モンスターハンター 勇気の証明~五章 20
- カテゴリ:自作小説
- 2011/10/20 15:09:41
【見送りは一人】
シン様、カッツェ――。
ランマルはうつむいて、ぎゅっと目を閉じた。つぶやいた名は、彼の初代主人と、同時に砂原で亡くした仲間アイルーの名だった。
ユッカはかける言葉が出なかった。せめて、震える小さな肩に触れて慰めてあげたいと思ったけれど、それもためらわれる気がした。
「――勝とうね、絶対に」
ふと、傍らで柔らかな声がした。ユッカが面を上げると、ミーラルがふわりと微笑んだ。
「モンスターに大事な人を奪われるのは、もうたくさん。私ももう、泣きたくないんだ。あんなふうには」
「……うん」
こみあげてきた涙を、ユッカはまばたきして散らした。
泣いても始まらない。今は、勝つ事だけを考えなくては。それだけが最善、最良の道なのだから。
「本当のことを言うとね……わたし、ミランダさんの仇を討ちたくてここにきたんじゃないの」
言ってから、ユッカは小さくかぶりを振った。
「……ううん、ちょっと違うかな……。ミランダさんのことは、話を聞かせてもらった時からずっと頭から離れてくれない。でも、この戦いは仕返しとか、そういうんじゃないんです。わたしにとっては」
「うん……わかるよ」
ミーラルが、そっとユッカの肩を抱く。
「私もそう。目標を倒すことで、ミランダさんを喜ばせてあげたい、過去から解放してあげたいって考えていたけど……でも、それだけじゃないんだよね」
「……だな」
グロムも傍らに立ち、感慨深げに彼方を見つめた。はるか遠く、地平線には砂色の壁が立ちはだかっている。あの砂嵐の中のどこかに、倒すべき強敵はいるのだろう。
「とにかくさあ、俺らは俺らのベストを尽くすしかねーよな。ギルドは討伐って言ってるけど、最悪、撃退にしたっていいわけだし」
「ふん、そうだな」
教官も、どこかおかしそうに笑った。
「まずは我らが生き残ることが一番だ。それが、人間側にとっての本当の勝利なのかもしれん」
「生き残ることが、勝利……」
ユッカは繰り返しつぶやいた。これまでに数々の死地をくぐりぬけてきたからこそ、教官の言葉は胸の奥にすっとなじんだ。
「ウチも頑張ります!」
もじもじしながら、コハルが言った。
「狩りの間の三日間、精いっぱいおいしいご飯作ります。皆さん、どうぞよろしゅう頼みます」
緊張してふるふる震えながらおじぎしたコハルの姿に、ユッカ達は思わず吹き出していた。仏頂面だったランマルも、笑うのをこらえてかヒゲがぴくぴくしている。
「――さあて、あと五日か。なげえな……」
腕を上にのばして伸びをして、グロムが気だるそうに言った。
ユッカは空を見上げる。白く丸い影は、砂に隠れた太陽だ。
ハンター生活で二度目に、ユッカは狩りのことで神様に祈った。
(どうか、誰も死んだり泣いたりしませんように)
「それでは、ご武運をお祈りしております」
真夜中の船着き場で、ロジャーが一同を見て言った。
あれから五日後、グロム達は予定通り、ジエン・モーランの討伐に出ることになった。
先発隊のアリスを含む全ハンターが、予定日数内でギルドの指定した目標を無事撃退したとの報せは、本部で待つ一行に安堵と勇気を与えた。
アリス達の帰港まで待っていられない。報せが来たその夜、すぐに発つことが決まった。
グロム達が『ヌシ』を討伐することは、一般には極秘である。だから船出もまた、誰にも気づかれないよう密かに行われなければならなかった。
「うむ。吉報を待ってもらおう」
代表して教官が敬礼を送る。ロジャーも背筋を伸ばして敬礼を返した。
「面舵いっぱーいだニャ~!」
「ようそろ~ニャ!」
赤いバンダナに黒いアイパッチ、しましまのシャツを着たランマルとコハルが、出港のために舵取りの準備をする。ランマルが船長で、コハルが乗組員という役割のようだ。
ちなみに、この海賊のような格好は、ユッカが着せたものである。
――船乗りといえばこれよね!
と、断じてゆずらなかったオトモ防具だが、形から入る見た目に反して、かなり防御力が高い。
機能性にもこだわったユッカの選択に、反論する者はいなかった。むしろ、熱意に押し切られたというのが正しいかもしれないが。
「いってきます!」
ゆるゆると動き出した船の上で、ユッカ達はロジャーへ手を振っていた。ロジャーも臆することなく手を振り返してくれた。
ギルドナイトは、一般には儀仗兵扱いと思われているが、実は裏で非情な任務をこなす者達である。しかし、能力と人間性は別だ。ロジャーが手を振ってくれたのも、彼なりのグロム達への応援のつもりだったのだろう。
「砂も風も安定している。目標到達まで約一日、狩りは三日間でけりをつける。厳しい戦いは避けられん。今のうち休んでおけ」
教官が言うと、グロムが苦笑した。
「この五日間休みっぱなしで身体がなまりそうだったぜ。けど、それ以上に不安だったりして……」
いきなり思いついたキャラですが、自分でも気に入っております。
良い奴でしょ、彼^^
教官のセリフは、このゲームに対しての自分の率直な感想でもあります。
外を歩けば凶暴なモンスターが襲ってくる、そんなドラクエみたいな世界で、人間は日々、生き残るために戦っているんです。
もっと端的に言うなら、恐竜がいる原始時代に、街や村があるんですね。
怪獣映画のごとく、時たま強力なドラゴンが街を破壊したりするので、人間にとってモンスターと共存するには、相手と戦わないといけないわけです。
でも、実際に狩りを見たことのない人達は、「モンスターを狩るなんて野蛮」と考えていたり、モンスターが持つ毛皮や宝石の類欲しさに、危険な狩りを依頼する金持ちなどもいます。
特に、この後者のたぐいは大嫌いなんですが(笑)
ファッションのための毛皮には反対する人間なので…。
と、堅苦しい考えがまず一つと、ゲームとして、3機落ちたらゲームオーバーというのがあるのでw
イカズチさんの書くミーラルと、此方の書いた彼女は違いますね。
イカズチミーラルは、ツンデレのちょっと乱暴な女の子としてのイメージが強いので、こちらでは、彼女の内包する別の一面を書こうとしていました。
最初の設定では、兄コンのユッカと、グロムを取り合う展開も考えていたのですが、ユッカを動かしてみたらその余裕がなくなったので、仲良し姉妹のようになっています。
2章で書き飛ばした部分にそれを書こうと思っていたので、機会があったら書きたしてみたいです。
オトモの装備は、自分の趣味だったりしますww
ゲーム中ではいろいろと装備を整えてあげられるので、可愛いものからカッコいいものまでそろっております。
2章での他の方へのコメントにも貼りましたが、よろしければ、検索して実際にご覧になってみてください^^
そうですね、緩急はつけようと無意識に働いていたかもしれません。なるべく、コメディ調のイカズチさんの章とかけはなれないようにしていました。
もしリレーしていないと、ずっとシリアスな展開で肩がこったかもしれないですね^^;
最後の見送りのシーンで、手を振り返してくれたロジャーさんが好きですw
ユッカは昔、モンスターといえども生き物の生命を自らの手で絶つことに躊躇いがありましたよね、狩りを始めたばかりの頃。
あの頃のユッカを思い出しました。彼女も、本当に成長したんですね~~。
ミランダやランマルとの絆も出来て、今回の狩りにおいては様々な決意や想いがあるだろうなぁ~とは思うのですが、教官がこのタイミングで放った一言は、シンプルながらとても意味がある一言だったと思います。
ミーラルとユッカは、まるで姉妹のようですね~。
グロムに対する態度とは違い、年下の女の子であるユッカにはミーラルさんもとっても優しい^^
(狩りを一緒にしてきたハンターとしての仲間という絆もあるのでしょうけれど)
ミーラルってば、グロムに鉄拳を見舞うだけじゃなくって、ホントは優しい女の子なのね~とほっこりします。
それにしても、海賊コスのランマルですって?!
ユッカちゃん、ナイス選択です(笑)。
シリアスな雰囲気ばかりでなく、ちょっと空気を和らげてくれる描写。
これから先は、いよいよ激闘なのだと思うと、ちょっとしたこういう和みがいいですね~。
これが緩急の付け方、なのでしょうか?^^ 見習いたいです。
心のバイブル。わかります。ウンウン
俺も本は持ってないですけど、シーズン中はリアルタイムで見てました。北斗の拳。
そのセリフ、誰でしたっけ。シン?
確認のためにちょっとサイト巡りしましたが、見つからず…。かわりに、ケンシロウの好物はリンゴと綿菓子ってトリビアが目に飛び込んできました。そんなことはどうでもいいんだ…orz
教官のセリフは、書いている中でスッと出てきました。
ユッカが、狩りへの倫理観で悩んだ話や、モンハンのムービー(魂の唄とか)を見て、自分の中に出た答えでもあります。
ジエンがロックラックの街を無理やり通ろうとするのはなんでかな~、と連日考えていて、結局、「そういう生き物だから」
逆に、なんで砂漠の真ん中にオアシスがあるとはいえ、ロックラックなんて街を作ったのかとも考えていました。
大陸横断の中継地点で便利とか、理由があるんだろうけど、毎回命の危機にひんする場所に住み着くなんて大変ですよね。それは、極寒の地など、過酷な環境で暮らす人間すべてに言えることなんですが。
しかし彼らは、そこに根付いて、生き残るために日々戦っている。もう、それだけなんですよね。
名誉とか富とかよりも。簡単で、単純な答え。それはモンハン世界の原理でもあります。
イカズチさんの回でのアリスのセリフは、まさにその通りだと思いましたよ。
死んだら意味がないですよね、ほんとに…。3落ちしたらクエ失敗しちゃうし、戦闘で消費したアイテムも戻って来ないし、良い事ないですから^^;
グロムとの会話でも、そのことをちらっと話させてますが。結局そこなんですよね。
変な依頼も多いですが、依頼者の命にかかわる必死なクエを見ると、使命感に燃えてきます。
イカズチさんガンナー苦手なのに、ひとりでソリッドクリアしたんですねw
チャットで無限ネコバンダニャのこと話したら、萌えてましたもんね。わかってましたよ、俺にはww
俺も好きです、バンダニャww
ちなみに、オトモ装備マイセットの名前は、語尾に「ニャ」をつけています。
レウス装備なら「レウスニャ」とか。
ニャって、どうしてこんなにかわいいんでしょう…w
強敵に相対したケンシロウに拳友がこう告げます。
「お前はこの先も生きねばならない。相打ちでも、それは負けと同じだ」
己の身を犠牲にしても得る必要がある勝利も有るでしょうが、やっぱり生きないと。
『死んで花実が咲くものか』ですよね。
私は第二章でアリスの言葉を借り『いわばこれは絶対に後に引けないクエスト』と言わせました。
これはともすれば『死んでも勝つ』と言っているようですが、そうではありません。
『必死の思いが込められた依頼を軽々しく受けるな』と、心構えを説いているのです。
そう言った意味で、今回、教官の『生き残ることが人間側の本当の勝利』と言う台詞は単純明快に響いてきますね。
少し重い話になってしまいました。
逆に軽めなお話も……。
ユッカのオトモ衣装着せ替え趣味。
居ますね、こう言う人。
自分の装備そっちのけでオトモに可愛い、カッコイイ衣装を着せる為に頑張る人。
まぁ、最近、私もスネーク装備で同様の事をしましたが。
だって『バンダニャ』って呼び名が可愛いんだもん。
バンダニャ。