Nicotto Town


ま、お茶でもどうぞ


モンスターハンター 勇気の証明~五章 13

【砂の街】

「ここがロックラックの街かあ~。さすがに都会だぜ」
 街門に立ったグロムが、物珍しそうに辺りを見回す。ミーラルが、軽く彼の肩をはたいた。
「こら、お上りさんだと思われるだろっ。恥ずかしい……」
「そういえば、初めてですよね、この地方に来るの。わたし、狩りで行く砂漠と同じ場所に街があるのかと思ってました。――あ、あれが飛行船?」
 ユッカも広い市街を見渡し、上空をゆったりと行き来する縦に長い風船のような姿に、思わず指をさす。
 乾いた熱い風も、照りつける日差しも、容赦なく暑い。
 のんびりしたユクモ村と違い、街はとても賑やかで、行きかう人の流れは得体のしれないエネルギーに満ちていた。
 ユクモからはるか東に位置する砂漠の都市、ロックラック。世界中から多くの人や物資が集まるだけでなく、ハンターズギルド本部があるここは、ハンター達にとっても中心となる街だ。
「すごい活気だね。こういう賑やかさもいいかも。ちょっとほこりっぽいけど」
 ミーラルも、ついついまわりに目が行ってしまう。村とはくらべものにならない人の多さ、とりわけハンターが目立つのは、この街ならではだろう。
 都会と言いつつも、市街には階層の高い建築物がない。まるで地に張り付くようにテント式の露店が軒を連ね、住居もまた、ほとんど平屋である。周囲に山や森などの遮蔽物がないため、砂漠から来る強風に高層建築は耐えられないのだ。
 しかし、かつてその風に逆らうが如く栄えた証に、街の外れに巨大な闘技場が建っているのが見える。
 だが、残っているのは壁の骨組みだけで、四、五階はあったであろう建物そのものは存在しない。今は現存する地上部だけを使い、そこでモンスターとハンターの腕試しが日々行われている。
 そして、街の中心部により高くそびえ立つのは、ジエン・モーランの牙と呼ばれる柱だ。
 言い伝えによると、それはこの街の湖の岩に激突して折れたジエンの牙らしいが、話が本当なら、本体は途方もない大きさがうかがえる。
「ここに来るのも久しぶりだニャ~……って、ニャンで教官、ほっかむりしてるニャ?」
「う、うるさい! 大きな声で教官と呼ぶな! 業者に見つかってしまうではないか!」
 ランマルのいぶかしげな目に、教官はこそこそとなりを縮めた。
 狩りの直接サポートはできないものの、撃龍船の乗組員として、ランマルとコハルが同行している。コハルは、ショウコが自分の代わりにとつけたオトモだ。
 ふふ~ん、と、教官の事情を知るランマルの目つきが意地悪くなる。
「そういえば、ここには大きな借りがあったニャね、教官! 今もあの豪邸は残っているか見に行くかニャ、教官! ほっかむりがやけに似合いますニャ~、教官!」
「こ、こら~! 大声で連呼するんじゃない!」
「いつかのお返しだニャ~」
「ランマルはんって、顔に似合わず根に持つタイプでんニャ~」
 コハルがきょとんとする。ランマルは、ふんっと腕組みしてそっぽを向いた。よほどかつての自分の名前……『ミルク』にトラウマがあるらしい。
「教官、そういやあんた、なんでここに豪邸があるのにユクモにいるんだよ?」
 グロムが前々から思っていた疑問をぶつけると、教官はあからさまにばつの悪そうな顔をした。
「それはだな……うむ、貴様らがこの狩りで良い仕事をしたら教えてやろう!」
 ごほんと咳払いをすると、教官は先に立って歩き出した。
「さあ、ギルド本部に行くぞ! 時間が惜しい」
「なんだってんだろ。気になるなあ……」
「先生、何か知ってるの?」
 グロムが首を傾げる。ユッカが訳知り顔のランマルに尋ねたが、ランマルは軽く肩をすくめただけだった。
「話(はニャ)してもいいけど、士気が下がるといけニャいから後にするニャ。さ、ボク達も行くニャよ」
「そうだね、行こう。私達は教官に同行してるんだし。私も、狩りの前に嫌なことは聞きたくないよ」
 ミーラルが苦笑した。ユッカ達もうなずく。どんな狩りの前でも、精神統一はハンターにとって最も重要と言っていい。ちょっとしたことで下がったテンションが、生死にかかわることもあるからだ。
 この広い街ではぐれたら大変だ。ユッカ達は急いで、教官の後を追いかけた。


「お待ちしておりました。わたくしはギルドナイトのロジャーと申します。本部長は多忙のため、わたくしが本作戦のご説明をさせて頂きます」
 ロックラック本部は、他より大きな4階建ての建物だったが、案内されたのは地下だった。その会議室と思われる一室に、一行は案内されていた。
「か、かっこいい……」
 普段は色恋沙汰に興味ないようなユッカが、ほんのり頬を染める。それほどの美丈夫だった。
 男性用の装備は荒々しく武骨な鎧が多い中で、このギルドバードと呼ばれる装備は、見た目が大変優美である。深紅の帽子にテール付きのコート、ブーツは、まるでどこかの王国の騎士のようだ。


 

アバター
2011/10/06 21:58
イカズチさん、コメント感謝です。

やはり、初出の場所は描写が必須なので…。2千字で、テレビシリーズのように読み切りタイプというわけにも参りませんね^^;
キャラ立てのためのセリフとか、どうしても削れなかったのでこの内容です。

ロジャーは、そんなには絡んでこない予定です。
ギルドナイトの説明をウィキで読んで、出してみたくなりました。というか、本部長を出そうと思ったら、彼の容姿についてまったくの説明がないため、獣人なのか普通の人なのか安易に書けなかったんですよ。
やはり、ゲームに忠実にいきたいですから。

ナイトは、ハンターの異端審問官的な存在ですね。エージェントと呼ぶべきか。
悪いハンターを処罰する、ハンター狩りのハンターもいるそうで。
ユッカがぽーっとなったのは、村にいないタイプの優男だからでしょうw
こういうキャラも新鮮で良いかと^^
アバター
2011/10/06 05:47
いえいえ、ロックラックの描写は良かったですよ。
単に『何がある』だけで無く、どんな感じがするか伝えられて。
描写下手な私には勉強になります。

ロジャー、新キャラですね。
今後も絡んでくるのかな?
ギルドナイトに関しては一応『ギルド専属のハンター』とされていますが、闇の面も有るらしいので注意が必要ですね。
ユッカ、気軽に惚れちゃあいけねぇよ。
アバター
2011/10/05 10:54
ううむ、内容が浅い…。街の説明で行数とられちゃいましたが、ここは必須なので。
次の回の前置きという事で。



月別アーカイブ

2023

2022

2021

2020

2019

2018

2017

2016

2015

2014

2013

2012

2011

2010


Copyright © 2025 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.