モンスターハンター 勇気の証明~五章 11
- カテゴリ:自作小説
- 2011/09/29 15:37:09
【召集】
「まあ、座りたまえよ」
深夜、ユクモ村のハンターズギルド支部。その支部長室で、教官は小柄な老人に座布団をすすめられた。一見酔いどれの獣人に見えるが、彼こそはこの部屋の主なのである。
東洋の文化が色濃いこの地では、椅子とテーブルよりも、こうして床に座る風習が根付いている。は、と短く返事をして、教官はかしこまって向かいにあぐらをかいて座った。
「チミも、こうして呼ばれたからには、なんでなのかわかってると思うけどねぇ……」
「は……。もしや、先月、一般ハンターと狩りに出たこと……でありますか?」
いつもは豪快な教官も、目上とあっては高笑いもできない。殊勝に背筋を伸ばして、でも上目づかいで支部長を窺うと、老人はひょうひょうと笑った。
「あれはいけなかったねぇ。教官職にあるものが、ルール違反だよ、チミィ。いくら飲み屋のツケがたまってるからってねぇ。行くなら許可を取って、ソロで行かないと」
「も、申し訳ありません」
縮こまる教官に、支部長は叱るでもなく笑った。
「いいよ、そのことは。それを責めるなら、アタシにも咎がなきゃあ。ミランダの酒場が、チミのツケで潰れたらアタシも困るんでね。幸い、村付きハンターであるユッカ達はチミの教え子だし、現地教習として、クエスト依頼書に許可の判子ついといたから。感謝しなよ」
「はっ、あ、ありがとうございます!」
勢いよく教官は頭を下げた。支部長は好々爺の笑みを崩さず、しかし、鋭い目で彼を見る。
「けど、次はないからね。いくらチミがおっちょこちょいで、ソロだとミス連発で現地でクエリタしうるからって、チミは『教官』だってこと、忘れちゃあだめだよ」
「承知しております……」
教官の目に、彼自身忘れかけていただろう威厳と誇りが宿る。そう、彼は『教官』なのだ。
意外と知られていないが、教官の称号を持つハンター達は、ギルドで保護された特権階級である。
全ての武器と地理、モンスターに精通し、知識、実力、人格、共にそろった者のみが、厳しい試験を経てようやくなれる職業なのだ。
教官ハンター達は組合を持ち、後進に教えを施すのみならず、彼らの特別な力が、多目的~例えば、軍事など~に悪用されないよう、監視と保護下に置かれている。
いわば、彼らはハンター達のヒエラルキーで頂点に立つ存在といってもいい。それだけに、むやみに一般ハンターと組んで狩りをしてはならない決まりもある。
支部長は特例として、教官がユッカ達についていくことを許したのだ。
「けど、本題はそこじゃないんだよねぇ。こうして呼びつけたのは、実は本部からの指令でもあるんだよ」
ぎく、と教官は肩を震わせた。いよいよクビが決定したのだろうか。
すると、それを見抜いたかのように、支部長は白い髭を揺らして笑った。
「ひょひょひょ。チミの予想は外れだ。クビじゃないから、安心したまえ。――指令というのは、ほかでもない。あるモンスターの討伐命令だ」
「我輩に、でありますか?」
「うむ」
支部長はどんな時でも笑いを崩さない。それが頼もしいと言う者もあれば、策士のようで怖いと言う者もいる。
「あとひと月で、ロックラックの街に祭りが来る。そう、ジエン・モーランが回遊しに来るんだ」
「ジエンですか? それなら、我輩が行くまでもないでしょう。基本おとなしいモンスターです。街の被害を抑える程度の頭数ならば、一般ハンターでも可能では」
「そうだね。普通のジエンなら、ね」
支部長は下からすくいあげるような目つきで教官を見やった。
「だが、古龍観測隊の報告によると、どうやら……5年前のヌシが来るらしい」
「……なんと」
ぐっと教官が歯を食いしばる。支部長は、思わしげに顎の長い髭をなでた。
「そう。あの、ロックラックの三分の一を砂に沈めた最大の峯山龍が、街の方向を今年のルートに選んじまったのさ」
さしもの教官も押し黙った。五年前、千人の上級ハンターを動員してなお八百人の犠牲者を出し、ようやく撃退しかできなかったあの怪物が、また来るとは。
「ギルドは、次こそは奴の討伐をと躍起になっている。しかし、また五年前の悲劇が起こるようではいけない。ハンターは唯一モンスターに立ち向かえる、大切な、特別な人材だ。むざむざ、人を火にくべるようなことはできない。……つまり……」
「特級ハンターである、我輩に行けと。そうなのですな?」
「……これは、チミへの罰などではない。上からの命令だ」
支部長は、まっすぐ教官を見つめた。今度は、笑ってはいなかった。
「撃退ではなく、討伐だ。これがどんなに困難なことか、言うまでもないが……」
「我輩一人で行けと?」
「いや。特別に、あと3人仲間を募ることが許されている。ただし、他の教官ではダメなんだよ、これが」
支部長は眉を下げて言った。
はい、正座だとかしこまりすぎかと思って。昔の日本では、武士は公式の場でもあぐらでしたよね。そんな感じで書いてみました。
教官の性格なら、上には逆らわなくて、ちまっと正座もしていそうですけどねw
でも、ゲームの訓練所で見せる彼の顔を想像して書きました。あの教官はカッコいいですよね。
アニメアイルー村Gでは、「戦ってる最中はカッコいいのに、一緒に暮したらただのオッサン」と彼女に言われてふられたそうですよ。そういう人なのかもしれません(笑)
作中では支部長と書きましたが、マネージャーのおじいさんですw
マネージャーっていう呼び名を忘れて書いてました…大丈夫ですよね、これでも^^;
モンハンウィキによると、ギルドの受付嬢はすごい才媛だそうですよ。ギルド関連はエリートなんです。
だから、属する教官はもちろん、マネージャーもエリートかと。
といっても、マネージャー達は知識面でのキャリア組って感じですね~。
教官の成績、どうだったんでしょうね。
昔は万能型だったのが、前線を退いてから勘が鈍ったのか、些細なミスで落ちたことがある、と、これもウィキ先生に書いてたので、そこから前回の活躍(?)を書いています。
続き楽しみにして下さってありがとうございます。頑張って書きますね^^
確かに教官、というかハンターたちにはそのほうが似合うかも!
ユクモ村って東洋風で、でも和風とは少しちがっていて、文化を想像するのも楽しいです。
マネージャーのお爺ちゃん、ひょうひょうとした雰囲気のなかに威厳が見え隠れしますね。
じつはすごーく強そうです。読んでいる途中でヨーダが思い浮かんでしまいました。
教官の認定試験(資格試験? 名称決まっているのかな?)は、優秀な項目とそうでない項目の差が激しそうです。
ヌシとの対決、楽しみにしています!
いやー、それくらいじゃないとなれない職業だと思いますよ、教官って。
だって、普通にハンターしている方が楽しいし、儲かるじゃないですか。それなのに先生の仕事に就くってことは、そこにすごい魅力や名誉なんかがないと、人は選ばないと思うんですよ…たぶん。
この教官も、昔は情熱に溢れたご仁だったんじゃないかと。狩りに生きるの「教官(見習い)」を読んでそう思いました。…って、これとこれは同一人物ですよねえ?w
おじいちゃんも、実はキレ者ではないかと。
ハンターランクが上がった時などに、わりと手厳しいというか、つらっと鋭い事を言うでしょ。
「その実力がマグレじゃなければ~」とか。
それと、アマツを倒した後のセリフで、村に避難勧告が出たら、自分とチミ(プレイヤー)だけが残ってアマツを何とかしなきゃならなかった、と話すじゃないですか。
その辺から、やっぱり責任感ある人なんだろうなと感じました。それくらいじゃないと、ギルドマネージャーなんてやってけないですよね^^;
これからの展開のために、ひたすらジエン関係の動画を見たり、自分で倒したりしていますw
俺のギルカは、ジエンの履歴だらけです(笑)
鋭意執筆中です。面白くなればいいなあ。
モンスターに精通し、知識、実力・・・じ、人格ぅ!?
う~ん、実力のあたりで他の穴埋めしてるんでしょうかね、それとも昔は・・・
好々爺・・・あのお爺ちゃんも不思議な人ですよね
声聞いてると頻繁に「よかろう!」って言ってるように聞こえます
今回の措置のように基本は寛容な方・・・なのかな
さて、なにやら水面下でメチャクチャでかい規模の話が進んでますね
いくら教官が一緒でも、彼らとたった4人で討伐できるのか・・・
どんな戦いになるのか、期待しております!
二次小説みたいなものなので、公式じゃないです。教官の職業設定は俺が考えました。
キャラについて自由に考える、これが同人の醍醐味ですw
アニメアイルー村G、中国のサイトでアップされてましたね。俺も見てきました。
なんというか、シナリオ的にはシーズン1の方がキレがあったような…。
Gはぐだぐだ感が強いですが、俺にも馴染みのある3rdが舞台なのが良いですねw
そうそう、アニメでさりげなく教官が、実家がアイテム屋って言ってましたね。これって公式なのかもしれません。
ちなみに、この小説に登場している教官と、ゲームでの教官は同じ人物という設定です。(訓練所にいる、あの人です)
3人の仲間は…言わずと知れた、この小説の彼らですw
楽しみにしてくださって嬉しいです。頑張って続き書きますね^^
先日おすすめされていた「ギリギリアイルー村&G」を見てきたんですが
教官の実家は「雑貨屋」ってなってました
実は親戚だったりするのか?? なんて勝手に想像しちゃったりして
教官+3人の仲間・・・次の展開が楽しみです
そうなんですよ、謎だらけですよね、教官って。
教官という職業も、説明が詳しくないですし。組合のくだりは、「狩りに生きる」の教官のコラムから見つけたものです。教官組合でも高収入(だっけ?)の我輩、って書いてたので。ああ、組合があるんだなと。
凄腕は間違いないですが、あの性格は地だと思いますww
あ、でも最終兵器ハンターってカッコいいですね。実際そうかもしれませんよ?
というか、その設定、俺も考えていたんです。そのまま使わせて頂きますw
ヌシのジエンは、ここで持ってくる予定でした。なので、導入部をどうしようかと決めかねていたら日数かかってしまい、アップが遅れました。申し訳ありません^^;
煮え切らないのが自分の悪い癖でして…。見切り発車も必要ですよね。
筆速、これでも遅い方ですよ~><
毎日アップのつもりが、何日か置きになっちゃいましたから。
でも、大事な回なので、失敗したくないんです。なので、頭の中で何度も場面をイメージして固めています。面白くなれば幸いです。
あと12回くらい…もしくは全30回になるかと思います。こっち速度落としてるので、まだ終わる気配はないですが、イカズチさんもそろそろ準備しておくと慌てなくていいかもですw
イカズチさんの最終回、とても楽しみにしてますので! よろしくお願いします^^
HMのwikiを読んで見ても、過去の経歴や家族構成など不明です。
わかっているのは凄腕のハンター(らしい)って事のみ。
ひょっとしてあのとぼけた言動も世を欺く為の演技で、実は『ギルドの最終兵器』との称号を持つ超A級ハンターだったり……するわきゃあねぇか。
ぬしのジェンとはまた、文字通り巨大な相手を持ってきましたねェ。
マネージャーとの会話だけでワクワクしっぱなしです。
同時に蒼雪さんの筆速に恐れおののき、自分パートが気になって仕方がないのですが……。
たぶんそうじゃないかなあと…。公式設定ありましたら、教えてくださると助かります^^;