モンスターハンター 勇気の証明~五章 23
- カテゴリ:自作小説
- 2011/10/26 12:22:35
【最悪のチームワーク】
メンバーの中では一番冷静なユッカが当たり散らしたのは、後にも先にもこれが初めてだった。
修羅場をくぐりぬけているとはいえ、いつもとは比べ物にならない巨大なモンスターが、これまた逃げ場のない船上に襲いかかってきた恐怖は、対峙した者でなければわからない。
ユッカがバリスタから動かず、ひたすら撃ち続けていたのは、勇気からではなかった。
腰が抜けて、恐怖から乱射していたにすぎなかったのである。
「……悪かったよ、あんときは……。ごめんな」
ランタンをつるした狭い船室で、グロムが頭を掻きながらぽつりと謝った。
「……もういい」
テーブルの上に置かれたスープを、意味もなくスプーンでかき回しながら、ユッカもうつむいている。
一日目の狩りが終わり、コハルが用意したささやかな夕食の席で、一同は通夜のような面持ちで座っていた。教官だけが、もくもくと食事を腹に収めている。
「……今回の戦いは、決して良い出来とは言えなかったな」
骨付き肉を豪快にかじりながら、教官が無愛想に言った。
「まあ、そこそこのダメージは与えられたと思うが。奴がロックラックにたどり着くまで、あと2日しかない。明日でおおむねケリをつける気でいかないと危ないぞ」
「はい……」
ミーラルが重い声で返事をする。グロムとユッカも、叱られたようにうなずいた。
ミーラルの機転でジエンの体当たりを回避した後、教官の指示で、敵の身体に乗り移って戦ったのだが。
グロムが、大樽の形をした対巨龍爆弾を背負ってジエンの横ヒレに飛び移ろうとしたのだが、タイミングを誤って落下してしまったのである。
高速で砂の上を走る船から、息づくモンスターの身体に飛び移るなど初めてのことで、内心の恐れが動きに出てしまったらしい。
普段なら、数メートル崖下へ飛び降りるなど何ともないのに、グロムは足が震えるのを抑える事ができなかったのだ。
砂に埋没してテンションが下がったのが災いし、命綱をたぐって船上に出ても、グロムの動きはぱっとしなかった。
気を取り直したユッカがバリスタで援護し、教官は、伝説の魔龍アルバトリオンの素材で作ったスラッシュアックス――ブラックハ―ベストを、岩のような背びれに生じているヒビ目がけて、猛然と振るった。
巨大かつ強大なジエンだが、これまで人間の手で倒すことができたのは、彼らが極端に鋭敏な知覚を持っているゆえである。
普段は柔らかい砂の中にいて、ほぼ苦痛を知らないことが災いし、痛みのショックにとても弱い。
そのため、自分以外のものが放つ大きな音にも過敏に反応し、装甲が薄い上腕部、老化した背びれ、衝撃に弱い口の牙を攻めることで、あえなく絶命することが知られている。
ただし、もとより固い鱗と、長年体表部に蓄積してきた鉱物が融合した身体は、その部分以外は頑強だ。
それに加えて、巨体から繰り出す一撃の重さは計りしれず、腕や牙の一振りで絶命するハンターも後を絶たない。倒す事は、決して容易ではないのだ。
それでもなんとか、グロムがジエンの背を走って頭部へたどり着き、太さ3メートルあまりもある牙の上に爆弾を設置したまではいいのだが、そこへおかしな旋律が風の中を漂った。
聴いた途端、自分を取り巻く強風が和らいだ気がする……と、おそるおそるグロムが甲板を見やったら、案の定、必死な顔でミーラルが笛を振り回していた。
――風圧無効かよ~!
意味ねえ~!
グロムは頭を抱えそうになった。ミーラルが旋律を間違えたのは明らかである。おそらく、みんなの体力を維持させようと、スタミナが減らなくなる旋律を吹こうとしたのだろうが。
と、右往左往しているグロム達に我慢がならなくなったのか、ジエンが身体を震わせて、背に乗る者をふるい落とした。同時に、爆弾の導火線が火薬に引火し、牙の上で爆発した。
再度砂に落ちる中で、グロムは成果を見ようと目を凝らしたが、牙は無傷に等しく、これまた気持ちを落ち込ませた。
船に戻った教官は、背びれの一つを壊せなかったとぼやいていた。グロム達が加勢すれば、もっと早く破壊していただろう。それを察して、ますます言葉が出なかった三人であった。
「明日はさあ、ちゃんとやろうぜ」
食事の後、気を取り直すためにグロム達は甲板に出ていた。
澄んだ藍色の空には星が出ている。強風は冷たく、肌を切るようだ。砂漠の夜は寒い。
昼間に砂中に没したジエンは、きっとこの近くを泳いでいるのだろう。ジエンはよほどのことがない限り進路を違えないので、夜が明けたら、またまみえることになる。
「もう俺らが最後の砦じゃん?」
「わかってるよ」
ミーラルは唇を噛んだ。
「昼間は失敗したけど、今度はちゃんと見ながらやるから」
ミーラルが懐から取り出した紙切れを見て、兄妹はぎょっとした。同時に叫んでいた。
「カ、カンぺ~!?」
すみません、許可なくモデルにしちゃいました。
この間のチャットで、笛のカンぺのお話がとても面白かったもので。ちょっと衝撃でしたし。
あのGRさんが~?!ぐらいに^^;
でも何種類もある笛の音を暗記するのは、大変ですよね。カンぺはあった方が良いですね、うん。
そうそう、ユッカ達がナーバスなのは、あとでちゃんと文章で説明しますが、お察しの通りです。
初めての敵、街を守るプレッシャーで緊張しているからです。
土壇場で人間性が出ると言うか。そんなのを書きたかったんです。
ユッカも、いつもいい子では鼻につくキャラになっちゃうので、ちょっと荒くれになってみました。
そのくらい、きつい相手ということですね。
教官は、たぶん全武器と防具を所持していると思います。
訓練所での彼のチョイスといい、そつがないですよね。それだけ全てを知り尽くしているんですね。
ましてや、凄腕のハンターですから、アルバ装備など自前もあたりまえじゃないかなあと。
今回もスラアクにしたのは、豪快な彼に合う武器だと思ったからです。
カラミティペインも考えたんですが、それはアリスが持っている設定にしています。
美人ほど、あの禍々しい武器が似合うなあと。描写に入れられなくて割愛したのが、自分でも惜しいです。
俺も笛を練習していますが、殴るだけならともかく、常に旋律を維持するのが大変ですよね。
せっかく音色をそろえても、武器しまったりするだけで吹っ飛ぶじゃないですか。もう一度はじめからやり直しになることって、しょっちゅうですよね。
GRさんは本当にすごいですね。俺も弓を使いますので、スタミナ減少無効にはとても助けられています。
いつかは、全員笛で大ボスに挑んだら…楽しいだろうな~^^
この間の訓練は、とても面白かったです!^^
まさか音色忘れていたとは…w
体力上昇(小)を良く出すので、俺の被弾率を心配してくれてるのかな、いや、ちょっと心配し過ぎですよ、俺だって避け方練習してきたんだから…などなど、いろいろな思惑がw
でもその前のドボル集団演習で、俺も音を間違えまくって「耐泥・耐雪」を吹いていたおバカなので^^;
お互い、もっと精進いたしましょう~。
でしたらまぁ、カンペに関しては勘弁してあげてください^^;
笛はなれるまで大変ですし・・・とばかりも言っていられないこの土壇場、
そもそもこのチーム、3人はジエン初挑戦なんですものね
あのユッカが当り散らしたり、落ち着きなくスープをかき混ぜてる様子、不謹慎ですが可愛かったです
そして教官、凄腕なのは分かってましたが、ブラックハーベストまで所持してらっしゃいましたか
これは、2日目以降の活躍も目が離せませんね
良いタイミングで狙って思う通りの効果曲を吹けるのは相当な笛使いです。
カンペを見ながらでも効果曲を吹き続け、かつ、攻撃も行ってくれるGRさんにはいつも助けて頂いております。
こないだ私が笛をやった時などは、旋律を忘れて意味の無い曲を吹き続けてましたから。
蒼雪さん、訓練所のアシラでは御迷惑をおかけしました。
してなかったんですねえ…^^;
あんなに間違えないって言ってたのにね…。
ちなみに、狩り友のGRさんという方がモデルだったりします。
GRさんは、凄腕のハンターさんですが、笛の旋律は見ながらやっていると言っていたので。
ご本人は決して間違えませんが、ミーラルは間違えちゃったことにしましたw