モンスターハンター 勇気の証明~五章 18
- カテゴリ:自作小説
- 2011/10/17 09:58:44
【祭りの夜】
年に一度の峯山龍祭りとあって、日が落ちても街は人でごったがえしていた。出店には灯がともり、そこかしこから食べ物の良い匂いや、ハンター目当ての呼び込みがひきをきらない。
本部を飛び出したグロムを追いかけてここまで来たものの、あまりの人の多さに、ユッカとミーラルは後ろ姿を見失ってしまっていた。
「お兄ちゃん、どこへ行ったんでしょう……迷子になってないといいけど」
人ごみに酔ってしまい、ユッカはいささかぐったりした様子で言った。ミーラルは苦笑した。
「ありうる。あいつなら」
「……ミーラルさん?」
さっきから、どこか物思いに沈むミーラルに、ユッカは小首を傾げた。視線に気づいて、ミーラルは軽くかぶりを振る。
「あ、ああ。なんでもないよ。ただ、この街には知っている人がいるから……」
「それって、アリスさんのことですか?」
「……うん」
ユッカが尋ねると、ミーラルは寂しそうな微笑でうなずいた。
アリスという凄腕ハンターが、一時期、兄グロムとミーラルの師匠だったことはユッカも知っている。
あまり面と向かって話すことはなかったが、村で見かけるたびに、向こうから気さくに挨拶してくれたものだ。
「ねえ。会いに行ってもいいかな? きっと、グロムもそこにいる気がするし」
「もちろんですよ!」
ユッカは笑顔でうなずいた。
「久しぶりの再会ですもんね。きっと会いに行きたいんじゃないかと思ってました。ミーラルさんも、お兄ちゃんも」
「さすが、かなわないなぁ」
ミーラルはくすっと笑い、照れたように髪をかき上げる。
「……ミランダさんも、きっとここに帰って来たかっただろうね」
「……そうですね」
ユクモ村で待つ彼女の姿を思い浮かべて、ユッカの胸がしくりと痛んだ。
ロックラックへ旅立つ前の日に、ユッカはミランダに、一緒に来ないかと誘ったのだ。共に戦う事はできないまでも、せめて故郷を見るくらいはできるだろう、と。
しかし、ミランダは明るく笑って断った。
――あたしは、待ってるよ。あんた達が帰る場所は、あたしが守ってるから。
「……グロムが飛び出して行った理由。私、なんとなくわかるんだ」
行きかう人を眺めながら、ミーラルはつぶやくように言った。
「ミランダさんは、強いよね。待つ方がよっぽどつらいのに、また同じ道を選んで……」
ユッカは右手で、自分の胸元を押さえた。
「だからこそ、わたし達は帰らなきゃ。もう二度と、誰も悲しい思いをしないために……」
「うん……」
二人は並んで空を見上げた。満点の星がきらめく天は、明日来る憂いのことなど知りもしない。
この空が、峯山龍の巻き上げる砂で覆われる時、ユッカ達の戦いは始まるのだ。
「こんな所にいたニャ~!」
「ランマルはん、待ってぇニャ~!」
「貴様ら、我輩を置いて行くなー! 迷子になったら泣いちゃうぞ!――我輩が!」
「――先生、コハル?……と、教官も?」
雑踏の中を、四足で駆ける二匹の影。それと、その後を追うおっさんの姿もある。
「よくここがわかったね?」
驚きを通り越してあきれ顔のミーラルに、ランマルはエヘンと胸を張った。
「ボクらアイルーの鼻は、数キロ先でも匂いを嗅ぎわけられるニャ。だから旦那さんとはぐれても追いつけるんだニャ」
「まったく、勝手に外に出るんじゃない! 我輩は、保護者として貴様らを監督する義務があるというのに」
「ご、ごめんなさい!」
教官が、ふんと鼻を鳴らす。慌てて頭を下げたユッカを、ランマルがつついた。
「頭下げることなんてないニャ。こいつはただ、ボクらを酒場への案内させようとしただけニャ。方向音痴だなんて、知らなかったニャ。教官のクセに」
「え? そうなのか?」
「ち、違う! 久しぶりの街で、ちょっとドキドキしているだけだ!」
ミーラルの横目に、教官がムキになって弁明する。ユッカは笑った。
「あはは。教官ってかわいい所があったんですね!」
「か、かわいい? 我輩が?」
きょとんとして、ぽっと頬を染める教官に苦笑して、ミーラルはランマルとコハルを見た。
「あんた達、この街で長かったんだろ? アリスって人の酒場、知ってる?」
ランマルは得意げに髭を動かした。
「もちろんだニャ。アリスさんは、ミランダ様の昔馴染みだったからニャ」
「ああん、ミーちゃん久しぶりぃ~! ユッカたんも元気そぉね~!」
「お、お久しぶりです」
ランマルの案内で酒場のドアをくぐった途端、満面の笑みを浮かべて両腕を広げ、こちらに駆け寄ったバンギスルックの女性に、ミーラルは目を白黒させた。
有無を言わさず首っ玉を引き寄せられて、ミーラルは久しぶりにアリスの匂いを嗅ぐ。甘ったるいようで清々しい香水の香りは、少しも変わらない。
この街に行くと知った時から、アリスに言おうと思っていたことが山ほどあった。けれど、準備していた言葉も再会の涙も、アリスの笑顔を見たら全部ふっとんでしまった。
あっ、ああ~、よかった~!そう言っていただけて。
心底ほっとしたというか、間違ってなかったと言うべきか。
いや、実は、おっしゃる通りなのですよ。早く狩りのシーンにいかないと展開おそすぎるだろ!と、みなさん思われているんじゃないかと思いまして。
あと、ユッカの章でのジンオウガ狩りで、その戦闘シーンのあとのみなさんの感想が「長い戦いだった」ってあったので、「ああ、長すぎたのかなあ…」と、反省していたのです。
でもいい加減、こやつらを船に乗せたいので、次の章ではもう乗せます、乗ってもらいます!
ユッカのことをユッカたんと呼ばせたのは、アリスの性格からです。
ミーラルやグロムをあだ名で呼ぶのに、ユッカだけ「ユッカちゃん」だと、普通だし、かえってよそよそしいでしょ。
なので、ほどほどに顔見知りでも親近感を示す愛称として「たん」をつけましたw
お気に召してなによりです。イカズチさん公認だ~w
なるほどと思いますが、難しいのはやはりこのお話が『モンハン』小説であるが故に『狩りのシーンを早く書きたい』もしくは『早く書かねばならない』と焦っておられるのでは?
私も自分の章でそのような切迫感に捕らわれ、危うく大事なシーンを抜かしそうになった事を覚えています。
しかしながら、読み手としてはこう言うシーンにも面白みがあり、特にモンハンをやり、最初からお読み頂けている方にはタマランものがありますよ。
逢魔ヶ時から夕暮れへのロックラックや教官の意外な可愛さがそれですね。
私などはアリスとユッカが一会話交わしただけで『おおっ!』と感嘆の声を上げる始末ですから。
そう言えばアリスはユッカを『ユッカたん』と呼びましたね。
そうっ!
そうです。
彼女ならそう呼びそう……いや、絶対そう呼ぶ。
決まりっ!
早速、キャラ表に書き込んでおかねば。
萌えって難しいですよね…。
俺は未だに過去のトラウマ(文章・文体が気に食わない、キャラが全部嫌いと複数から言われたことがある><)から抜け出せないので、毎回感想が気になるたちなのですが、そういって頂けて嬉しいです。
ありがとうございます^^
こういう形式では、毎回が見せ場じゃないと持たないんですよね^^;
本で読むなら、ちょっとだらけた繋ぎ展開でもいいのですが。
しかし、その分無駄がどこか考えて書けるので、千文字同様勉強になっています。
実はこの続きを書いたのですが、どうもだらけた展開なので、もっとスピーディーにすべくばっさり消してボツにしました。
推敲は非情なものです…。でも、もったいないと言っていたらダメなので。
不調というか、リアで何かあった場合のメンタル面が即反映されてしまう性質なため、思うようにイメージが紡げなかった状態でした。
ホロスコープではそういう星回りだったようで、今ようやく抜け出せた感じです。
毎日勤勉に書き続けられることがプロへの才能といいますが、調子悪い時はどうやっても無理。
トゥさんも気を楽に持って、まず自分が楽しんで書けるようなお話を考えてみてください^^
良い話が書けますように✾
繋ぎの場面は必要ですよね。
どこに挿入するか、どう繋げるか、でその後の山場もより引き立ちますし……ただ構成を考えるのは楽しいけれどむずかしいですね。わたしも、今考えている長編のプロットが行き詰っています。
蒼雪さんも、不調の波からはやく抜け出せますように!
教官がほんとに方向音痴かは不明ですよw
凍土ベリオロスの回で、道に迷ったエピソードを生かそうと思ったらこうなりました^^;
乗り物酔いと方向音痴は萌え要素ですよね!(^w^)b!
(おっさんに萌えてどーするかっていう気もしますが)
要点だけ書くって難しいですね。しかし、どうしても繋ぎの一シーンって必要な気はします。
もういいかげん、船に乗らせてあげたいなあ~^^;
次回こそは!