。
「教官! 次のクエはいつですか? ぜひ俺もお伴させてくださいっす!」
ミーラルの笑顔が固まる。何? 何が起こったの?
「あ、ミーラルさん……」
ユッカが慄然と立つミーラルに気づき、顔を覗き込む。瞬間、ひっと声を詰まらせた。
「ん? どうした。――あ、ミーラル。いたのか」
今初めて気づいたといったグロムの声と表情に、ミーラルの中で何かがぶつんと弾けた。
「てめーは一生女にふられてろーッ!」
「ふげぇー!」
気がついたら思いきりグロムの頬を殴り飛ばしていた。同情は微塵もわかなかった。
そういって頂けると助かります^^
ショウコはとても扱いやすいキャラですね。いや、イカズチさんの作るキャラはみんな立ってるので、すごく書きやすいです。
キャラ作りはいつも苦戦しているので、いろいろ勉強になりますですw
よろしく使い回して頂けますと創作者としても嬉しい限りです。
お、イメージと合っていたようでよかったです^^
それも、イカズチさんのキャラ立てが上手だからです。ショウコも動かしやすいキャラですね。
ショウコの恋愛観ですが、グロムを見かけだけで恋人にしようとした辺りで、経験不足なことは勘づきましたね。
それと、俺の大阪の人のイメージが「お節介」っていうのもあります。
大阪の人と接した事はないですが^^;
俺も方言好きなんですよ。なぜか、大阪や京都の西の言葉や、土佐弁に憧れています。
有名人が多くしゃべっているからかな。土佐弁といえば、坂本竜馬ですしw
言葉で個性が出るのも良いですよね。楽ですw
初めはミーラルへの当て馬のように登場したショウコですが、根は優しい子なので、こういう慰め方をするんじゃないかなあと…っていうか、キャラが勝手に動いたのでこうなりました。おかげさまで助かっております^^
さて…この続きはどうしましょうかね~^^;
グロムとミーラルが仲直りするまでが大変です(笑)
もうショウコのキャラをしっかり把握して使いまわしてます。
「うちのオカンが言うてたわ」
とありましたように、彼女の恋愛感は決して経験から来ているものでは無く、周りからの情報や観察、忠告から得たものでしょう。
恋愛に憧れはあるが、耳年増になったおかげで逆に自分の恋愛は上手く行かない。
ショウコはそんな女の子なんですね。
私はよく関西弁のキャラを出しますが、決して特定の地域を軽んじているわけでは無く、むしろ逆に憧れていたりします。
『彼女の故郷ナニワ村の、人情の豊かさが感じられた』
の一文は、私の気持ちを代弁してくれているようで嬉しかったですね。
確かに『誰の台詞かはっきりするので書き易い』と言うのも否定しませんが……。
教官の舎弟になったら、こきつかわれそうで大変そうですw
基本お笑いの人なので、人を無意識に面白がらせるキャラなんですが、カッコいい一面も持っている。
俺の憧れの人物ですよw
笑わせて惚れさせる男って好きなんです。ルパンみたいな…いや、ちょっと違うか^^;
まあ、そういうキャラって、精神面がタフっていうか、本当に強いなと思うので。
教官は書いていて楽しいです。キャラが立ってますもんね。ゲームのシリーズを通して、ほぼ登場しているのは、それだけ人気が高いからでしょう。
教官のシーンは、全部気に入って書いています。楽しんでいただけて嬉しいです^^
久々に「狩りに生きる」を読み返しましたが、ロックラックに大豪邸を建てた我輩、と名乗る文章で見せる彼の一面、面白いですよw
あれは、絶対本文に入れようと思ってます。
あはは、若いって良いですよねw
これぞ青春だよな~^^
これからの活躍にも期待大です♪
読んでいくと「教官でた! → 教官だめだなぁ → 教官つよい! すごい! → あーあ、教官のせいで……」と、彼の印象がどんどん上書きされていきました。
勢いにのって読めますし、おもしろかったです!
あ、最後は教官が悪いわけではないんですけれど。先達の大きな背中も罪作りですね。
訓練所へは基礎を教わって以来ご無沙汰だったので、演習もやらないとなぁという気分になりました。
それにしてもランマルの本名があんなに可愛いとは。ミルクミルクと連呼しているくだり、好きです。あはw